約3年かけてブラッシュアップされた最新版「ムルティストラーダ1200」
英訳すると「マルチストリート」となる、あらゆる道を走破するために生まれた地上最強のモーターサイクル ムルティストラーダ1200。イタリアのモーターサイクルメーカー ドゥカティがその技術の粋を結集させた究極のデュアルパーパスモデルがこれです。1926年に創業したドゥカティの歴史を紐解くと、その代表格となるスタイルはやはりレーサー。世界最速を追求する究極のモデルを手がけ続けた歴史こそドゥカティたる所以ですが、近年はさまざまなキャラクターのモデルを排出するようになっています。このムルティストラーダのデビューは2003年のことで(当時はムルティストラーダ1000 DS > 1100)、2010年に大きくブラッシュアップされ、ムルティストラーダ1200へと進化しました。
ムルティストラーダのスタイルは、いわゆるデュアルパーパスと呼ばれるもので、アスファルトなどの舗装路はもちろん、砂利道や林道といった未舗装路をも走破可能なマルチロールタイプのことを指します。他メーカーで言えば、BMW MotorradのGSモデルやKTM アドベンチャーモデルなどが代表的なところでしょうか。
オートバイとしては上背があるタイプで、エンジンが底付きすることのない高さを保っていることから、舗装されていないガタガタのガレ場でさえも難なく走れてしまいます。それでいて、前後17インチホイールというスポーツバイク特有の足まわりを持つところに、ロードスポーツモデルとしてのアプローチを感じることができます。
一見すると車体が大きく、「私には難しいかも」と、とっつきにくさを覚えるかもしれませんが、実際に乗ってみたら驚くほど足着きがいい! しかも、日本仕様のムルティストラーダはさらにシート高が下げられたローシート仕様になるそう。見た目の印象以上に乗りやすいモデルなのです。
そのムルティストラーダが、エンジン設計やディメンションなどあらゆる面から見直され、以前のものとは比べものにならないほどレベルアップをはたして今回再デビューしたのです。そして、イタリア・ボローニャに居を構えるドゥカティ本社主催のメディア向け発表会&試乗会がスペイン・カナリア諸島のランザローテ島にて開催され、試乗ライダーとして私もお招きいただきました。そこで体感した最新ムルティストラーダのレポートをお届けします!
コンセプトは“four bike in one”
2010年に刷新されたムルティストラーダ、その開発コンセプトとなっているのが“four bike in one”、「4つのバイクをひとつに」。4つのバイクというのはいわゆるタイプのことで、より速さを追求するスポーツモデル、快適な旅を約束するツーリングモデル、オフロード走行をも厭わないエンデューロモデル、都会を駆け抜けるアーバンモデルの4カテゴリーを指します。それぞれキャラクターが異なる4つのタイプをモード化したムルティストラーダは、手元のボタン操作で切り替えられ、しっかりと味わいの違う乗り味を楽しめるようになっているのです。
スポーツモードではコーナリング時に必要な操作性とクイックなレスポンスを生み出す仕様となり、ツーリングモードに切り替えると一転、高速走行時に求められる高回転域での伸びやかな巡航性能を味わわせてくれます。しかも、かなりの高速巡航でもしっかりと衝撃を吸収しつつも安定感をもたらすなど、それぞれのシチュエーションで想定される必須能力を絶妙なタイミングで引き出せるのです。
ストップ&ゴーの多さや右左折時の旋回性など、他とは異なるシチュエーションであるアーバンモードでは、スポーツやツーリングとは打って変わり、今度は低速域での野太い乗り味を楽しませてくれます。2~3速でこのように路面を掴むように走ってくれると、自ずと車体バランスも安定してきますから、「え?この大きさで街中を?」と思われがちながら不安はまったくありません。
さらにロードタイヤには不向きなダートロードをエンデューロモードで走ってみると、またこれが味わい深い。足まわりのセッティングが硬すぎない仕様に切り替わり、ガタガタの道がもたらす衝撃をしっかり吸収しつつトルクフルな走りを生み出してくれます。
これ一台で何でもできる――。そんなムルティストラーダの進化とさらなる魅力について、次ページにてご説明していきましょう。
>> 次ページ ムルティストラーダの進化の理由に迫る