目指したのは究極のモーターサイクルか
このムルティストラーダ1200、タイプがふたつあります。スタンダードなムルティストラーダ1200と、ムルティストラーダ1200Sです。エンジンやフレーム構造は同じで、違いはその他のシステマティックな装備。それぞれの装備内容は次ページ末のスペック一覧をご覧いただくとして、このムルティストラーダの根幹を成す主要部分をご紹介していきましょう。デビューから10年以上経つムルティストラーダですが、今回のモデルはニューモデルと表現して差し支えないほど大幅に進化しています。最大の注目は新機能と搭載した新型エンジン、ドゥカティ・テスタトレッタ DVTです。
DVTとは「デスモドロミック可変タイミング」の略称で、このDVTシステムが組み込まれていることにより、低回転域/高回転域の双方でよりよいパフォーマンスを引き出すことができるようになっています。つまり、求められる特性の異なるシチュエーション(ムルティストラーダで言えば、4つのモード)においてベストなパフォーマンスを供給することができるシステムというわけです。
実際にムルティストラーダに乗ってみた私自身も、それぞれの状況下でのパフォーマンスにはただただ驚かされるばかり。それも、中途半端にセッティングが変化するのではなく、誰が乗っても手に取るように分かるほどの個性が感じられます。"four bike in one"のコンセプトは伊達ではありません。これほどシステマティックにパワー供給を調整できるうえに燃費まで向上しているというのだから、誰もが求める理想のモーターサイクルと言っていいでしょう。
格段に乗りやすくなった数々の仕様
これほど大柄なオートバイだと、やはり気になるのは足着き性。しかし今回のムルティストラーダ、このシートが大幅に改善されているのです。端的に言えば、ライダーが跨がる股間部分が細くされました。これにより、乗車時に両足が真下へストンと降りるのです。当たり前のことのように思えるでしょうが、特に海外メーカー系モデルのシートはこの股間部分が幅広く、以前のムルティストラーダも例外ではありませんでした。日本導入モデルはシート高が800mmのローシート(通常は845~825mm)になるそうで、今回のスペイン遠征に同行したドゥカティジャパンの女性スタッフがこのローシートに跨がってみたところ、「以前のムルティストラーダだと乗れる気がまったくしなかったけど、これなら全然乗れます」と、スイスイ乗りこなしたほど。これは私たち日本人にとって嬉しい改善点と言えますね。ライド・バイ・ワイヤやトラクション・コントロール、ウィリー・コントロールなどは1200 / 1200Sともに標準装備とされていますが、ドゥカティ・スカイフック・サスペンションは1200Sにのみ搭載。スカイフックとは「宙づり」を意味し、いかなる路面状況でも宙から吊り降ろしているかのように車体の水平性を均一に保たせるためのシステムのことです。
たとえば、一般道を走行中に大きなワダチやギャップを踏んでしまったとします。普通はその瞬間、フロントフォークが大きく上下運動してハンドルが暴れてしまうものですが、このスカイフック・サスペンションは衝撃を受けた瞬間、コンピュータがその動きの変化を察知し、一瞬で衝撃を緩和して何事もなかったかのように走らせてくれる究極のシステムというわけです。
日本の高速道路は比較的きれいに整えられていますが、それでもギャップは必ず存在しますし、なかにはガタつくところも。オートバイだとその衝撃如何で転倒という危険性もありますから、この画期的なシステムはそうしたバッドシチュエーションから私たちの身を守ってくれるのです。
そして、ライダーの安全性を第一に考えているムルティストラーダの新機能をもうひとつご紹介しましょう。そして、ドゥカティというメーカーの魅力についても合わせて次ページにて触れたいと思います。
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