中国は先端分野に国を挙げて注力
これまで日本の1960年代や70年初めと同じように、中国も重工業が経済成長を引っ張り、輸出で外貨を稼いできました。当時の日本製品は、今では知らない人も多いと思いますが、「安かろう悪かろう」の代名詞でありましたが、80年代になると「Made in Japan」は最も高性能で、高品質を表す言葉へと変わりました。日本のグレードアップを支えたのは繊維、重工業や輸出で稼いだお金を研究開発や先端技術分野への再投資へ積極的に投じてきたからです。そして段階的に医療などの先端分野やIT技術も目覚しい発展を遂げてきたのです。現在の中国はそのような移行段階に国を挙げて取り組んでいます。繊維や重工業のトーンが低くなり、先端技術開発と高付加価値製品・サービスへの補助が盛んに行われ、また外需から内需への取り組み、医療改革、年金改革など、先進国への移行がみられます。2008年の中国全体で投じられた研究開発費は約6.5兆円にのぼり、これは前年比+24.4%増にもなりますが、10年前より毎年これ位のペースで増加し続けています。このうち73.3%は企業による研究開発投資であり、残りは国や大学によるものです。今後も日本の規模に並んだGDPの2.5%を研究開発に注ぎ、欧米水準の最先端技術国になるという計画です。
今の中国のイメージからすればまだ信じられないかもしれませんが、恐らくそのようなことが近い将来実現されるでしょう。中国ではあらゆることが順番に信じがたいペースで伸びており、例えば10年前に日本の1/4以下でしかなかった中国のGDPは今年日本を超え、2006年に日本を抜いて外貨準備高世界一になったばかり、と思えば今それは日本の2.5倍にもなり、2005年に日本に並んだ自動車販売台数も昨年日本の3倍となり、このほか輸出額、鉄鋼や造船の生産量、港湾取扱量など、殆どの分野でごぼう抜きで世界一となる現象が起きています。
そして段階的に、最後にごぼう抜きが起きるのが医療やITなどの先端技術分野であり、ハイペースな研究開発費投入と毎年増え続ける大量の新卒技術者によってその前兆が見られます。中国が発表した昨年の特許申請数は58万件で前年比41%増でした。国連の世界知的所有権機関の発表でも中国は昨年30%増の特許申請数で、主要国のトップでした。現在中国はバイオや遺伝子工学などの医療分野でも急速に欧米に追いつこうとしており、幹細胞技術を使った世界初の豚インフルエンザワクチンの生産に取り掛かったのも中国でした。このような意味で中国の面白い技術を持った企業に注目しておいて、相場が安くなったところで少しずつ買っていくというのは面白いと思います。