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全米選手権のアイスダンスで、シブタニ兄妹が優勝

年末の全日本選手権、ロシア選手権、1月中下旬のカナダ選手権、全米選手権など、各国の選手権が終わりました。たくさんの素晴らしい演技のなかから、全米選手権のアイスダンスで優勝した、マイア・シブタニ&アレックス・シブタニについてご紹介します。

執筆者:長谷川 仁美

素晴らしい演技がいくつも見られた各国の選手権

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先週末、全米選手権とカナダ選手権を一生懸命見た方も多かったことでしょう。
昨年末の全日本選手権や、同時期に開催されていたロシア選手権などとともに、各国で行われている国内選手権では、胸を熱くさせる演技がたくさん見られました。

今シーズンのように五輪のないシーズンでは、トップ選手たちは、世界選手権にでて、そこでいい演技をして、できればいい評価を受けてシーズンを締めくくりたい、と考えています。そのため、世界選手権では、素晴らしい演技が見られることが多いものです。

それと同時に、各国の国内選手権でもまた、熱い演技が見られることがあります。
国内選手権は、どの国の選手も、「独特の雰囲気があって、とても緊張する」と言います。小さなころから知っている選手、コーチ、関係者、ファンたちが見守る中で、シーズン後半の大会に派遣されるような演技をしたい……そんな思いが緊張感につながるのだと想像します。いつも以上に調整を重ねて臨むからこそ、今シーズンも、各国選手権で素晴らしい演技がいくつも見られました。

その中で私が個人的にもっとも心を動かされたのが、マイア・シブタニ&アレックス・シブタニ(アメリカ)のフリーダンス『Fix You』でした。

本当の世界トップカップルに押し上げたプログラム

今シーズンのNHK杯でも披露したのでご存じの方も多いと思いますが、この『Fix You』はとても内省的であり、思いが伝わってくるプログラムです。

スケートカナダでは、プログラムが進むにつれて、観客がぐんぐん演技に引き込まれていくのを感じました。私もそんなひとりでした。グランプリファイナルでは、アレックスがフリー前夜からの食中毒で滑り切れるかどうかわからなかったにもかかわらず滑り切った、ということもありました。

このフリー『Fix You』は、素晴らしい構成のプログラムです。

ボーカル入りの部分で始まり、途中でボーカルなし部分になり、再びボーカル入りパートで終わる、という構成のプログラム。普通ボーカル入りのプログラムだと、「ボーカルが入っているところが主で、それ以外の部分は従」といった印象を受けることが多いのですが、この『Fix You』はその反対の印象を受けます。

スタートからのボーカルでプログラムを温めたところでボーカルが終わる。するとそこから2人は、ステップでリンクを丁寧に回ります。何度もジャッジや観客と目を合わせたのち、ギターが入るパートが始まるのとともに、2人が乱れない上品で上質なツイズルを3回続けます。2人の動きがぴったりと合ったツイズルの素晴らしさと曲の盛り上がりとが相乗して、一気に観客の気持ちを高ぶらせ、そのすぐ後のダイナミックなローテーショナルリフトで、観客は夢中になってしまうのです。

5年近く前の世界選手権銅メダル以降に彼らが感じてきた思いや2人の歴史などを、自然と思ってしまう演技でした。

シニアデビューの2011年に世界選手権で3位になった2人ですが、その後結果を残せない長く辛い時期を過ごしました。それでも真摯にスケートに向き合ってきたからこそ、今シーズン、とうとう、彼らを本当の世界トップカップルに押し上げるプログラムと出会ったのだと感じます。

『Fix You』の歌詞に感激して使うことを決めた、という曲への思いの強さや、年齢を重ねて大人になってきた時期(マイア21歳、アレックス24歳)ともうまく重なったのかもしれません。マイアは「21歳になって、私自身成熟の時期を迎えてきたと感じています」とも話していました(※アメリカでは21歳が成人です)。

長い間、彼らの上には、同門の先輩であるデイヴィス&ホワイトがいました。その後、同門で新しくカップルを組んだチョック&ベイツが力を伸ばし、2013年全米選手権からは常にチョック組の後塵を拝してきました。そうした状況が長く続くと、「シブタニ兄妹は、チョック組の次かな」といった印象がぬぐえなくなってきたりします。

そういった状況をシブタニ兄妹は、この『Fix You』ですべて払拭しました。さらにそれだけでなく、彼らの素晴らしさにこれまでよりたくさんの人たちが気づくことになりました。

彼らの演技は、2月18日からの四大陸選手権、3月30日からの世界選手権でも見られます。それまでにはまだ時間があるので、練習を重ねた彼らは、もっともっと深まった演技を見せてくれることでしょう。

四大陸選手権までにまだ間がある今、そして、ヨーロッパ選手権が控えている今週、アイスダンスにも注目してみると、また新しい発見があるかもしれません。
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