装いを新たにしたフェアリングとともに復活!ロードグライド
ハーレーダビッドソンの各種モデルは、「ファミリー」というカテゴリーごとに分けられています。スポーツスター、ダイナ、ソフテイル、Vロッド、そしてツーリングと名付けられており、今回ご紹介するロードグライドは最上のクルーザーモデルをラインナップするツーリングファミリーのモデルです。そのツーリングファミリーで有名なのは、以前こちらでもご紹介したウルトラと呼ばれる超重量級クルーザーで、大陸横断バイク開発という大命題のもと生み出された至高のモデル。そんなウルトラに比肩するクルーザーがこのロードグライドなのです。パッと見たときに印象的なのが、このバイクの表情でもあるフロントマスク。ヘッドライトがふたつ備わる独特のカウリングは、その形状からシャークノーズフェアリング(サメの鼻先)と呼ばれています。この顔つきをご覧になられた方の多くが「ハーレーらしくない」とおっしゃられるのですが、実は1980年に登場したFLT80 ツアーグライドと呼ばれるモデルがこのフェアリングを備えており、実に四半世紀もの歴史を持つ由緒あるものなのです。
最新となるハーレーダビッドソン2015年モデルとして、FXDL ローライダーとともにリバイバルデビューをはたしたロードグライド スペシャル。この巨躯から「さすがハーレー!」と唸りつつも、一方で「こんな大きなバイク、日本人に操れるの?」と不安視される方も多いことでしょう。結論から言えば、操れるのです。いやむしろ、以前にも増して乗りやすい仕様になったと言っても過言ではありません。なぜならば、このロードグライドをはじめとするツーリングモデルの開発には日本のハーレーオーナーの声がフィードバックされているからです。
世界中の人が楽しめるモーターサイクルへと進化
ここでハーレーダビッドソンのモデルを語る際に私が必ず言うこと、それは、ハーレーダビッドソンはアメリカ人によるアメリカ人のために作られたモーターサイクルであるということです。日本のメーカーなら、日本人の平均的な体型や乗り方、道路事情などを鑑みた製品開発を行ないますよね。その観点で言えば、ハーレーダビッドソンはアメリカ人の体型や乗り方をもとに、アメリカという国の道路事情(左側通行ではなく右側通行だったり)や文化に基づいた製品開発を行なうわけです。しかも、創業1903年という歴史は今年で111年めを迎えました。本田技研で設立から66年(1948年創業)ですから、企業として……というより、アメリカという国に息づいた文化として成り立っているメーカーだと言えます。日本とはまるで異なるアメリカという国の性質から、生み出されるモーターサイクルが根本的に価値観の違うものであるのは当然のこと。緻密でコントローラブルなモデルを輩出する各国産メーカーのモデルと比べると、ハーレーはあらゆる部分が大味かつ大雑把な印象を受けます。そうした側面から、「ハーレーはバイクじゃない」と皮肉を込めて言われるライダーがいらっしゃいますが、他国の文化を受け入れる度量のない人なんだなと思いつつも、そのご指摘どおり、ハーレーダビッドソンが目指しているところは国産メーカーとは異なるところにあるのです。それが大陸横断バイクの開発という大命題。国土の違う日本のメーカーと根本的に考え方が異なるのは、そうしたところから。
そのハーレーダビッドソンが、全世界のユーザーにハーレーダビッドソンとしてのライディングエクスペリエンスを深く感じ取ってもらおうと、昨年より新たな取り組みを始めました。それがPROJECT RUSHMORE(プロジェクトラッシュモア)なる計画です。これまでのようなアメリカ人向けの開発ではなく、どんな体型の人でも操りやすいオートバイの開発を行なうことを基本概念としたもので、特に世界的に見て体格が小さいアジア圏を意識したものでもあります。この計画を進めるにあたり、アメリカ・H-Dカンパニーは全世界のハーレーオーナーへの聞き取り調査を行い、より快適なライディングを楽しむために必要な改善点を片っ端からピックアップしていきました。当然ながら、日本のオーナーへのヒアリングも(極秘に)実施されていたのです。
この2015年版ロードグライドは、そのPROJECT RUSHMORE第2弾とも言える要素が盛り込まれているのですが、「これは間違いなく日本人の声によるものだ」と思う改善点がそこかしこに見受けられました。そのポイントについて、インプレッションを通じて、次ページでご紹介していきましょう。