逆転優勝への望みをつなぐ力投
9月13日(日本時間14日)、首位ブルージェイズとの直接対決に3連敗を喫し、迎えた第4ラウンド。負ければ自力優勝の可能性が消滅する大事な一戦に先発した田中は、7回4安打無失点、7奪三振無四球の好投で、12勝目(6敗)を挙げ、チームの連敗を5で止めるとともに、逆転優勝への望みをつないだ。
けっして調子がいいとはいえなかった。だからこそ、丁寧に低めをつくピッチングを試みた。しかも最近、むきになってストレート勝負にいき、1発を浴びるケースが多く「真っすぐがそんなに通用するとは思わないので」と反省。その日のいい変化きを主体にいくことに決めた。
この日はカットボールだった。7三振のうち、スプリットで奪ったのは1個だけ。140キロ前後で横に滑るカットを多投することで、相手打線を翻弄した。
「絶対に勝つんだという強い気持ちでした」
何しろ首位ブルージェイズとの直接対決で前日まで3連敗。投手陣は10被本塁打、30失点とメッタ打ちにあっていた。この悪い流れをエースが断ち切るしかない。しかも、負ければ自力優勝の可能性が消滅するという崖っ縁。燃えないわけにはいかない状況で、7回無失点という結果を出した
規定投球回にも到達、逆転優勝に全力を尽くす
田中に、ジラルディ監督も「こういう試合で投げるために、タナカは日本から来たのだと思う」と最上級の讃辞を送った。右ヒジの不安を抱えながらの今季スタート。この日、チーム142試合目で投球回が143。故障で離脱した昨季(136回1/3)を上回り、規定投球回に到達した。不安一掃はもちろん、エースとしての頼もしさも増しての2年目となった。
新たな気持の張りもできた。9月5日(日本時間6日)、まい夫人(31)が妊娠5カ月であることを公表した。楽天時代の2012年に結婚、2014年、大リーグ移籍後もヤンキースの本拠地ニューヨークで暮らしていた2人に待望の第一子。「もちろん、うれしいですよ。自分にできることがあれば、(妻を)サポートしていって、協力してやっていけたらいい」と田中もパパの自覚を持ち、野球に、ヤンキースの逆転優勝に全力を尽くす覚悟だ。
残りあとわずかなレギュラーシーズン。1年目の昨季は味わえなかった終盤の醍醐味を田中はその右腕で味わおうとしている。