なぜ、伝統校は勝てなくなったのか?
伝統校と呼ばれる中では慶應大学が唯一ベスト4入りを果たしましたが、準決勝では帝京大学に10−53と大敗を喫しました。早稲田大学、明治大学はセカンドステージのリーグ戦を勝ち抜くことすらできなかった。ラグビーが急速に進歩する中で、時代が変わったことを強烈に印象づける結果だったと言えます。伝統校の難しいところは、「伝統を継承しなければならない」という組織的な使命に縛られることです。昔の慣習や考え方にとらわれていると、今のラグビーでは勝てないばかりか、どんどん弱体化していってしまいます。近年苦しんでいる伝統校はいずれもそんな状況に陥っており、そうした連鎖をどこかで断ち切らなければ、今後も復活するのは難しいでしょう。
早稲田大学の「ゆさぶり」、明治大学の「前へ」、慶應大学の「炎のタックル」などはおなじみですが、なぜそうした伝統のスタイルが生まれたかをひも解いていくと、根本的には意外にシンプルな理由であることがわかります。たとえば以前の早稲田大学は体が小さく、それを克服する方法としてゆさぶりが生まれた。いまはそもそもの「体が小さい」という前提をもっと改善していかなければ、太刀打ちできない時代になっています。
表面的なこだわりを捨て、いまこそ外に目を向けるべき
一番よくないのは、「伝統のスタイルを実行できなかった」という安易な反省の仕方をしてしまうことです。結果が出なくなった今だからこそ、そんな表面的なこだわりはすべて捨てて、そもそもなぜそうした伝統が生まれたのかをしっかりと考えるべきです。もちろんそれらの伝統校も少しずつ変化はしています。しかし他チームや他国の指導者といった「他者の視点」を大胆に取り入れなければ、いつまでも同じ反省を繰り返す事態に陥りかねません。伝統校は伝統に立ち返るのではなく、いまこそ外に目を向けるべきだと思います。