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マエケンが1球も投げずにファンの心を掴んだ理由

広島からポスティングシステムでの移籍を目指していた前田健太投手とドジャースが、日本人選手としては最長となる8年契約を結んだ。しかし、その契約内容は「非常に奇妙」なものだった。

瀬戸口 仁

執筆者:瀬戸口 仁

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「イレギュラーな点」が見つかった奇妙な契約

ドジャースは1月7日(日本時間8日)、広島からポスティングシステムでの移籍を目指していた前田健太投手(27)と、日本人選手としては最長となる8年契約を結んだと発表した。背番号は広島時代と同じ「18」。契約は8年総額2500万ドル(約29億5000万円)で、シーズンごとに高額な出来高払いが設定され、年間32試合に先発して計200回を投げれば、最高で総額1億620万ドル(約125億円)になる。

非常に奇妙な契約である。確かに契約年数は長く、出来高は抜群に高いが、年俸は広島時代の3億円からわずかに約7000万円アップした程度。その理由として、「身体検査で見つかったイレギュラーな点」が挙げられる。

昨年12月に代理人との打ち合わせでロサンゼルスに滞在した際に、各球団に体の状態を提示するため、交渉に先んじて身体検査を受けた。米大リーグの公式サイトによると、その際に、「右ヒジがどこかの時点で靭帯再建手術を受ける可能性がある」という“イレギュラーな点が見つかった”のである。数多くの球団が前田獲得に興味を示していたが、この結果、最終的にはド軍、ダイヤモンドバックス、アストロズの3球団しか残らなかったといわれている。

地元紙ロサンゼルスタイムズはマエケンの姿勢を評価

ド軍にしてみれば、リスク回避の思惑から基本年俸を極力抑えた。そればかりか、前田には実績に応じた基本年俸の見直しやオプトアウト(契約破棄)、年俸調停の権利さえもないという。8年という長期契約、高い出来高払いであるとはいえ、大リーグの昨季の平均年俸(開幕時)が約4億9500万円ということを思えば、日本を代表する先発右腕はかなり買い叩かれたと言わざるを得ない。

確かに大リーグ関係者には、「日本人投手は米国に来ると手術する」というイメージを持つ人は多い。松坂(現ソフトバンク)、上原(レッドソッツクス)、ダルビッシュ(レンジャーズ)、田中(ヤンキース)などはその例に当てはまってしまう。しかし、前田は日本での9年間で1度も長期離脱はしていないのだ。不安はなく、自信があるからこそ、低い基本年俸でも飲んだといえる。

「不安は全くない。ゼロです。これから先もずっと投げる自信がある。自分の体を知りながら、チームに貢献したい。1年間、しっかり投げて、シャンパンファイトをしたいと思っています」

記者会見で、背番号「18」のユニホームに袖を通して、明るく答えた前田。その姿に地元紙ロサンゼルスタイムズは、「ド軍には安全で、前田にはリスクの高い契約。彼は自分自身に賭けた。1球も投げる姿を見ていないうちから彼のことが好きになった」と興奮気味に伝えた。リスクを知りながらもあえて挑戦するストーリーがアメリカ人は大好きだ。前田はそれこそ1球も投げていないのに、早くも多くのファンの心をつかんだといえるだろう。
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