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「須走ルート」が富士山初心者におすすめ!登山ガイド

【2019年更新】日本一の高さ(3,776m)を誇り、2013年には世界文化遺産にも登録された富士山。一度は登ってみたと思いつつ、どうやって登ればいいか分からないという人が多いのではないでしょうか。4つある富士山の登山ルートのうち、初心者にオススメなのが「須走ルート」です。「須走ルート」の登山口までの交通、山小屋、登山道の様子や、一泊二日の登山スケジュールなどをガイドします。

森川 天喜

執筆者:森川 天喜

国内旅行ガイド

富士山に登りたいけど、どうすればいいの?

日本一の高さ(3,776m)を誇り、2013年には世界文化遺産にも登録された富士山。一度は登ってみたと思いつつ、どうやって登ればいいか分からないという人が多いのではないでしょうか。
日本一の高さを誇る富士山。一度は登ってみたいという人は、多いと思います

日本一の高さを誇る富士山。一度は登ってみたいという人は、多いと思います


4つある富士山の登山ルートのうち、初心者にオススメなのが「須走ルート」です。「須走ルート」の登山口までの交通、山小屋、登山道の様子や、一泊二日の登山スケジュールなどをガイドします。
 

富士山初心者に須走ルートがオススメな理由

富士山には、吉田ルート、須走ルート、御殿場ルート、富士宮ルートと、全部で4つの登山ルートがあります。

富士山の4大登山ルートを紹介

このうち、「御殿場ルート」は頂上までの道のりが他のルートと比べてかなり長く、頂上までの所要時間も余分にかかるので、初心者は避けた方がいいと思います。
「須走ルート」六合目手前から見た富士山山頂

「須走ルート」六合目手前から見た富士山山頂


一方、「須走ルート」が初心者にオススメな理由は、以下のとおりです。

◆登山客が比較的少ないので、マイペースで歩ける
吉田ルートに比べて登山客が少ないので、吉田ルートと合流する八合目までは、マイペースで歩けます。「ここで立ち止まったら、後の人に迷惑かな?」などを気にしないで歩けるのは、初心者にとって大きなメリットです。

ちなみに、2018年夏期の各ルートの登山客数は、
・吉田ルート:150,845人
・須走ルート:26,696人
・御殿場ルート:11,792人
・富士宮ルート:18,828人(8月14日以降に計測カウンター不具合が発生し、計測できなかったため参考値)
でした。(環境省統計による。調査期間:2018年7月10日~9月10日。八合目で計測)

◆途中まで、樹林の中を歩ける
樹林帯の中を歩く(五合目付近)

樹林帯の中を歩く(五合目付近)


「須走ルート」は、六合目過ぎ辺りまで樹林帯の中を歩くので、風の影響をあまり受けずに歩くことができます。また、高度が上がるにつれて変化していく自然環境を楽しめるのも大きな魅力です。

◆下山ルートが楽チン
「須走ルート」は、登山ルートと下山ルートが一部を除いて、別々になっています。下山ルートの大部分を占める「砂走り」という表面が砂地の道は、一歩足を踏み出すと2~3歩前へスイスイ進めるので、登りに比べてかなり短い時間で下山できます。
 

持ち物の準備と登山スケジュールを立てる

多くの人が登る富士山ですが、侮るのは厳禁!undefinedしっかりした準備と登山計画を

多くの人が登る富士山ですが、侮るのは厳禁! しっかりした準備と登山計画を


◆持ち物については、下記のリンク先のページによくまとまっているので参考にしてください。

富士山登山の装備と持ち物リスト

◆登山スケジュール
富士山のような3,000mを超える山で最も怖いのは、高山病です。一日で頂上まで登って下山する、いわゆる「弾丸登山」は避けるべきです。五合目で高度に十分に体を慣らすためにも、以下のようなスケジュールをオススメします。

【一日目】
夕方、五合目の山小屋に到着。夕食を取り、そのまま就寝。

【二日目】
4:30起床。富士山の日の出時刻は、7月上旬で4:30くらい、8月下旬で5:00くらいなので、山小屋でご来光を見る。その後出発し、お昼前後に登頂。時間に余裕があれば、頂上付近を一周する「お鉢巡り」(所要1時間半)を楽しみ、下山。

以下、「須走ルート」五合目へのアクセスと、登山の様子を具体的にレポートします。
 

登山口(五合目)までの交通は?

一合目から登るという強者もいるようですが、多くの人は五合目から登山を開始すると思います。

須走口五合目までは、マイカーの場合、夏期はマイカー規制が行われているので、麓の駐車場でシャトルバスまたはシャトルタクシーに乗り換えます。

マイカー規制情報

公共交通機関利用の場合は、JR御殿場線の「御殿場」駅、小田急線の「新松田」駅から五合目行きの路線バスが出ています。
バスは往復切符を買うと、かなりお得!

バスは往復切符を買うと、かなりお得!


バスを使う場合、かなりお得な往復切符を購入するといいでしょう。御殿場駅からの場合、通常料金が片道1,540円(往復3,080円)のところ、往復切符だと2,060円で約1,000円以上もお得です。

富士急バス 富士山を発着するバス
 

山小屋はどんな感じ?

私は、2015年~2017年の三年連続で7月に「須走口」から登山しましたが、いずれも須走五合目の『菊屋』さんという山小屋に泊まりました。部屋は相部屋ですが、衝立でスペースを仕切ることができ、更衣室があるので着替えも安心です。

夕方に到着すると、二階の部屋の窓からは、山中湖や湘南海岸などを見渡すことができ、本当にすぐ近くを雲が通過していきます。

運がいいと見ることができるのが「影富士」。
一面に広がる雲海の上に投影された「影富士」

一面に広がる雲海の上に投影された「影富士」


一面に広がる雲海の上に、富士山の影が投影され、日が沈むにしたがって、その影がどんどん高くなっていく。思いがけない自然のドラマに遭遇し、得した気分になります!

それから、『菊屋』さんでいいなと思うのが、夕食です。山小屋の食事というとカレーやラーメンが定番ですが、『菊屋』さんではボリュームのある定食が出されます。
 
山小屋『菊屋』さんの夕食

山小屋『菊屋』さんの夕食


なお、山小屋は早朝から登山を開始する人もおり、消灯が早いので気をつけましょう。

<DATA>
■山荘 菊屋
住所:静岡県駿東郡小山町須走54-11
TEL:0550-75-5868、山荘直通TEL:090-8680-0686 (5月~10月)
料金:一泊、夕食と朝食用のお弁当(おにぎり)付きで、7,200円
山荘「菊屋」ホームページ
 

ご来光を撮影してから出発。八合目まではのんびり登山

【起床 4:30】
7月中旬の「ご来光」は4:40分頃。丹沢の峰々の間に日が昇り始めます。頂上でご来光を見たいという人も多いと思いますが、その場合、夜通し山道を歩かなければならないので、慣れるまでは避けた方がいいと思います。
五合目の山小屋で見るご来光

五合目の山小屋で見るご来光


【須走口五合目出発 5:30】
ご来光の撮影後、5:30くらいにのんびり出発。登山口で「富士山保全協力金」の1,000円を支払うと、バッチとシールをもらえます。
「富士山保全協力金」を支払うと、もらえるバッチ

「富士山保全協力金」を支払うと、もらえるバッチ


五合目からしばらくの間は、木立の中を小鳥のさえずりを聞きながら歩いて行きます。たまに木立が途切れた場所で、眼下にそびえる周囲の峰々を一望でき、まさに絶景でした。
眼下にそびえる周囲の峰々を一望。まさに絶景!

眼下にそびえる周囲の峰々を一望。まさに絶景!


前方を見れば、遠くから見るのとは全然違う、赤茶けた富士山が見えます。荒々しい本当の富士山の姿を見た気がして、これから、この山に挑むのかと思うと気が引き締まります。
遠くから見るのとは全然違う、赤茶けた富士山

遠くから見るのとは全然違う、赤茶けた富士山


六合目過ぎあたりまでは、木立の中を歩いていきますが、その後は周囲の様子が一変し、岩と砂、そしてほんの少しの高山植物だけの世界に。

苦しくても目標があると、意外にがんばれるものです。上を見上げると各合目ごとにある次の山小屋が見えるので、「よし、あの山小屋までがんばるぞ!」と思い、一歩一歩前進!
下から山小屋が見えるので、目標に!

下から山小屋が見えるので、目標に!


【八号目 10:30】
私は、各合目の山小屋に到着するたびに休憩しながら、のんびり登山しましたが、それでも10:30頃には八合目に到着。

ここから先、山頂付近は天気が変わりやすいのと、傾斜が急になり、重い荷物を背負っているとキツいので、荷物預かりサービスを行っている八合目の山小屋に不要不急な荷物を預けてしまうこともできます。

なお、須走五合目から八合目までの所要時間ですが、ゆっくり登って4時間半くらいです。体力や登山の経験によって、所要時間はまったく異なってきますので、あくまでも目安です。
 

キツかった八合目から頂上まで

【八号目出発 10:30】
富士山でキツいのは、じつは八合目から先だということを知りました。傾斜が急になり、しかも柔らかい土と細かい石で足元が安定せず、足を運んでもズリッと滑る感じで、思いの外、前に進めません。

しかし、八合目のさらに上、標高3,400mの本八合目から見た、一面に広がる雲海は、生涯忘れられない景色になると思いました。
本八合目(標高3,400m)から見た、一面に広がる雲海。こんな素晴らしい景色を見てみたいですよね!

本八合目(標高3,400m)から見た、一面に広がる雲海。こんな素晴らしい景色を見てみたいですよね!


なお、九号目には山小屋がないので、トイレや買い物は八合目付近(八合目、本八合目、八号五勺)で済ませておきましょう。

2015年に登山したときは、九号目付近でそれまでの晴天が打って変わり、風が急に強くなって、雨がパラつきはじめました。急いでレインウェアを着込み、風に煽(あお)られないよう注意しながら進みました。

山登りで怖いのは、このような天気の急変。レインウェアや、リュックの中身をぬらさないためのザックカバーなどは必須です。
雨が降り始める中、最後の岩場を登った2015年の登山

雨が降り始める中、最後の岩場を登った2015年の登山


さあ、いよいよラストスパートです! 須走口頂上手前の岩場を登って行きます。ふつうに登れば、それほど危険なことはありませんが、雨が降っているときは滑らないよう注意が必要です。

【正午過ぎに須走口頂上へ】
しばらくすると、頂上の神社の鳥居が見え、ようやく須走口頂上にたどり着いたのだなと実感。この達成感は、言葉にできませんね。

八合目から頂上までの所要時間は、1時間半~2時間くらい見ておきましょう。
 

お鉢めぐりと下山ルート

須走口頂上にたどり着き、とくに初登頂時は達成感もひとしおですが、ここでは、まだ頂上を極めたとはいえません。

山小屋の途切れる場所まで進んで西のほうを眺めると、中央にポッカリと口を開けた火口の向こうに、一際高い場所があり、その上に建っているのが富士山頂の気象観測所。
剣ヶ峰の上に建つ、富士山頂の気象観測所

剣ヶ峰の上に建つ、富士山頂の気象観測所


あの観測所の場所こそが、日本の最高地点である剣ヶ峰(3,776m)なのです。

剣ヶ峰を含む、富士山頂の火口の周囲をぐるっとまわるコースを「お鉢めぐり」といい、「お鉢めぐり」の所要時間は1時間半ほど。途中には「富士山頂郵便局」などもあります。
2017年剣ヶ峰登頂時の筆者

2017年剣ヶ峰登頂時の筆者


剣ヶ峰の頂上には、気象観測所のほか、「日本最高峰富士山剣ヶ峰」と刻まれた石碑と、二等三角点などが置かれています。

さて、もっとゆっくりしていたいところですが、帰りのバスの時間もあるので、そろそろ下山しましょう。下山ルートを下っていくと八号目に出ますので、ここで預けた荷物を回収できます。

下山ルートは八合目で「須走ルート」と「吉田ルート」が分かれます。「須走ルート」の七合目から下は「砂走り」という、石混じりの砂の道を歩くので、一歩足を踏み出すと2~3歩前へスイスイ進めます。なお、「砂走り」で、靴の中に砂が入らないよう、「登山用スパッツ」を用意しておくといいでしょう。
 

 なお、下山の所要時間は、「砂走り」の歩き方によって大幅に変わるので、あくまでも目安ですが、3時間は見ておいたほうがいいでしょう。

 

富士山に登っての感想や注意事項など

【富士山は誰でも登れる?】
ふつうに体力がある人なら、きちんと計画を立て、無理をしなければ頂上まで登るのに問題ないと思います。一番、怖いのは高山病でしょう。私は五合目で一泊し、ゆったり登りましたが、高山病対策として有効だったと思います。

【混雑は?】
私が登ったのはトップシーズンの前ということもありますが、人は少なめでした。山小屋の人の話では、駐車場代やシャトルバス代をはじめ、現在の富士山はお金がかかり過ぎるため敬遠する人が多いのではないかという話でした。しかし、お金をかけても一度は登る価値があるのが富士山だと思います。

【一人でもオーケー?】
一人で登山に訪れる人も多くいます。まったく人が通らないような所に足を踏み入れなければ、万一ケガをしたりした場合でも助けを呼ぶことは可能でしょう。一人で歩く場合、ラジオや音楽を聴きながら歩いている人も見かけます。

【トイレ】
山での心配事といえば、トイレですね。富士山では山小屋で、200円程度で利用できます。清潔なトイレが多いので安心ですが、バイオトイレですのでトイレットペーパーは流さず、ゴミ箱に捨てます。

【ゴミ】
持ち込んだ物から出たゴミは基本持ち帰りです。山小屋でジュースなどを購入した場合、その山小屋で購入したペットボトルや缶は回収してくれます。

【飲料水・携帯食料など】
標高が高い山小屋では、輸送費がかかるため、缶ジュースが300円、ペットボトルが500円以上などが当たり前。邪魔にならない範囲で、なるべく下界で購入しておいたほうがいいでしょう。
気圧の関係でパンパンに膨らんだ携帯食料

気圧の関係でパンパンに膨らんだ携帯食料


また、途中でお腹が空いたときのエネルギー補給のために、携帯食料を持って行った方がいいですが、途中で見てみると、気圧の関係でパンパンに膨らんでいました!

【通信環境】
私のiPad(NTTドコモ契約)は、五合目~山頂まで通信可能でしたが、通信状況はキャリアによって異なるようです。

【関連記事】
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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