確実にアップグレードした名車 FXDL ローライダー
ハーレーダビッドソン モーターカンパニーが取り組んだのは、ビジュアルだけではありませんでした。メーカーが違えど、モーターサイクルである以上“乗る楽しさ”……ライディングプレジャーが感じられなければ味わい深さは激減します。そのうえで、ライダーを支えるハンドル位置/着座位置(シート)/ステップ位置の3点のチェックが必要となります。2015年版ローライダーは、モーターサイクルとしても大きくアップグレードされていたのです。まずハンドルまわりですが、平均的な日本人向けとも言える細身のグリップへの変更とプルバック可能な可変式ハンドルライザーが取り入れられました。シートも着座位置が変更可能なバックレスト付きとされ、さらにステップ位置は以前のものよりやや前めに持ってこられています。ハーレーダビッドソン モーターカンパニーのアジア戦略に則った改善であることは想像に難くないのですが、以前のローライダーと比較しても、その快適な乗り心地はまるで別物。加えて、制動性をアップさせるフロントブレーキのダブルディスク化も大きなポイントと言えます。
実際に乗ってみると、2in1エキゾーストの恩恵か、吹け上がりは好調時のツインカム96エンジンのそれ。ライドフィールが心地良いうえに、握り込みやすいハンドルグリップとステップ位置、そして違和感ない着座位置のおかげで、タイトなコーナーでもバランスよく駆け抜けていってくれます。こんなコントローラブルなローライダー、正直出会ったことがありません。これはハイウェイはもちろん、ストリートやワインディングでも楽しく走れる一台だと言えます。個人的には、ダイナモデルのなかで一番乗って楽しいのは先日紹介したFXDF ファットボブだと思っていたのですが、2015年版ローライダーは私の評価のトップに躍り出てきたほどでした。
ハーレーダビッドソンの企業努力が生んだ新しい王者
話題性を振りまいたそのビジュアルのみならず、モーターサイクルとしても正常進化を遂げていた2015年版ローライダー。過去のローライダーはカスタムベースとしても見られており、同モデルも同様にカスタムしていけば、かなり面白いスタイルにまとめられるんじゃないかと思います。が、もし私がこのモデルを買うとしたら、インジェクションチューンと足まわりのセッティングだけグレードアップさせて、この姿のまま乗るかもしれません。そしてローライダーを語るうえで、この人を忘れてはなりません。同モデルのみならず、ダイナファミリーの礎を築いたモーターサイクル業界の重鎮にしてダビッドソン一族の末裔、ウィリアム G ダビッドソン、通称ウィリーGです。このローライダーの生みの親が彼なのです。現在、アメリカ・ハーレーダビッドソン モーターカンパニー運営の第一線からは退いておられますが、このローライダーを世に送り出した数年後、大手企業参加にあったカンパニーを、彼をはじめとする幹部13名が買い戻した(バイバック)はあまりに有名な逸話。つまり、ウィリーGなくして今のハーレーダビッドソンは存在し得ないのです。そんな偉人が生み出したローライダーの新型版、きっと目を細くして喜んでおられるのではないでしょうか。
もしかしたらこのローライダーは、米カンパニーがその威信をかけて開発に取り組んだ渾身のモデルなのかもしれません。それほどの企業努力を感じさせてくれた一台と言えるのです。見た目も中身もともなった2015年版ローライダーには、これまでのビッグツインのあり方を覆すほどの楽しさが秘められているのです。
[HARLEY-DAVIDSON FXDL SPECIFICATIONS]
全長/2345mm
全幅/905mm
全高/1185mm
ホイールベース/1630mm
加重時シート高/680mm
車両重量/311kg
エンジン型式/Air-cooled, Twin Cam 96
排気量/1584cc
フュエルタンク容量/17.8L
フロントタイヤ/100/90B19 M/C 57H
リアタイヤ/160/70B17 M/C 73V
【メーカー希望小売価格】(消費税込/2014年10月現在)
[ビビッドブラック] 209万円
[モノトーン] 212万5000円
[ツートーン] 216万円