日本人女性の9人に1人(※1)が罹患する乳がん
日本人女性の9人に1人がかかると言われている乳がん。誰もが気をつけなければならない病気です
ここ数十年で日本人女性に急速に増加している乳がん。筆者の周りにも何人もいらっしゃいますし、とても他人ごとではありません。若い女性の方にも、ぜひ身近な病気である乳がんについて、理解を深めていただければと思います。
早期がんと進行がんの違い
「進行性乳がん」と「乳がん」はどう違うのでしょうか? 消化器のがん、例えば胃がんなどでは「早期がん」と「進行がん」ははっきりとした医学的な定義があります。簡単にいえば、胃の表面である粘膜下層までにとどまっているものは「早期がん」。胃の深い部分である筋層まで達しているものを「進行がん」と呼びます。ただ、一般にはこの言葉はもうちょっと漠然とした意味で使われているようです。例えばコトバンクによれば、『がんは一般に、早期(そうき)がん、進行(しんこう)がん、末期(まっき)がんの3段階に大別されます』となっています。なんとなく早期→進行→末期のイメージでしょうか。
しかしイメージではかえってわかりにくくなったり、誤解を招くことも多いので、医療関係者は通常がんの進行具合を「病期(ステージ)」という分類で表します。そもそもがんとは何なのか、転移とはどういうことなのかの基本については、「がんが転移するってどういうこと?」をご覧ください。
乳がんの病期・ステージ分類
がんは、大きさ、脇の下のリンパ節への転移の有無、離れた他の臓器への転移の有無によってステージが決まります。がんのステージは数が大きいほど進行していることを意味します。下記、筆者が大まかにまとめたものです。乳がんでは、一般的にステージ0~I期と、一応II期までを早期乳がん、さらにステージIII期のことを局所進行乳がん(locally advanced breast cancer)といいます。英語では進行性乳がんはadvanced breast cancerの頭文字を取って、ABCとも略されます。advanced breast cancerはがんが乳房以外のからだの他の部分に広がっていることを指します(ただし、脇の下のリンパ節だけへの転移は含まない)※2。ですので、ステージでいうとIII~IVになります。
■ステージ0期
- 非浸潤がん。がん細胞がごく小さい一部にとどまる。周りに浸潤せず、 しこりも触れない極めて早期のがん
- しこりが小さく(2cm以下)、脇の下のリンパ節に転移していない
- しこりが小さくても(2cm以下)、わきの下のリンパ節に転移がある
- しこりが中くらい(2~5cm)(わきの下のリンパ節への転移はあることもないことも)
- しこりが大きく(5cm以上)、わきの下のリンパ節に転移がない
- しこりが大きく(5cm以上)、わきの下のリンパ節に転移がある
- しこりが大きくなくても(5cm以下)、わきの下のリンパ節にたくさん転移している、それよ り広範囲、鎖骨や胸骨のリンパ節にまで転移している
- 皮膚にしこりが飛び出したり、崩れたりむくんでいたりする
- がんが他の臓器(骨、肺、 肝臓、脳)まで転移している
乳がんになりやすい要因……限界はあるものの検診も重要
乳がんが増加している理由は女性の社会進出などいろいろといわれています。以前、「乳がんになりやすい人・なりやすい習慣」で詳しく解説しましたが、乳がんになりやすい主な原因として挙げられるのが、年齢・遺伝・エストロゲン・肥満の影響です。また、乳がん検診でも確実に全ての乳がんが早期で発見できるとは限りません。「デンスブレストとは?知っておきたい乳がん検診の限界」でも詳述しましたが、検診には限界があり、万能ではありません。それでもやはり早期発見、早期治療の可能性を少しでも増やせるよう、検診を受けることは重要です。誰もがかかる可能性のある乳がんについて正しく知り、定期的にセルフチェックや乳がん検診を受けるようにしましょう。
※1…国立がん研究センターがん対策情報センター がんに罹患する確率~累積罹患リスク(2017年データに基づく)
※2…cancer research UK(英語サイト)
■参考文献
- 日本乳癌学会編「臨床・病理 乳癌取扱い規約」(金原出版)
- 日本乳癌学会「乳癌診療ガイドライン」