プラス30mmの余裕
2016年秋に発売されたアウディA4オールロードクワトロは、A4セダン、ステーションワゴンのA4アバントに続く第3弾。ワゴン派生型のクロスオーバーSUVとしてニッチでありながら根強いファンを獲得している最新モデルだ。
ワゴンの全高と最低地上高を高め、悪路走破性を高めるという手法は、1994年のスバル・アウトバック(レガシィ・グランドワゴン)や2001年のボルボXC70などがあり、アウディも1999年に初代オールロードクワトロ(A6ベース)を欧州で発売し、2001年には日本にも導入している。
新モデル、新規参入組も登場
ほかにも、フォルクスワーゲン・パサートオールトラック、ゴルフ・オールトラックなどがあるほか、メルセデス・ベンツEクラス オールテレインやボルボもV90クロスカントリーなど、ニッチ(隙間)とはいえないほど車種が増えている。
さて、新型にスイッチしたアウディA4オールロードクワトロは、今回の2代目で最初からカタログモデルに名を連ねている。なお、先代A4オールロードクワトロは2度限定車として日本に導入されていたが、現行のA6オールロードクワトロとともに2014年8月移行、カタログモデルになっている。
ベースのA4アバント(ワゴン)よりも最低地上高を30mm高め、お馴染みの4WDである「クワトロ」には、「ultra(ウルトラ)テクノロジー」と呼ぶ新開発のシステムが搭載されているのがトピックス。
新しいクワトロシステムを搭載
こちらは4WDによる走行が必要のない時に、100%前輪駆動走行になるもので、センターディファレンシャル(以下、デフ)の多板クラッチと、リヤデフに内蔵されたクラッチを話して、FF走行が可能になるというシステム。4WDによる駆動抵抗が抑えられることで燃費を向上しながら、4WDが必要になる前に後輪にトルクを配分するもの。
また、A4オールロードクワトロ用に設定された「Offload(オフロード)」モードを選ぶと、常時4WDでの走行が可能になるから滑りやすい路面などでも万全の安心感を提供してくれる。
実際にステアリングを握っていても、オンロード主体ではFFと4WDの切り替わりはまったく感じさせず、これで燃費が向上されるというメリットを享受できるので大歓迎だ。なお、252ps/350Nmという2.0Lターボを積むA4オールロードクワトロは、デュアルクラッチトランスミッションの7速Sトロニックとの組み合わせにより、14.6km/LというJC08モードを達成(先代モデルから9%の改善)。
この2.0L TFSIエンジンには、A4セダンとアバントでも試乗済みだが、相変わらず素晴らしい加速フィールをもたらしてくれる。A4アバントよりも全高が高くなっているにも関わらず、従来型よりも約90kg減量したという効果だろうか、中低速域のトルク感、高速域でも伸びは数値以上に感じさせる。とくに過給が始まってからの密度の濃い加速はそのものだ。
デュアルクラッチトランスミッション(DCT)の出来も、極低速域の不自然さは多少残っているが、実用上気になるほどではない。スムーズかつ楽しさが味わえるDCTとしては間違いなくトップクラスにある。
また、試乗条件が異なるため比較はできないが、A4セダンやA4アバントで感じたやや硬さのある乗り心地もA4オールドクワトロではよりマイルドになっている印象を受けた。
このモデルが1台あればすべてが叶いそう
荷室はA4アバントと同様の使い勝手で、後席を立てた状態でも505L、背もたれを倒せば最大で1510Lまで拡大する。電動開閉式のテールゲート、電動ラゲッジルームカバー、パーティションネットなどを標準装備
さて、A4アバントではなくA4オールロードクワトロを選ぶのは、悪路走破性の高さという機動力を重視するケースはもちろんのこと、ライフスタイルをより雄弁に、あるいはさり気なく主張する相棒として心をくすぐる存在だからだろう。
あえてA4オールロードクワトロを選ばなくてもアウディにはQ3、Q5、Q7というSUVもあるし、他メーカーにもいくらでも本格SUVがズラリと並んでいる。その中でこのモデルを選ぶ(選べる)のは、クルマ選びが成熟していることを感じさせる。この1台があればフォーマルな場からラフロードまで場所を選ばず楽しめる、余裕あるカーライフを過ごせそうだ。