そこで今回は、積極的にリフォームや点検することのメリットについて、費用のお話を交えながら考えてみましょう。
1. 建物の寿命を伸ばす
住宅の寿命はもっと延びてよいはずです。必要に応じて手を加えたり、直したりすることで、大切な我が家は長く使えるのですから…。
しかし一方で、木造の神社や仏閣、古民家などが100年以上経ってもしっかりと存在している現実を考えると、正しいメンテナンスやリフォームをしてあげることで、住宅の寿命は延ばすことが可能です。そもそも、ほとんどの建物は手遅れになっておらず、部分的に腐食していたとしても適切なリフォームで回復させることは十分に可能なのですから、建物すべてを廃棄してしまうというのは非常にもったいない話です。リフォームにお金がかかるといっても、再度新築するよりも安上がりになることがほとんどですから、費用の面を考慮してもリフォームをして建物寿命を延ばすということは賢い選択になるのです。
2. 住み慣れた街に住み続けられる
住み替えるのであれば現在の場所と異なる場所に引っ越す必要が出てきてしまい、家財道具が多くなったご家庭ではかなりの労力と引っ越しにおけるストレスが生じます。また家を建て替えるにしても、どうしても仮住まいの必要性が出てきます。そうなるとご高齢や足腰に不安がある方などにとっては、新しい居住環境に対して抵抗を感じるケースも多く、環境を変えないことが非常に大きなメリットになります。また建て替えの場合は解体工事が必要です。昨今は建物の解体についても様々な制約が生じています。解体現場から生じる廃材は適切に分別することが求められる他、アスベストを含む(あるいはアスベストを含む恐れのある)建材については特殊な処理が必要となるため、かつてよりも解体工事費用はアップ傾向にあります(一般的な戸建て住宅で120万~300万円)。
リフォームであればほとんどの場合、引っ越しや解体が不要であり、仮住まいや解体工事にかかる費用を節約できるのです。ただし、現在の建物の間取りや構造を無視して、無理な変更をするようなリフォームでは、かえって費用がかさんでしまうということも覚えておきましょう。
3. 諸費用が抑えられる!
家の資産価値は最初から決まっているのではなく、市場にさらされてはじめて評価されます。中古住宅を取り巻く事情を考えると、まずはリフォームを検討してみるべきなのです。
愛着を持って住んでいる方にとってはかけがえのない住宅であっても、売却するとなれば冷静な目で市場価値を分析されます。一般的に木造住宅の場合、築20年以上経過すると建物の価値は新築時の1/4~1/5以下か、あるいはほぼないものと見なされ、建物の劣化状況によっては建物の価値をゼロとされるだけでなく、解体費用を見越してマイナスの評価がされてしまうこともあるのです(土地価格のみ、あるいは土地価格から解体費用を差し引いた金額の評価)。
最近では建物の図面や修理の履歴を蓄積したり、売却前に専門担当者の建物調査を実施したりなど、中古住宅を適正に価値付けするための評価システムなどが確立しつつありますが、一部の需要の多い地域を除き、まだまだ建物所有者が思っているほど中古住宅の資産価値が高まっているとは言えない状況です。
また住宅の売却、そして新しい住まいの購入には仲介手数料や登記費用などの諸費用が生じることなどから考えても、もし現在の住まいの居住環境が気に入っているのであればまずはリフォームを検討してみて、それでも様々な事情で手放さざるを得ない可能性がある場合は、建物取得時からの図面や資料、リフォームや点検の履歴を残し、しっかりと管理しておくことが大切です。