先頃、JR北海道の留萌本線末端区間の留萌~増毛間が廃止された。今後も廃止が予定されている路線があり、ローカル線の厳しい状況が伝えられている。そんな中、逆境にもめげず個性的な取り組みで活性化を図っている路線がいくつもある。最近訪れた中から、魅力的な路線や列車を紹介してみたい。多くの人が記事を読んで関心を持ち、乗っていただけたら存続につながるのではと思う。

冬の五能線観光列車「リゾートしらかみ」の魅力

リゾートしらかみ

観光列車「リゾートしらかみ」の新しいブナ編成


人気の観光列車「リゾートしらかみ」(秋田~弘前、青森)は、夏の観光シーズンには一日3往復し、満席のことも多い。しかし、運転は冬季も週末を中心に行われ(平日に運休日があり、本数も1日1~2往復と減便される)、眼前に迫る荒れた日本海の車窓を眺めるのは、なかなかにスリリングで圧倒される。ほかの季節とは異なる魅力があるので、冬以外に乗車した経験のある人も、再訪することをおすすめしたい。ただし、強風で運休になる場合もあり、リスキーな旅となりうるので、その点は覚悟しなくてはならないだろう。
ブナ編成ボックス席

新しいブナ編成のコンパートメント(ボックス席)


3往復の列車は、青池、ブナ(漢字が表示できないのでカタカナ書き)、くまげらという3種類の異なる車両によって運転される。ブナ編成は、青池編成に続いて新しいハイブリッド車両に置き換えられたばかりで、内装も一新、展望室、イベントカウンター、ORAHOカウンターという売店も充実し、車内での楽しみが倍加した。通して乗れば5時間を超えるロングランとなるけれど、長時間停車あり、車内イベントありと変化に富んだ鉄道旅となろう。
冬景色

日本海に沿って荒涼とした冬景色の中を進む

五能線リゾートしらかみの旅 (JR東日本秋田支社のサイト)

ストーブ列車が魅力の津軽鉄道

ストーブ列車

津軽五所川原駅で発車を待つストーブ列車


「リゾートしらかみ」が停車する五所川原で乗り換える津軽鉄道の旅も楽しい。12月1日から3月31日まで、季節限定ながら毎日運行(1月~3月は1日3往復)している。レトロな客車内に設置されたダルマストーブは温かく、アテンダントさんや地元の人々、他の旅行客とのふれあいも楽しい。途中の金木駅近くには、小説家太宰治を記念した「斜陽館」があり、年中賑わっている。
ダルマストーブ

車内にあるダルマストーブ

ストーブ列車の公式サイト

頑張る第三セクター鉄道

国鉄からJRへ移行するときに、廃止が勧告され、地元が引き受け再出発した路線が第三セクター鉄道として存続し、全国に30あまりある。いずれも、沿線の過疎化が進み、経営は苦しい。その中で、最近訪問した3つの鉄道を紹介してみよう。どの鉄道も工夫を凝らして、遠方からの旅人を温かくもてなしてくれる。

■長良川鉄道(岐阜県)
観光列車ながら

郡上八幡駅に到着した観光列車「ながら」(右)


JR高山本線の美濃太田駅から分岐する旧国鉄越美南線。清流長良川に沿って走り、車窓風景は魅力的だ。2016年春から観光列車「ながら」を導入。JR九州の観光列車でお馴染の水戸岡鋭治氏がデザインを担当。2両編成のうち1両はレストラン車両として、地元の食材を使って好評を博している。
ながら車内

水戸岡鋭治氏がデザインした「ながら」車内


レストラン車両は、沿線随一の観光地郡上八幡で切離し、残り1両のビュープラン車両で終点北濃を目指す。古びた終着駅北濃には、SL時代の転車台が残り、国の登録有形文化財に指定されていて、一見の価値がある。

長良川鉄道のサイト

■樽見鉄道(岐阜県)
レールバス

樽見鉄道のレールバス


JR東海道本線の大垣駅から分岐する旧国鉄樽見線を引き継いだ鉄道。神海(国鉄時代の駅名は美濃神海)から樽見までは、樽見鉄道になってから延伸された。中間の本巣駅近くにあるセメント工場からの貨物列車がかなりの収入源だったが、貨物輸送が廃止されてからの経営は苦しい。
樽見駅

終点樽見駅


終点樽見駅近くにある薄墨桜は、日本三大桜のひとつとされ、春の満開時には大挙花見客が訪れる。うすずみ温泉、一つ手前の水鳥(みどり)駅近くにある特別天然記念物の根尾谷断層など観光の見所も多い。「しし鍋列車」「薬草列車」といったイベント列車のほか、貨物列車廃止で使われなくなった本巣駅構内の側線を利用したディーゼルカー(レールバス)運転体験講習会(10名以上で申込可)も興味深い。

樽見鉄道のサイト


■由利高原鉄道(秋田県)
まごころ列車

由利高原鉄道の「まごころ列車」


秋田駅からJR羽越本線の特急いなほで30分程の距離にある羽後本荘駅から分岐し、矢島駅まで鳥海山の山麓をのどかに走る路線。秋田おばこ姿の女性アテンダントが車内ガイドや物品販売を行う「まごころ列車」が毎日1往復運転される。
特別料金不要の普通列車だが、新しく明るい車両はテーブル付きで、食事をしたり地図を広げたりとゆったりのんびり列車旅が楽しめる。
おばこ姿のアテンダント

秋田おばこ姿のアテンダント


途中の前郷駅での列車すれ違い時のタブレット交換は、イベント扱いで写真撮影の便宜を図ったり、終点矢島駅売店「まつ子の部屋」では、駅周辺の観光相談にのってくれるなど、ふれあいを大切にする雰囲気が好ましい。

由利高原鉄道のサイト



残念ながら廃止が決まった路線


懸命の努力にも関わらず廃止が決まってしまった残念な路線もある。

■JR三江線(広島県、島根県)
三江線のラッピング車両

三江線のラッピング車両


中国山地の小都市三次(広島県)と山陰の江津(ごうつ)(島根県)を結ぶ100kmを超える長大なローカル線が三江線だ。1975年に半世紀来の悲願がかなって全線開通したものの、大都会から遠く離れた過疎地であったため利用客は極めて少なく、2018年3月末をもって廃止となることが決まった。
石見神楽の演目を愛称にした駅名標

石見神楽の演目を愛称にした駅名標


江の川に沿って走る車窓は、大自然の情景が心ゆくまで堪能できるが、そうした人の少なさが皮肉なことに廃止の原因でもある。石見神楽の伝搬ルートでもあるので、各駅には石見神楽の演目名が愛称として付けられ、神楽のイラストを描いたラッピング車両が運転されるなど、楽しみも多い。列車本数が極めて少なく、三次あるいは江津や浜田周辺に前泊しないと全線走破は難しいけれど、残された時間は1年少々だ。一度訪問する価値はあろう。

ぶらり三江線WEB

■JR夕張線(北海道)(正式名称=石勝線夕張支線)(新夕張~夕張)
夕張支線のディーゼルカー

夕張駅に停車中のディーゼルカー


札幌駅と帯広、釧路方面を結び特急列車が走る石勝線の新夕張駅から分岐し、かつて炭鉱で栄えた夕張を結ぶ支線。夕張市の財政破綻、人口の激減など衰退著しい地域の路線だけあって、利用客の減少が止まらない状況だ。
夕張駅前には、巨大なリゾートホテルが聳えているものの、繁盛しているとは言えない。列車は1両のみで細々と運行してきたが、夕張市長の提案もあり、2019年ごろの廃止が確定している。かつては石炭輸送で栄えた路線の栄華の後をたどる旅も興味深い。

廃止が決まってしまった路線は別として、何とか生き残りをかけて懸命の努力をしている路線は数多い。応援する意味でも、機会を見つけて訪問したいものである。