「恋愛していても、つきあっていない」のはなぜ?
不倫報道を受け、険しい表情で会見したタレントのベッキー。東京・新宿区左門町のサンミュージックプロダクションで。2016年1月6日撮影。写真:報知新聞/アフロ
「恋しているけどつきあっていない」。この言葉の裏に、どんな意味があるのだろうか。
独身同士なら「縛る権利がない」という意味
デートやセックスはする。でも付き合っていない、とは?
独身の男女から、この言葉を聞くことがある。相手も独身。定期的に会って一緒にどこかへ行ったり(これを通常、デートというが)、セックスしたりもする。なのに、「つきあっていないから恋人ではない」のだそう。
お互いに本命にするには不足があるのか、あるいは「恋人」というレッテルを貼るのがいやなのか。
「つきあっていることをはっきりさせてしまうと、お互いに嫉妬したり束縛しあったりしがちでしょう? それが嫌だから、はっきり『つきあっている』という認識をお互いにもたないほうが気楽なんです」
30歳になるサクラさんは、笑いながらそう言った。相手のことが好きなら、多少の嫉妬や束縛は付随してくるものではないのだろうか。
「つきあっているという共通認識がなければ、互いに嫉妬や束縛はしてはいけないというのもわかりきったこと。だから相手がどこで何をしていようが、何も言う権利はない。恋人はもっとどっぷり重い関係になるから、あえて『つきあってください』『はい』というやりとりはしないんです」
形としては、誰が見ても「つきあっている」のだが、本人たちにその認識がなければ、恋人としては周りからも認知されない、と彼女は言う。もちろん、誰もがそうではないだろうが、一部では不思議な法則が定着しているようだ。
独身同士でも、どちらかあるいは双方に本命恋人がいる場合にも、この言葉は使われる。
「私たちはつきあっているわけじゃない」
と言うことで、本命恋人への言い訳が立つというわけだ。
不倫の場合の「つきあっていない」とは?
どちらか一方、あるいは双方が既婚の場合は、「好きだけどつきあっていない」は明らかに「言い訳」である。そうしておけば、法的にも人道的にも不倫だと糾弾されないと思っているのだろう。あるいは、そう思いたいのだろう。たとえ、性的な関係があるとしても、「つきあっているわけじゃない」という言葉が、ひょっとしたらふたりの支えになるのかもしれない。
だが、実際にはもちろん法的にはアウトである。
つきあっていなかったと主張しても、法的には、不倫である。
「彼が結婚していることは知っていたけど、すでに夫婦関係は破綻しているし、近いうちに離婚すると聞いていたので、関係をもってしまいました。私も彼のことが好きだったから。『つきあっているわけじゃない、だから不倫じゃない』と自分に言い聞かせていたところはあります。でも半年後、奥さんにバレてしまい、弁護士を通して慰謝料を請求されました」
そう話すのは、アキエさん(32歳)だ。夫婦関係が破綻しているという彼の言葉は真っ赤なウソ、彼女とつきあい始めたとき、妻は妊娠していた。
「ショックでした。つきあっていないといくら弁護士さんに言っても通用しなかった。奥さんが探偵事務所に調査を依頼していて、彼が私の部屋に入っていくところとか、私の家の近所でキスしているところなどの写真も撮られていた」
しかも、さらに彼女を傷つけたのは、ことが明らかになってから、彼が完全にアキエさんを無視し続けたことだ。まったくかばってくれようとはしなかった。
彼としては、「ほんの一時の気の迷い」ですませたかったのだろうと、アキエさんは分析する。結局、彼女は奥さんに100万円を支払った。
「貯金もなくなり、気持ちも傷つけられた。私の『つきあっているわけじゃない』は通用しないのに、彼のウソはおとがめナシ。損したのは私だけなんですよね」
好きだけど、つきあっているわけではない……というのは、つきあっている実態があるときにはまったく効力を持たない。完全な片思いならまかり通るのだろうけれど。
それは自分の罪悪感を減らすためだけの自己中心的な言い訳に過ぎないのかもしれない。
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