身体への負担が少ない全館暖房
個別暖房(左)と全館暖房(右)
しかし、現在、日本の住まいの暖房方式でもっともポピュラーなのは個別暖房です。個別暖房とは、リビングや寝室、子ども部屋など各室にそれぞれ一台の暖房器具を導入し、その部屋にいる時だけ暖房するという方法です。この暖房方式は、部屋ごとに温度差が生じてしまうため、身体にかかる負担が大きく、ヒートショックを引き起こす要因となっています。
ペレットストーブで全館暖房
エアコン、ガスファンヒーター、灯油ストーブなど数ある暖房器具の中でも、その心地よさや暖かさのパワーで最近注目を集めるペレットストーブは、燃料が木質バイオマスで地球環境に与える負荷が少ないことや、暖かさの質がよいことなどから日本の寒い地域で導入が進んでいます。ペレットストーブの先進国である欧米ではすでに暖房器具として定着しており、ペレットストーブを製造するメーカーもたくさんあります。ペレットストーブによる全館暖房システムを提供しているのはその中のひとつ、イタリアの老舗メーカー ピアツエッタ(PIAZZETTA)です。
吹き出し口を二つ持つマルチフォーコシステム
ピアツエッタ社のペレットストーブによる全館暖房システムを「マルチフォーコシステム」といいます。ストーブには下吹き出しと裏吹き出しの二つの吹き出し口があり、裏吹き出しから出た温風は、壁の中や床下に配線されたダクトを通して各室へ送り込まれ、各室を均一な暖かさで包みこみます。ペレットストーブによる全館暖房の仕組みは【図1】をご覧ください。【図1】ピアツエッタ社のマルチフォーコシステム概念図(出典:ピアツエッタ社ホームページ)
このマルチフォーコシステムに対応するペレットストーブの機種はいくつかありますが、共通しているのは温風吹き出し口がいずれも足元にあること。温風が全て下から出てくるため室内の温度は均一になり、「頭は熱いけれど足元は冷える」という現象はおこりにくくなります(【図2】)。
【図2】左は温風吹き出し口が上部にあるストーブのケース。右は温風吹き出し口が下部にあるストーブのケース(出典:ピアツエッタ社ホームページ)
強力な送風パワーがあるから実現
マルチフォーコシステムが可能なピアツエッタ社ペレットストーブ「LINE」。
イタリアではこのようなペレットストーブによる全館暖房はポピュラーとなっているそうですが、日本ではまだなじみはありません。現在、長野県で新築住宅にこのシステムを導入しているとのことなので、その使い心地などを見て、もし日本でも快適に使えるという事例が増えてくれば、日本でも暖房システムの一つの選択肢として根付いていく可能性もあります。
次のページでは今回取り上げたイタリアのピアツエッタをはじめとする輸入品のペレットストーブの特徴に着目します。