メッシに最後のチャンスが巡ってきたが……

結末はドラマティックだったが、ドイツは間違いなく優勝にふさわしいチームだった。

結末はドラマティックだったが、ドイツは間違いなく優勝にふさわしいチームだった。

両チーム無得点のままPK戦突入の雰囲気が漂い始めた延長後半113分、リオ・デ・ジャネイロのマラカナン・スタジアムが爆音のような歓声に包まれた。ドイツのゲッツェ(22歳)が左足ボレーを突き刺し、ついに均衡を破ったのだ。

リードを奪われたアルゼンチンは、デミチェリス(33歳)とガライ(27歳)の両センターバックを最前線へ上げ、彼らの高さを生かした空中戦に活路を求める。だが、ここまで6試合をわずか4失点で乗り切ってきたドイツの堅陣を崩すには、残り時間はあまりに短かった。

3人の交代枠をすでに使い切っているアルゼンチンに対し、レーブ監督(54歳)は交代カードをあとひとつ残している。アルゼンチンのパワープレーを封じるために、指揮官は198センチの長身ディフェンダーのメルテザッカー(29歳)を投入する。

決勝戦最後のドラマは、延長後半の追加タイムに訪れた。メッシ(26歳)がファウルを受け、アルゼンチンに直接FKが与えられる。

キッカーはもちろんメッシだ。

ゴール前に押し寄せる味方選手に合わせるのか、それとも自らゴールを狙うのか。アルゼンチンを率いるキャプテンは、これまでチームを何度も救ってきた自らの左足にすべてを託した。

短い助走から、メッシが左足を振り抜く。ゴールを狙う。しかし、シュートは大きくバーを越えていった。エースは天を仰ぎ、アルゼンチンの抵抗は終わった。

ほどなくして、今大会最後のホイッスルがスタジアムに轟く。鮮やかにして残酷なコントラストがピッチに描かれ、勝者と敗者が決定した。

歓喜を爆発させたのは、ドイツだった。


幅広い戦いができるドイツ

結末はドラマティックだったが、ドイツは間違いなく優勝にふさわしいチームだった。勝因はいくつもある。

4年前の南アフリカ大会で3位に食い込んだメンバーがほぼ半数を占め、そのうえでフレッシュなタレントが台頭してきた。チームとして経験を引き継ぎながら、マンネリ化を寄せ付けないハイレベルな競争が繰り広げられてきたのだ。

母国ドイツを4度目の世界一へ導いたレーブ監督は、2006年7月からチームを率いている。08年の欧州選手権で準優勝、10年の南アW杯で3位、12年の欧州選手権はベスト4(3位決定戦は行われず)と、結果を残してきたうえでの長期政権である。

レーブ監督と選手たちは、国際大会で味わってきた悔しさと、頂点へ立つための価値ある教訓を積み重ねてきたのである。そうやって迎えたのが、ブラジルW杯だった。

彼らの優勝が論理的なものであることは、このチームが残した数字が証明する。

準優勝のアルゼンチン、3位のオランダ、4位のブラジルは、無得点に終わったゲームがいずれも2つある。それに対してドイツは、全7試合でゴールを記録している。18得点は参加32か国でトップだ。

失点はどうだろうか。7試合でわずかに「4」である。クリーンシートと呼ばれる無失点ゲームも4つある。

ブラジルとの準決勝で大量7ゴールを奪取したように、攻撃力で対戦相手をひねりつぶすことができる。同時に、ロースコアの競り合いをしっかりとモノにすることもできる。南米開催のW杯で史上初となる欧州勢の優勝は、ドイツだからこそ成し遂げることができたはずだ。


違いを生み出したバックアップ層の充実

彼らの勝因を、もうひとつあげておきたい。選手層の厚さだ。

アルゼンチンはメッシに、ブラジルはネイマール(22歳)への依存度が強かった。
グループステージであえなく姿を消したポルトガルも、クリスティアーノ・ロナウド(29歳)が頼りのチームだった。

傑出した個人はチームを救うが、W杯は短期決戦だ。勝ち進むほどに選手は消耗する。スーパースターも例外ではない。

ドイツはスキがない。

アルゼンチンとの決勝でゴールを決めたゲッツェは、途中出場の選手である。彼のゴールをアシストしたシュールレ(23歳)も、試合前の国家をベンチで聞いている。シュールレは準決勝までにチーム2位の3得点をあげているが、それでも先発ではなかった。

スタメンとベンチメンバーの実力に開きがなく、チーム全体で勝利をつかめる陣容を組めるかどうかは、国際舞台で成果をあげるための大切な要素である。

幅広い戦いができるドイツの選手層は、優勝を争ったライバルにはないものだった。彼らの優勝は、ブラジルW杯の結末にふさわしいものだったのだ。


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