留萌駅とその周辺
留萌は駅舎があり、駅員もいる駅。何の変哲もない2階建てのビルだが、個性的な駅舎が増えた今となっては、かえって国鉄時代を偲ばせる貴重な建物かもしれない。かなりの乗客が下車し、車内は寂しくなってしまった。ここで10分程停車。その間に後部車両は切り離され、留萌始発の深川行きとして折り返していく。留萌駅では、留萌駅のみならず、終点増毛駅の硬券入場券を売っているので、記念に買っておくとよい。
留萌を出ると、港の運河に架かる鉄橋を渡る。並行してかつて港への臨港線が使っていたと思われる副港橋梁が残っているが、鉄骨のトラスに雑草やら藪がまとわりつき凄まじい寂れようである。このまま永遠に放置しておくのであろうか?
日本海に沿って走る留萌~増毛間
やがて、車窓には日本海が現われる。江差線の木古内~江差間亡きあと、JR北海道の路線で日本海沿いに走るのは、このあたりと函館本線小樽付近、宗谷本線のごく一部の区間だけである。しかし、路盤の状態が悪く、列車は恐る恐る動いていくという感じだ。いくつも駅に停まっていくが、乗り降りはほとんどない。どこも、短いホーム、板張りのホーム、貨車を改造した駅舎など侘しくなるくらい粗末な造りである。
その中に、阿分(あふん)という駅があった。駅名を耳にするだけで、脱力してしまいそうな風変わりな駅名。アイヌ語起源のいかにも北海道らしい地名だ。
港が見え、多くの漁船が停泊している。その脇を進み、しばらくすると線路は行き止まりになった。終点増毛は、高倉健主演の映画「駅STATION」(1981年)に登場した。その頃と比べると、1面だけのホームは変わりないものの、側線はすべて撤去され、1線だけの必要最低限の施設しか残っていない。駅舎も無人で、過去の繁栄を偲ぶばかりである。ホームや駅周辺をぶらついていた一握りの鉄道ファンや観光客が再び車内に戻ると、列車は静かに留萌方面へ折り返していった。
今後の展望は?
留萌本線は、一時期はSLイベント列車が走り、観光用の増毛ノロッコ号も年に数日運転されるなど、集客のための手を少しは打っているようだが、地の利がよくないのか、あまり効果はないようである。利用客は減る一方で、歯止めがかからない。かつては本線の名の通り、支線(羽幌線)や炭鉱鉄道を従え、繁栄していたのだが、枝葉がすべてなくなると、本線自体も寂れる一方となる。このように、廃止が続くと、鉄道ネットワーク全体が不振となり、地域の崩壊がどんどん進んで行く危惧もあるので、一路線の廃止で済む問題とは思えない。それを食い止めるための政策上の何らかの援助や工夫が必要であろう。