箱根はバラエティ豊かな個性派ベーカリーの宝庫
首都圏からほど近い観光地、温泉地として人気の箱根。さまざまな魅力があるなか、パン好きの私は箱根を訪ねると必ずといっていいほど、パンをお土産に買ってきます。創業100年を超える老舗店からロケーション抜群のニューフェイスまで、店舗ごとにバラエティに富んだ商品を揃えていて、何度訪れても楽しい。今回は私も通う5つのベーカリーをご紹介します。<INDEX>
芦ノ湖を望む足湯テラスが特等席「ベーカリー&テーブル箱根」
まず始めにご紹介するのが、芦ノ湖畔にある「ベーカリー&テーブル箱根」。創業は2013年と比較的新しいものの、今や芦ノ湖のランドマーク的な存在です。こちらは、昭和12年(1937)創業の日本における高原リゾートの草分け「赤倉観光ホテル」(新潟)に伝わるパンづくりを受け継いでいます。 芦ノ湖に面した入口の脇には、湖を一望できる足湯テラスが設けられています。ここではベーカリーでテイクアウトしたパンや、屋外テラスのパーラーのドリンクを楽しむことができます。足湯テラスはカウンター席で席数も限られるため、オープン直後が狙い目。 1階ベーカリーのショーケースには、奥の工房で焼きたてのパンがズラリ。希望のパンを伝票に書いて購入するシステムですが、飛ぶように売れていき、パンの種類が次々に変わっていきます。1日をかけて約70種類ほどが並ぶそう! 季節のフルーツや野菜を使ったパンも登場します。 定番商品の中から、お気に入りをご紹介します。まずは基本のクロワッサン。小ぶりですが、バターの芳醇な香りとほんのりとした甘みが感じられ、外はカリッ、中はしっとり。アップルパイは生地がサクサクでリンゴの甘煮はナチュラルな甘さ。軽い食感でペロリといけます。 キューブ型がかわいい箱ねは、デニッシュ生地にレンコン、ゴボウ、ニンジンがゴロゴロと入り、食べ応え充分。ショコラクランベリーもチョコレート、クランベリー、ナッツが生地からはみ出さんばかり。甘さ控えめの大人味です。 東府や米粉のカレーパンは、表面にライスクリスピーがプチプチと付き、もっちりとした食感。中には卵が丸ごと1個入り、ボリューム満点! そして、塩パン。バターがたっぷり練り込んであるので、風味が濃厚。岩塩がまろやかな塩味を醸し出して美味。パンの底に溜まったバターがカリッと焼けた部分は、バター好きにはたまりません。クリームパンのバニラビーンズを使った自家製カスタードは、卵の風味が濃厚で丁寧に作られているのが分かります。パン好きとしては、並んでいるパンを全部制覇してみたいほど、どのパンも魅力的です。 ちなみに、2階がカフェ、3階がレストランで、いずれも大きな窓越しに芦ノ湖を一望。パンやガレットの食事メニューもおすすめなので、まだ別の機会にご紹介できたらと思います。 「ベーカリー&テーブル箱根」・住所:神奈川県足柄下郡箱根町元箱根字御殿9-1
・TEL:0460-85-1530
・営業時間:ベーカリーとパーラー10:00~17:00、カフェ8:30~16:30LO、レストラン11:00~17:00LO ※土日祝は9:00~10:00LOに朝食提供あり
・定休日:無休
・交通:箱根湯本駅から箱根登山バスで元箱根港または箱根町行きで約34分、元箱根港バス停下車、徒歩すぐ
トロトロのラクレットチーズトーストに悩殺「箱根ベーカリー 箱根湯本本店」(閉店)
2019年4月、箱根湯本ホテル本館の取り壊しに伴い、惜しまれつつ閉店しました。現在は箱根湯本ホテル売店で一部商品を取り扱うほか、駅併設の小田原店(小田原駅西口構内)、三島店(三島駅北口構内)で主な商品を取り扱っていますので、そちらをチェック!※以前配信した記事はこちら↓
須雲川に沿って続く滝通りの「箱根ベーカリー本店」は、「箱根湯本ホテル」直営のベーカリー。パンの美味しさに定評があり、小田原駅などにも支店を展開しています。こちらは2年前にリニューアル。イートインスペースとイートインメニューが加わりました。 箱根湯本駅から歩くと20分強かかりますが、美しい川面を眺めながら進むと気持ちがいいものです。 入口の横にはテラス席も設けられていました。店内は吹き抜けで開放感があり、窓越しに周囲の緑を取り込みます。 まず、イートインの人気メニュー、ラクレットトーストをいただくことに。オーダーすると、大きなラクレットを直火であぶり、とろとろのチーズを目の前でたっぷりかけてくれます! かけたてをいただくと、トロトロに糸を引き、美味しい~! ラクレットは別名「ハイジのチーズ」といわれるチーズ。シンプルなチーズトーストにも関わらず、食パンの美味しさも手伝って人気の高さに頷けました。 使用される食パンは「芳醇生クリーム食パン」の4枚切り角型。販売もされていましたが、外がカリッ、中がもっちりの食感は、4枚切りだからこそ成せる技。生クリームを使用することにより、コクと風味、しっとり感が増すのだそう。一方、山型はふんわり感が味わえます。 こちらのクロワッサンはビッグサイズ! 独自の練り方を採用しているそうで、生地の引きがいいのが特徴。バターは色々試した結果、北海道産の低温熟成牛乳と生クリームで作られたフレッシュバターを使っているそうで、バターの甘みが感じられます。 パン職人さんに話をお聞きしたところ、自家製のライ麦からおこした天然酵母を使用したり、レーズンなどはひとつ一つヘタが残らないよう手作業で選別するなど、手間をかけて仕込みを行うのがモットーだそうです。 セーグルレザンの場合、ライ麦と全粒粉使用のカンパーニュ生地に山葡萄とクルミが練り込まれているのですが、スライスするとぎっしり詰まっているのが分かります。そしてずっしりと重い。砂糖不使用で自然な甘みと酸味が広がります。「入れ過ぎかもしれませんが、薄くスライスして食べて欲しくて」と語る職人さんに、パンへの深い愛を感じずにはいられませんでした。 「箱根ベーカリー 箱根湯本本店」(閉店)
・住所:神奈川県足柄下郡箱根町湯本茶屋184(箱根湯本ホテル本館1階)
・TEL:0460-85-8876
・営業時間:9:00~17:00(LO16:30)
・定休日:無休
・交通:箱根湯本駅から徒歩20分、または旅館組合シャトルバスBコース(早雲通り方面行き)で約5分、天成園バス停下車、徒歩3分
「箱根ベーカリー 小田原店」
・住所:神奈川県小田原市城山1−1−1
・TEL:0465-20-1126
「箱根ベーカリー 小田原店」
・住所:神奈川県小田原市城山1−1−1
・TEL:0465-20-1126
・営業時間 : 7:00~21:00
・定休日:無休
「箱根ベーカリー 三島店」
・住所:静岡県三島市一番町16-1
・TEL:055-986-7338
・営業時間 : 6:30~20:00
・定休日:無休
・定休日:無休
「箱根ベーカリー 三島店」
・住所:静岡県三島市一番町16-1
・TEL:055-986-7338
・営業時間 : 6:30~20:00
・定休日:無休
老舗店なのにアイデア豊富で美味しさも太鼓判「渡邊ベーカリー」
観光地にありながら、昔ながらの町のパン屋さん、といった懐かしい風情を漂わせる「渡邊ベーカリー」は、国道1号宮ノ下交差点からすぐにあります。創業は明治24年(1891)。この地で126年も愛され続けている老舗店です。 渡邊ベーカリーの名物といえば、言わずと知れた、温泉シチューパン。久しぶりにいただきましたが、外側カリッ、中はふわふわのパン生地の美味しさもさることながら、じっくり煮込んだビーフシチューもなかなかの美味しさ。サラッとしたシチューの中に、ほろほろと崩れる柔らな牛肉、ニンジンやジャガイモがゴロッと入り、幸せな気分に! この日は、温泉シチューパン用のフランスパンも販売していました(販売時期や時間は不定期)。パン自体がかなり美味しいので、中身をくり抜いて自宅で真似てみるのもいいかも! 温泉シチューパン以外にも、他店にないユニークなパンが多いのがこちらの魅力。私のお気に入りの筆頭に上がるのが、梅干あんぱん。見た目は普通のあんぱんですが、中を割ると、こしあんの中に曽我の梅干が種ごと入っていて、甘じょっぱさがクセになります! ジューシー丸ごとみかんは、小田原の農家直送の温州みかんを使った季節限定商品(温州みかんがなくなり次第、販売終了に)。ラム酒に漬け込んだ温州みかんをカスタードクリームが包み込み、大人の味わい。絶妙なバランスに驚かされます。いずれも外見からは想像のつかない味なので、ぜひ食べてみて欲しいです。 もうひとつのお気に入りが、箱根温泉村のたまごパン。こちらは、丸ごと1個のゆで玉子をタルタルソースが包み、ありそうでなかった味。 パン棚には、季節商品も含めて常時30~40種くらいがズラリと並びます。イートインコーナーは10席ほどしかないので、行列ができることも。調理パンもなかなかユニークで、フキの佃煮をトーストに挟んだキャラブキサンドは、甘辛いタレがトーストと相性が良く、おすすめです。 「渡邊ベーカリー」・住所:神奈川県足柄下郡箱根町宮ノ下343-3
・TEL:0460-82-2127
・営業時間:9:30~17:30(10~3月は~17:00)
・定休日:水曜、第3火曜
・交通:箱根登山鉄道宮ノ下駅から徒歩8分
富士屋ホテル直営のベーカリー「ベーカリー&スイーツ“PICOT”」
宮ノ下といえば、箱根を代表する老舗ホテル「富士屋ホテル」のお膝元。ホテルは2018年4月から2020年春の2年間、改装のため休業に入るのですが、直営ベーカリー「ベーカリー&スイーツ“PICOT”」は営業を続けるそうで、休業中も引き続きホテルメイドのパンを味わうことができます。 こちらのお店では、ホテルのメインダイニングで提供されている食パンやクロワッサンといったパンのほか、ケーキやプリン、パイなどの各種スイーツ、そしてホテルオリジナルジャムやドレッシング、レトルトカレーやスープに至るまで、幅広いアイテムを扱っています。 パンやスイーツはショップの奥の工房で毎日、伝統製法により作られています。大きなガラス窓を通して、ケーキのデコレーション風景などを眺めることもできます。 こちらのパンは、箱根の天然水と、代々受け継がれる伝統製法が美味しさの秘密。なかでも長きにわたり人気No.1の座を誇っているのが、クラシックカレーパン。メインダイニングルーム「ザ・フジヤ」で提供されているカレーの味に限りなく近づけているそうで、カリッと揚がったほのかな甘みを感じる生地の中に、スパイシーなカレーがたっぷり。小腹が空いたときのおやつに良さそう。 人気No.2の食パンは、代々受け継がれてきた伝統のレシピで作られていて、長年のファンが多い商品です。ホテルのレストランのサンドイッチやフレンチトーストなどのメニューに多用されています。柔らかすぎず歯ごたえを残すため、強力粉と中力粉をブレンドしているとか。少し厚めに切ってトーストして食べると絶品! りんごの形をモチーフにしたりんごパンは、可愛らしさもあって女性に人気。じっくり煮込んだリンゴとカスタードクリーム入りで、酸味と甘みのハーモニーが楽しめます。 一方、スイーツの人気No.1は、著名人にも愛されてきた伝統のアップルパイ。サクサクのパイの中にじっくり煮詰めたシナモン風味のリンゴがたっぷり! クラシカルな味わいで、テイクアウトもいいけれど、ホテルのティーラウンジでいただくと優雅な雰囲気もプラスされて格別の味に感じられるはず。 ショーケースの中には、懐かしいビジュアルのレモンメレンゲパイも! 堅さのあるイタリアンメレンゲにチェリーの砂糖漬けやマジパンがトッピングされ、かわいい。メレンゲの下には、レモンクリームの上にレモンリキュールを含ませたスポンジが乗り、レモン風味が際立ちます。 「ベーカリー&スイーツ“PICOT”」・住所:神奈川県足柄下郡箱根町宮ノ下359
・TEL:0460-82-5541
・営業時間:8:30~18:00
・定休日:無休
・交通:箱根登山鉄道宮ノ下駅から徒歩7分
箱根の玄関口 箱根湯本駅構内で便利「ベーカリー&デリカテッセン 箱根カフェ」
最後にご紹介するのが、箱根湯本駅改札横にある「ベーカリー&デリカテッセン 箱根カフェ」。ロマンスカーの出発前や到着後の利用に便利です。 イートインスペースが広いのが特徴で、ワイドに取られたガラス窓越しにロマンスカーや箱根登山電車の発着が見下ろせるので、鉄道ファンや小さな子連れにも喜ばれそう。 入口右手のパン棚には、常時45~50種類ほどの焼きたてパンがずらり。併設された工房で作られたパンが並びます。ソフト系、ハード系、デニッシュ、惣菜パン、サンドイッチなどがバランス良く揃うなか、人気No.1がクリームパンだそう。ミルク生地にクランべリーを練り込み、クリームチーズを包んだクランベリーフロマージュ200円(税込)も、オープン以来人気です。 極太フランクをパイ生地で包み、ペッパーをかけたペッパーフランクは、スパイシーでビールに合いそう。 フランス・ブルターニュの地方菓子、リンゴのファーブルトンは、しっとりとした生地にアプリコットジャムがたっぷり塗られ、濃厚な風味に。 2019年4月に開業10周年を迎え、2020年3月31日まで記念商品を発売中。ごま、ココア、プレーンの3種の生地を編み込み、箱根寄木細工に見立てた「寄せ生地細工パン」や、小田急 山のホテルオリジナルビールから作った天然酵母を使用した「箱根カフェ ホップスブレッド」、湯だね食パンの生地にスイートバターを折り込んで年輪に見立てた「年輪パン」などが期間限定で発売されているのでチェック!パンとともに味わいたいのが、常時8~10種類が揃う洋風デリ。系列ホテルのシェフがプロデュースするだけあり、ホテルのデリカテッセンを思わせるものばかり。訪れた日は、キャロットオレンジのサラダ、若鶏の唐揚げ、ハッシュドポテト、サーモンマリネなどが、彩りよく並んでいました。 2019年8月からはアルコールドリンクが充実。これまでの生ビールの他にも、ハイボール、モヒート、赤・白ワインが加わりました。それに合わせて、ちょい飲みにぴったりのパンやデリも新登場。ちょい飲みしてからロマンスカーへ、またはテイクアウトしてロマンスカーでほろ酔い気分、という新たな選択肢が増えて嬉しいですね!
「ベーカリー&デリカテッセン 箱根カフェ」
・住所:神奈川県足柄下郡箱根町湯本707 箱根湯本駅構内
・TEL:0460-85-8617
・営業時間:8:00~19:00
・定休日:無休(不定期でメンテナンス休業あり)
・交通:箱根登山鉄道箱根湯本駅構内
いかがでしたか? 箱根のベーカリー。創業100余年の老舗店から近年オープンの新店までさまざまですが、お店ならではの素材や製法のこだわりやオリジナリティがあり、ロケーションもさまざまで、パン好きとしてはたまらない旅となりました。皆さんもパン巡りの旅、ぜひ挑戦してみてください。