ハーレーを楽しむには、主役のオーナーがファッションを意識して
価格だけ見ればハーレーダビッドソンはどのモデルも非常に高価です。しかし、「カッコいいハーレーに乗りたい!」、「ハーレーに乗ってカッコよくなりたい!」という強い願望が、購入の大きな決め手になることは言うまでもありません。そうして清水の舞台から飛び降りる覚悟で手にした大事な大事なハーレーダビッドソン、乗るからにはオーナーもカッコよくなくては!
「見て見て、あの人、カッコよくない?」
街行く人にそう見てもらえれば、それは究極のハーレー乗りと言えるでしょう。もちろんカッコいいライダーであるためのハーレーダビッドソンでなくても良いのですが、アメリカが生んだ“アメリカの誇り”ハーレーダビッドソンに乗るということは、我々日本人の概念を超えた世界観の先にあるもの。アイテムの選び方にも、他メーカーのライダーとはまったく異なる視点が求められるのです。
と、そのブランド力が一人歩きしてしまいかねないハーレーダビッドソンですが、「カッコいいね」と見られるべきはオーナーであって、バイクではありません。バイクそのものをカスタムするのも、“バイクをカッコよくするため”ではなく“オーナーを引き立てるためにカッコいいバイクをつくる”ことが目的なのです。あくまで主役はオーナーで、“ハーレーダビッドソンに乗せられている”姿は、誰が見てもカッコよくありません。「俺はこれでいいんだ」というオジサマ的自己満足ファッションはもってのほか。やはりオーナーの姿がセットになってこそ、マシンのあるべき風景が完成するのです。
<目次>
- 自分のハーレーの背景を知ることが、ファッションに深みを出す
- ヘルメットとグローブがファッションを左右する
- 春&秋パターンはアウトドア系orバイシクル系で
- 冬パターン1 風から身を守りつつ、ライディングを邪魔しない服装を
- 冬パターン2 今度はイエロー系を取り入れてみる
- オートバイのファッションと安全性(コラム)
自分のハーレーの背景を知ることが、ファッションに深みを出す
街を歩くときと違い、“ハーレーに乗る”、“オートバイに乗る”うえでのアイテム選びには若干特殊な要素が必要となってきます。引き立て役とはいえ、オートバイに乗る以上、そのオートバイそのもののスタイルを無視することはできません。この世に存在するものすべてに意味があるのと同じく、ハーレーダビッドソンのモデルそれぞれにも生まれた背景や意味が存在するのです。
例えば、先日ご紹介したスポーツスター XL1200V セブンティーツー。こちらは1970年代アメリカのカスタムシーンの人気スタイル『チョッパー』を落とし込んだモデルです。他メーカーのバイクと見比べても、極めて異質なスタイルのこの一台に乗るからには、ファッションの一部にビンテージアメリカンの薫りがするものが入っていると、マッチングが高まります。
また、バイクのタイプやカラーリングもファッションに影響をおよぼす大きなファクター。先のXL1200V セブンティーツーやFXDWG ワイドグライド、FXSB ブレイクアウトなどのハーレーらしさ全開のモデルにフルフェイスかぶって乗ったら違和感ありまくりですし、レーサータイプのXL883Rに半キャップ&グローブなしはミスマッチそのもの。自分のバイクのことを深く知ることで、オーナー自身のファッションにも深みが生まれるという良いスパイラルを作りたいですね。
ヘルメットとグローブがファッションを左右する
安全パッドなどが入ったガッチガチのライディングよりもラフな服装の方が似合うハーレーダビッドソン。ゆえにハーレーに乗るならにはファッションにこだわりたいところですが、避けて通れないのがヘルメットとグローブです。この2点は、ライダーのビジュアルに大きく影響をおよぼします。タイプ、カラー、そしてバイクとセットで見たときのスタイルと、トータルコーディネート能力が問われると言っても過言ではありません。街歩きを意識した好バランスのファッションをキメていても、ヘルメットひとつで全体のバランスを崩してしまうからです。
ヘルメットはざっくり分けると、フルフェイスタイプ(オフロード含む)、ジェットタイプ、システムタイプ、ハーフタイプに分かれます。当然ながらバイクのタイプに合わせて選ぶわけですが、ことフルフェイスでハーレーに乗る方は少数派でしょう。そもそもがスピードを楽しむというより鼓動感や雰囲気を楽しむオートバイであること、そしてレーサー系を除いて本場アメリカのハーレー乗りのほとんどがジェットまたはハーフを着用していることから、どちらかと言えばフルフェイスは不向きなイメージが強いです(万が一のときにはフルフェイスが一番効果を発揮するのですが)。
>>ハーレーに似合うヘルメットについては、こちらでも詳しく解説しています。
一般的に“半キャップ”と呼ばれるハーフヘルメットですが、確かに帽体が小さく顔がしっかりと出て、不良っぽさが演出できるとは思うのですが、ハーレーのような大排気量モデルにその仕様で乗ることについて個人的にはオススメしません。グレーゾーンな部分ではあるのですが、自己責任の範疇を超えている感が否めないからです。選択肢として否定はしませんが、安全性を度外視するのもいかがなものかと思います。
ちなみに私はジェットヘルメットを主に使用しており、そのときの服装に合わせてヘルメットを使い分けています。このふたつのヘルメットもオリジナルデザインのもので、1970年代アメリカで一世を風靡した当時の人気ヘルメットのグラフィックを再現しました。もちろん、自分のバイクの色(グレー)やテイストに合わせ、違和感がないグラフィックで、という点からデザインを決めています。オリジナルペイントも安くはありませんが、ひとつの演出として見ていただければ、と思います。
あと、ヘルメットを着用すると髪型が崩れてしまうのですが、そのダメージを最小限に抑えるのがこの『エアーヘッド』。シリコン製の突起がたくさん付いたパッドで、内側に装着すると頭とヘルメットのあいだにわずかな空間を作り、髪型をつぶさせない働きをしてくれます。やはりヘルメットを脱いで街を歩くときにボサボサの髪型じゃイケてませんからね。
着用義務があるヘルメットに比べ、街中でも未着の人が多いグローブ。しかし、未着のまま万が一転倒などしてしまった場合、手が負う被害の大きさは頭以上のときがあります。また、その後の日常生活にも支障を来してしまいますから、ヘルメットと同様にグローブはしっかりと着用しましょう。
そのグローブですが、大きく分けるとレザーか合成繊維のいずれかになります。操作性で言えば合成繊維の方が上ですが、質感(高級感)や雰囲気はレザーに軍配が上がります。そう、ハーレーならばレザーがファーストチョイスとなるところでしょう。決して合成繊維のグローブが劣っているわけではありませんが(むしろ優れているところが多々あり)、雰囲気を重視するハーレーの場合、レザーが持つ質感には勝てないですし、古き良き時代から変わらぬ組み合わせでもあるからです。
ちなみに私のレザーグローブは、『ハロルズギア』というメーカーが出している、着用したままスマホ操作ができるレザーグローブです。バイクに乗っていると、マップの確認やメール着信への対応の際、いちいちグローブを外さねばなりません。しかしこれだとグローブの脱着というわずらわしさがなく、ささっと操作できてすぐにライディングに戻れるのです。現在生産を見合わしているそうですが、これからはこうした“タッチパネルが触れるレザーグローブ”が続々と登場してくることでしょう。
春&秋パターンはアウトドア系orバイシクル系で
私のバイクの場合、まずカラーがブルーグレーで、ハーレーのなかでもスポーティに走れるスタイルにカスタムしています。グレーとレッド(ヘルメット)の相性はいいので、そのうえで大きく外れないカラーバランスでアイテムチョイス。コテコテのバイカーズギアはデザインが洗練されていないので、私は基本的にあのテのブランドのものは着用しません。若い人に人気があって活気があるという点を鑑み、最近アウトドア系およびバイシクル系を取り入れるようにしています。
■関連記事:「ハーレーに似合うアウトドアファッション」
このスタイルはずばりバイシクル系で、ウェアおよびパンツを人気ブランド『narifuri』とし、レザーグローブとスニーカー(パトリックのビンテージデザインもの)で引き締めるイメージです。これで、赤いキャンディーフレークのヘルメットをアクセントとします。
アウトドア系やバイシクル系のアイテムは、基本的に“体を動かす”うえで必要なギミックを随所に取り入れているので、ライダーズギアとしても十分活用できます。私が愛用している『narifuri』のこのパンツはストレッチする素材で編まれているので、バイクを操作するうえで動かさねばならない足の動きを邪魔することなく、なおかつ膝を曲げた際に裾があがりすぎないというスグレもの。エンジニアブーツにブーツインする着こなしにも対応できるかと思います。
冬パターン1 風から身を守りつつ、ライディングを邪魔しない服装を
冬場のライディング対策は世のライダーにとって死活問題。ただでさえ厳しい寒風にさらされる冬の日々、全身に走行風を浴びるライダーの体感気温たるや尋常ではありません。最近ではヒーテッドジャケット(電熱ウェア)という、いついかなるときでもライダーに心地よい暖かさをもたらしてくれるアイテムが登場し人気急上昇中ですが、一方で電熱ウェアを着用すると着膨れしてしまうため、ビジュアルを重視する私は採用していません。今も昔も、私の防寒対策の基本は“気合い”です。
冬のウェア選びで重要なのは、“いかに風の侵入を防げるか”に尽きます。選ぶジャケット類はファスナーで締められるものがマスト。もちろんインナーとして『ユニクロ』のヒートテックは欠かせません。私の場合はこのように、重ね着してもかさばらず、なおかつトータルでのカラーバランスを崩さないミリタリー系ジャケットを一枚着ています。このほか、同じく『ユニクロ』のインナーダウンを着る方も多いですね。
冬パターン2 今度はイエロー系を取り入れてみる
冬パターン2は、もうひとつの黄色いキャンディーフレークヘルメットを取り入れたバージョン。グレーのパーカー+ダーク系ジャケット+ブルーデニムでバイクのカラーリングと合わせつつ、ヘルメットとシューズ(VANS)のイエローを引き立ててみました。デニムは『LEE』、ジャケットとパーカーはアメリカの『RELWEN』(レルウェン)という“オールアメリカンスタイル”です。ヘルメットのデザインは、映画『イージー・ライダー』に登場するキャプテンアメリカの色違いとしています。
先ほどの“風の侵入を防ぐ”という点でもうひとつ重要なのがグローブ選び。どれだけジャケットを締めていても、前から吹き付ける走行風が袖から入るだけですべて台無し。ジャケット類は袖がリブ付きまたは手首を引き締められるものとし、ジャケットの袖ごと覆ってくれるガントレットタイプの冬グローブという組み合わせがベストでしょう。
オートバイのファッションと安全性(コラム)
クルマと違ってオートバイはライダーの体がむき出しです。ゆえに「オートバイは危険」というイメージが常についてまわります。一方で、ハーレーなどに見られるファッション性の高いオートバイをカッコよく乗りこなす姿に憧れる人も少なくありません。このハーレーダビッドソンというモーターサイクルを生み出したアメリカという国では、老若男女問わず、さまざまなライダーが「自分にとってベスト」という着こなしでバイクライフを楽しんでいます。国に対して必要以上に責任を問わず、自己責任という言葉のもとで、です。ノーヘルOKな州があるなど、そうした風土に合わせた制度が設けられてもいます。
確かにオートバイは危険性が高いですが、それを言い出したら存在そのものが否定されますし、乗ってみて初めて知る感動があるのもまた事実。やはり乗ったことがない人には分からない魅力が秘められているのが、オートバイなのです。
「バイクは危険だから、フルフェイスじゃなきゃいけないし、安全面を考慮したウェアに身を包まなきゃいけない」、そんな声を耳にしたことは数知れませんが、一方でそうしたアイテムのビジュアルやデザインはどうかと言われれば、正直センスを疑ってしまうようなものがずらり並んでいたりします。「それを着て、表参道を歩けますか? 渋谷を歩けますか?」。好みは人それぞれですが、ファッション性が高まっている昨今の日本において、一般の人から後ろ指を指されるスタイルだと、「やっぱりバイク乗りってカッコ悪い」と、オートバイまでもが受け入れられずに終わってしまうのです。
都会を走ってカッコいいオートバイ、都会を歩いていても違和感ないライダー。どうしても一般の方々とオートバイに乗る人とのあいだには“埋めがたい価値観の溝”のようなものが横たわっていますが、違いはほんの小さなキッカケでしかありませんし、オートバイをもっと多くの人に楽しんでもらうためにも、ライダーは“見られて「カッコいい」と思われるようなスタイルにキメる”という意識を持つべきだと思います。
ハーレーダビッドソンは、日本のモーターサイクル文化そのものに対して「君ら、そんなにダサくていいの?」って問いかけてきているのかもしれません。
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