ハーレーらしさ全開のライドフィール
両腕をまっすぐ前に突き出し、さらに両足も前方に投げ出すドラッグスタイルのポジションは、おおむね身長170cmから低くなればなるほど突っ張った姿勢になります。ガンファイターシートも股間部分が幅広で足が外に開いてしまうことから、同じく身長の高くない方にとって足つきは決していいとは言えません。ベースモデルのFXDB ストリートボブと違い、"乗り手を選ぶバイク"であるようです。
排気量1,584ccのツインカム96エンジンが生むトルクは野太くパワフルで、スロットルを回すほどに力強い走りでロードを駆け抜けていってくれます。反面、かなり特異なポジションであることから、街中での取り回しや交差点での右左折などでは、その重量とポジションを操るボブスペシャル専用のテクニックが求められます。
直線道路でのハイウェイライドこそ最大の魅力ですが、スピードが上がれば上がるほど走行風で体が後ろに追いやられます。ガンファイターシートのホールド位置も見た目以上に後ろめで、フォワードコントロールのためステップをしっかり踏ん張れないことから、結果的にハンドルにしがみつく姿勢での走行となってしまうのです。結論から言えば、「お世辞にも乗りやすいとは言えないバイク」ということです。
そう、その乗りにくさこそが、このモデルをハーレーらしくしているところだと思います。近年のハーレーは、アメリカ人のみならず世界中の人に楽しんでもらえるよう、小柄な人でも乗りやすいバイクを排出していきました。かつての「ハーレーは壊れやすい」「ハーレーはバイクじゃない」「ハーレーは乗りにくい」という言葉が懐かしく感じられるほどに。
万人受けすることは良いことではありますが、一方で、乗りにくかったハーレーを操りきれたときに得られる感動を知る者としては、最近の風潮には一抹の寂しさを覚えることも。「乗りやすいハーレーなんて、ハーレーじゃない」「乗りやすいバイクがいいなら、他のメーカーモデルに乗ればいい」というところです。
そういう意味では、この操りづらさ、乗りにくさはなんともハーレーらしいと言えます。高速道路を一時間も走ればドッと疲れてしまいますが、そこに他モデルでは得られない充実感が存在するのも事実。「ああ、ハーレーに乗っているんだなぁ」という歓びを与えてくれるバイクです、気になる方にはぜひ一度試乗してみてほしいと思います。
クラブスタイルに最適なベースモデル
ビキニカウルにドラッグバー&ストレートライザー、ハイパフォーマンスキット(エンジンチューン、サスペンションのグレードアップ、ハイフローエアクリーナーなど)といったアメリカで人気のカスタムスタイル【クラブスタイル】向き(写真のバイクは神戸シウンクラフトワークス製作)
そんなFXDBC ストリートボブスペシャルですが、乗り心地の他にカスタムベースモデルとしての魅力も備えています。そのスタイルというのが、今アメリカで人気の「クラブスタイル」。
いわゆる新しいストリートバイクのスタイルで、ビッグツインスポーツであるダイナモデルをベースに、ドラッグバー&ストレートライザー、ビキニカウルを備え、マフラーやエアクリーナーをハイスペックなものにカスタムし、さらに前後サスペンションもグレードアップさせたもの。この点で見ると、すでにドラッグバーやガンファイターシートを備えたストリートボブスペシャルはクラブスタイル向きと言えます。何より、実にハーレーらしいタウンユースの楽しみ方と言えるものですね。
優等生モデルが増えた現ラインナップで独自スタイルを貫くFXDB ストリートボブスペシャル。ハーレーらしいライフスタイルを求める人にこそふさわしい一台だといえるでしょう。
[HARLEY-DAVIDSON FXDBC StreetBob Special SPECIFICATIONS]
全長/2395mm
全幅/895mm
全高/1130mm
ホイールベース/1630mm
加重時シート高/670mm
車両重量/304kg
エンジン型式/Air-cooled, Twin Cam 96
排気量/1584cc
フュエルタンク容量/17.8L
フロントタイヤ/100/90 B19 M/C 57H
リアタイヤ/160/70 B17 M/C 73V
【メーカー希望小売価格】(消費税8%込/2016年2月現在)
[ブラックデニム] 190万円