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2015年に最も躍進したJ1のクラブは?

2015年のJ1リーグは第2ステージが終了し、チャンピオンシップを残すのみとなった。それぞれのチームにとっての今シーズンは、評価できるものだったのか、それとも反省に包まれたものなのか。客観的な数字から見極めてみる。

戸塚 啓

執筆者:戸塚 啓

日本代表・Jリーグガイド

19位から8位へ躍進した湘南

2015年のJ1リーグは、レギュラーシーズン(第1、第2両ステージ)とポストシーズン(チャンピオンシップ)で争われる。第1ステージを制した浦和レッズ、第2ステージ優勝と年間最多勝点を記録したサンフレッチェ広島、それに年間勝点3位のガンバ大阪が出場するチャンピオンシップ(以下CS)は、今週末から開催される。

2015年シーズンのリーグ戦優勝チームはまだ決まっていないが、各チームの1年はレギュラーシーズンにこそ詰まっている。CSを前にした評価にも、揺らぎはないだろう。

今シーズンの年間順位(第1、第2ステージの合計勝点)は、以下のようになっている。

1位)サンフレッチェ広島
2位)浦和レッズ
3位)ガンバ大阪

4位)FC東京
5位)鹿島アントラーズ
6位)川崎フロンターレ
7位)横浜F・マリノス
8位)湘南ベルマーレ
9位)名古屋グランパス
10位)柏レイソル
11位)サガン鳥栖
12位)ヴィッセル神戸
13位)ヴァンフォーレ甲府
14位)ベガルタ仙台
15位)アルビレックス新潟
16位)松本山雅FC
17位)清水エスパルス
18位)モンテディオ山形
※16位から18位までは、J2リーグに降格。

それでは、2014年に比べて順位を上げたチームは? 

湘南ベルマーレ)△10(J2リーグ1位から8位)
広島)△7(8位から1位)
FC東京)△5(9位から4位)
名古屋)△1(10位から9位)


前年から順位をあげたのは、わずか4チームだけだった。今年のJ1でもっとも躍進を遂げたのは、J1復帰1年目の湘南だった。

湘南躍進の要因とは?

J1は18チームなので、J2の1位はJ1の19位に置き換えられる。後方からのスタートだったわけだが、第1ステージは10位、第2ステージは9位に食い込み、通算成績でも13勝9分12敗と勝ち越した。

J2優勝を遂げた2014年から、チームの編成が様変わりしたわけではない。得点源だったブラジル人FWウェリントン(27歳)が退団し、チーム3位のゴールをあげた武富孝介(25歳)が所属元の柏へ戻った。ディフェンスラインのレギュラーを務めた丸山祐市(26歳)も、所属元のFC東京へ帰還した。

その一方で、即戦力の補強はブラジル人センターバックのアンドレ・バイア(32歳)にとどまる。浦和レッズから日本代表経験のあるディフェンダー坪井慶介(36歳)、攻撃のマルチタレント山田直輝(25歳)が加入したものの、彼らは不動のレギュラーではなかった。現有戦力の底上げをベースとしたチーム作りで、”J1の19位”から8位へジャンプアップしたのである。

J1で存在感を発揮する土台は、湘南スタイルと呼ばれる攻撃へのこだわりにある。選手全員がエネルギッシュに、アグレッシブにプレーするサッカーは、コンテンツとしての魅力にも溢れている。

ヴァイッド・ハリルホジッチ監督率いる日本代表にも、22歳の遠藤航が選出されている。昨年は湘南でプレーした丸山も、今年初めて日本代表に選ばれた。遠藤はリオ五輪出場を目ざすU-22(22歳以下)日本代表でキャプテンを務めており、いまもっとも期待を集める若手選手と言っていい。


問われる費用対効果

年間最多勝点を記録し、第2ステージを制した広島も、補強が成功につながったわけではない。シーズン開幕前はむしろ、戦力ダウンを囁かれていた。

2年連続で2ケタ得点をマークしていたフォワード石原直樹(31歳)を浦和レッズに引き抜かれ、日本代表経験のある高萩洋次郎(29歳)が海外クラブへ移籍した。ディフェンスラインの構成要員からは、韓国代表クラスのファン・ソッコ(26歳)が鹿島へ新天地を求めた。前評判は決して高くなかった。

それでも、戦いながら成長していくことを誓ったチームは、森保一監督(47歳)のもとで力をつけていった。継続性がもたらした成功である。

もっとも、2012年、13年とJ1リーグ優勝を成し遂げていたチームだ。日本代表クラスの選手が揃う陣容にスキはなく、U-22日本代表フォワードの浅野拓磨(21歳)がスーパーサブとして機能するなどの底上げもなされた。振り返れば昨年の8位が意外なくらいで、第2ステージ制覇、年間最多勝点のいずれも驚きではない。

FC東京はCS出場にあと一歩まで迫った。第2ステージ最終節で勝利していれば、年間勝点3位になることができた。

首都・東京をホームタウンとするチームには、新旧の日本代表がズラリと並ぶ。年齢で区切られた代表の経験者も多く、現在のU-22日本代表候補ではディフェンダー奈良竜樹(22歳)、ミッドフィールダー中島翔哉(21歳)が常連だ。タレントの質と量は、Jリーグのトップクラスである。

逆説的に言えば、2015年の年間4位という成績に意外性はなく、むしろ物足りなさを残すものでもあった。

第1ステージだけで10ゴールをあげた日本代表フォワード武藤嘉紀(23歳)が、第2ステージを前にドイツ・ブンデスリーガへ移籍したことで、攻撃の迫力がダウンしたのは否めない。とはいえ、第1ステージと第2ステージの比較で、ゴール数が極端に減ったわけではなかった。外国人ストライカーも補強している。就任2年目のマッシモ・フィッカデンティ監督(48歳)の退陣が濃厚と見られるのも、レギュラーシーズンの成績と保有戦力に隔たりが感じられるからだろう。

名古屋は西野朗監督の退任が発表された。

今シーズンはケガ人の続出に悩まされながらも、昨年の10位から順位をひとつ上げている。最低限の成果は残したとも受け取れるが、名古屋はお金を遣っている。2014年の人件費は20億5300万円で、柏レイソル、浦和レッズに次いでリーグで3番目に多い。同様に15年度も、リーグ上位の資金が注ぎこまれているはずである。費用対効果という意味で物足りなさが残るだけに、監督交代の選択肢が浮上したのだろう。


順位を6つ下げた柏は監督が交代

では、昨年から順位を下げてしまったチームは?

柏)▼6(4位から10位)
鳥栖)▼6(5位から11位)
新潟)▼3(12位から15位)
ガンバ大阪)▼2(1位から3位)
鹿島)▼2(3位から5位)
清水)▼2(15位から17位)※J2リーグ降格
神戸)▼1(11位から12位)

2014年のチーム人件費が最も多かった柏は、4位から10位へ順位を落とした。今シーズンを迎えるにあたっては、オランダのVVVフェンロから日本代表経験のある大津祐樹(25歳)を買い戻すなど、アジアチャンピオンズリーグ(以下ACL)での上位進出も見据えたメンバーを揃えた。

ところが、第1ステージでは17試合で4勝しかできずに14位と低迷した。最終的には年間10位でフィニッシュしたものの、前年に比べて大幅に戦力がダウンしたわけではない。就任1年目にして吉田達磨監督(41歳)が退任することになったが、その理由は名古屋に共通するところがあるだろう。投資に見合った成績を残せなかった以上、現場にメスが入るのは避けられない。

では、2015年のJ1リーグでもっとも費用対効果に優れたチームはどこだったのか? 次回の更新分では、レギュラーシーズンの成績とお金の関係を掘り下げてみる。
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