「ドルビーアトモス」なのか「ハイレゾオーディオ」なのか?
サムスンのGALAXYやソニーモバイルのXperiaなど、「ハイレゾオーディオ」に対応したスマートフォンが多くなってきたのに対して、「ドルビーアトモス」に対応した世界初のスマホが、今回のMWCでお披露目されていました。それがレノボの「A7000」です。ドルビーアトモスというのは360度仮想サラウンド技術で、最近の映画で採用作品が増えているものです。家庭向けに、スピーカーを使ったホームシステムというものがあるのに対して、A7000はヘッドフォンで聴く形式のドルビーアトモスの「モバイルシステム」に対応しています。
最近では映画はドルビーアトモスに対応したものが非常に増えており、対応したブルーレイディスクが増えていますが、これはホームシステムでしかアトモス形式で再生できません。
A7000のようなモバイルシステムで再生するには、モバイル用のドルビーアトモスのコンテンツが必要なわけですが、これは現時点では日本では配信されていません。しかし、北米ではアマゾンが配信しているので(最新のKindle Fire HDX8.9が対応している)、将来的にはアマゾンが日本でも配信を始める可能性が高いのではないかと思います。
今後のスマホでドルビーアトモスが流行るのか?ハイレゾオーディオが流行るのか?興味深いところです。
多彩になっていくスマホOS
現在、スマホ界のOSはiOSとAndroidの2つのメインストリームに加え、WindowsPhoneがあるという感じですが、最近ではいろいろなOSを搭載したスマホが出てきています。たとえば、昨年FireFoxOSを搭載した「Fx0」というモデルが日本でもリリースされましたが、このMozillaもMWCにブースを出していました。Fx0も展示されており、現在、世界最速のFireFoxOS搭載機と紹介されていました。世界でも最先端のFireFoxOS搭載機が日本で買えるわけです。
このFireFoxOS以外にUbuntuOSを搭載したスマホも登場していました。UbuntuというのはPC版もあります。現在のPC版がクラウドOSであるのに対して、スマホ版はネットに接続していなくても動作できます。
実際に触ると、わりと普通に動作するという印象で、日本語版も将来的に作られる予定だそうです。
DNPのカードプリンター
日本のDNP(大日本印刷)のカードプリンター「CX-D80」もオモシロいものでした。デジカメで撮影した写真を使い写真入りの身分証明プラスティックカードを1枚1分もかからず、プリントしてくれます。これはすでに世界的に数多くの企業に販売されており、社員証を手早く作成したりするために使用されているそうです。
基盤防水テクノロジー「HZO」
通信技術ではありませんが、興味深い会社が「HZO」です。現在、いくつかのスマホは防水機能を取り入れていますが、それはほとんどの場合、外装で水が入ることを防止しています。これに対して、HZOは「基板」自体に防水を施す技術を提供する会社です。日本でもスマホの基板をミスト防水加工する業者がありますが、このHZOでは製造ラインに組み込むことができるテクノロジーを持っており、企業から発注されるとオペレーター込みで製造ラインにマシンを配置するというシステムだそうです。
なお、現状ではナイキの最新のヒューエルバンドなどが、HZOのシステムを採用しているそうです。
外装をそのままに基盤に防水加工をするだけで防水を実現できるので、既存の製品を防水にしたい場合などに利便性が高そうなテクノロジーですね。
高音質技術でコミュニケーションが変わる?「EVS」
ドコモブースに展示されていた技術のなかで、「EVS」という技術がスマホの使い方を変えてくれそうで、オモシロいものでした。現在、ドコモやauで「VoLTE」(ヴォルテ)という高音質技術が登場しているのを多くの人が知っていると思いますが、EVSはこのVolteのさらに次の世代の高音質技術です。
VoLTEはデジタル圧縮による高音質技術なわけですが、このEVSではVolteよりも周波数帯域が広くなっており、高音質化されています。しかも、データ量自体はVoLTEと変わらないという話です。つまりは圧縮技術の世代が変わっているわけです。
EVSによって、今までと比較すると音楽を聞いても、ある程度、どんな曲なのか把握できるほど高音質化されるわけですが、これを利用して、ドコモでは新しいコミュニケーションを提供しようとしているそうです。
なんと、通話者が「笑い」や「パンチ」のような効果音のアイコンを押して、自分のタイミングで会話に効果音を入れたり、自分の通話中にBGM(自分の好きな曲を選択可能)を流すなどの機能が使えるようになるようです。
これによって、コミュニケーションをよりリッチにすることができるというのがドコモの考える「通話」の未来だそうです。EVSは通話コミュニケーションに新しい世界を開いてくれるのかも知れません。
その気になれば、技術的にはわりとすぐに投入できそうなEVSですが、Volteをようやくはじめたばかりなので、実際に使えるようになるのは数年先になりそうです。
センシング半導体メーカー「AMS」
AMSという名前は日本ではあまりに馴染みがないのではないかと思いますが、オーストリアのセンシング半導体のメーカーです。たとえば、スマホのディスプレイの明るさが変わりますが、この明るさをセンスするための半導体を作っているメーカーです。日本での知名度はゼロに近いと思いますが、ソニーモバイルのXperia、サムスンのGALAXYなど、多くのメジャーなスマホがAMSのパーツを使用しています。
また、動きの検知や音の検知など、さまざまなセンサーを作っており、日本のオーディオテクニカなどのノイズキャンセリングヘッドフォンでも使われているそうです。
このような普段、あまり表の話題に出てこないようなメーカーを知ることができるのもMWCの面白いところです。
次世代モバイル通信技術「5G通信」
最近でも高速化が進んでいるモバイル通信ですが、今回のMWCでよく見られたのが次世代通信である「5G」の文字。ドコモではオリンピックが開催される2020年には導入する予定だそうです。その通信速度は最高で理論値10Gbpsで実速度は1Gbps程度のスピードは出るようになる模様。これによって、通信インフラなど、いろいろなことが変わっていきそうです。