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タワーマンション格差にメス?価格に応じた負担求める

「タワーマンションの低層階と高層階で格差がある」ということが、ドラマになるなど話題になっています。格差解消に切り込もうと、ついには税制改正などが行われる予定です。どういったことなのでしょうか?

山本 久美子

執筆者:山本 久美子

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タワーマンション内での「低層階と高層階の格差社会」が指摘されるようになり、ついにドラマにもなりました。一方で、タワーマンションの高層階が、相続税の節税対策に利用されるようになったこともあって、政府も対策に乗り出しています。どういったことか、詳しく見ていきましょう。
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タワーマンションでは低層階と高層階に価格差がある

高価格の高層階VS低価格の低層階 ヒエラルキーは存在する?

TBSドラマ『砂の塔~知りすぎた隣人』では、タワーマンションの高層階セレブマダムたちが、低層階のコマダムたちを見下すようなシーンが登場します。ワイドショーでも、「幼稚園の靴箱で高層階は上の段に低層階は下の段に入れるなど、上下関係がそのまま表れる」といった証言が飛び出すなど、タワーマンションのヒエラルキーが話題になっています。

こうしたヒエラルキーを生む根拠となっているのが、価格差です。

タワーマンションは、超高層マンションとも呼ばれ、一般的に20階建て以上のものをいいます。建築基準法の超高層建築物が高さ60m以上となっており、その高さがほぼ20階建てに相当するからです。その高さゆえに、ランドマーク的存在になることや眺望の良さが、タワーマンションの大きな魅力です。

特に高層階では、周囲に視界を妨げる建物がなく、眺望や夜景などを楽しめることから、同じ面積だとしても価格は高く設定されます。一方、低層階では通常のマンションと同じように周囲の建物が視界を塞いだり、見下ろすような眺望は得られないことから、価格は安く設定されます。

スタイルアクトの調査によれば、同じマンションの低層階と高層階の価格差は、同じ面積の場合で平均すると首都圏では1.74倍、関西圏で2.12倍の差があったといいます。

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出典/スタイルアクト「緊急調査!同一新築タワーマンション内の坪単価差を比較」リリースより転載


さらに販売戦略として、高層階、特に最上階付近は、面積を広くして室内の仕様や設備のグレードも上げるなど高価格のプランにして、富裕層をターゲットにします。低層階のほうは面積をやや狭くして、手が届きやすい価格で幅広い層をターゲットにします。低層階と高層階の販売時の価格差はさらに開くというわけです。

価格差は、暮らし方や住まいへの価値観などが違う、多様な層が同じマンションに住むという状況を生み出しますが、それが階層差のヒエラルキーになるかどうかは、マンションごとの事情にもよるでしょう。

最近では、ほかにも様々なシーンで、タワーマンションの低層階と高層階の価格差についてが議論されています。

管理費・修繕積立金などの負担や議決権は、低層階も高層階も同じ?

マンションでは共同で資産を管理し、共同生活を円滑に送るために、「管理規約」という共通のルールがあります。原則として共用の資産については、所有する専有部分の床面積に応じた割合(持ち分割合)で管理しますので、管理費や修繕積立金は「床面積が同じなら同額」で負担するというのが一般的です。

また、管理組合の総会で議決する場合の議決権も、共用持ち分の割合を原則としますが、端数が出て賛否のカウントがしづらいこともあり、各住戸の面積があまり変わらない場合は、住戸1戸につき1個の議決権とすることも可能です。

ただし、これらのルールはマンションごとの管理規約で別の方法に定めることも可能です。

国土交通省では、管理規約をどういった内容にすればよいかという雛型を「マンション標準管理規約」として提示していますが、平成28年3月に、この雛型を改定しました。それによると、
議決権については「高層階と低層階での眺望等の違いにより住戸の価値に大きな差が出る場合もある(中略)価値の違いに基づく価値割合を基礎として、議決権の割合を定めることも考えられる。」
と解説しています。
ただし、「議決権と管理費や修繕積立金の負担割合については、異なる方法で設定することも可能」としています。

今後タワーマンションの維持管理に対する負担の大きさや管理組合での決定の大きさが、面積ではなく、高層か低層かで変わる可能性があるわけです。

固定資産税が市場価値に応じて増減する改正が予定されている

土地や建物は固定資産なので、所有している人には毎年「固定資産税」が課税されます。固定資産税は「固定資産税評価額」(3年に1度評価替えされる)に基づいて課税されます。マンションの場合は、固定資産税も共用部分の持ち分割合(床面積の割合)に応じて算出されます。つまり、タワーマンションの場合は、低層階も高層階も面積が同じなら同じ額ということになります。

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平成29年度税制改正大綱

12月8日に公表された与党の「平成29年度税制改正大綱」では、
タワーマンションについては、「住戸の所在する階層の差異による床面積当たりの取引単価の変化の傾向を反映するための補正率で補正す」という改正案を盛り込んでいます。

具体的には、1階を100とし、1階ずつ上がるごとに「10を39で除した数」つまり、0.25641…を加えた割合にするということですから、1階が100なら、21階は約105、41階は約110となります。タワーマンション全体の固定資産税評価額は変わりませんので、高層階の税額が高くなる一方で低層階の税額は安くなるということになります。

この補正率は、「天井の高さ、付帯設備の程度等について著しい差異がある場合には、その際に応じた補正を行」とされていますので、最上階などの豪華な住戸はさらに固定資産税が高くなる可能性があります。

年明けの国会で成立した場合は、平成30年度の固定資産税が課税されるタワーマンションから固定資産税が価格差に応じて変わることになります。固定資産税は、毎年1月1日時点に登記されている所有者に対して課税されるものなので、平成30年度の課税対象となる平成29年1月2日以降平成30年1月1日までにタワーマンションを引き渡されて登記をした人が対象ということになるでしょう。
ただし、平成29年3月末日までに売買契約が締結された住戸があるタワーマンションは除外されますので、固定資産税の計算方法は従来通りとなります。

相続税の節税対策にも影響する?

相続税は、固定資産税と強い関係があります。相続税の評価額は、建物は固定資産税評価額が、土地の場合は路線価方式か倍率方式となりますが、どちらの場合も固定資産税評価額と強い関連性があります。

平成27年から相続税が増税となったことで、相続税対策としてタワーマンションが注目されるようになっています。タワーマンションの高層階を購入することが、節税対策になるというのです。いったい、どういうことなのでしょう?

まず、タワーマンションは上に高く伸びることで住戸の数が増えるので、200戸や300戸で敷地を分け合うことになり、地価が高いエリアでも持ち分となる土地の面積が小さくなるという効果があります。

次に、現金で相続するより、住宅で相続したほうが、相続税の評価額が低くなる効果があります。相続した時点の時価で相続財産を評価することになっていますが、現金や投資信託などの金融商品に比べると、住宅の土地と建物の評価額は実際の売買価格(時価)よりかなり低くなるのが通常だからです。賃貸している場合は、さらに評価額を下げることができます。

こうした仕組みをタワーマンションの高層階の数億円の住戸で活用すると、大幅に相続時の評価額を抑えることができ、相続後に売却して現金化するという、節税対策になるわけです。

富裕層しか利用できない節税対策であるとして、批判を浴びるようになり、国税庁でも租税回避行為とみなされるものは厳しくチェックすることにしています。今後、タワーマンションの相続税の評価額が見直される可能性も高いでしょう。


タワーマンションが販売されるようになったのは、比較的最近のことですから、階層による価格差などをどう考えればよいのかについても、まだまだ検討する余地があります。今後も、さまざまな検討が行われるかもしれません。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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