ビールもワインも美味しい!オーストリアのお酒事情
ワインといえばフランス、ビールといえばチェコやドイツのイメージですが、オーストリアは美味しいワインもビールも一挙に味わえる実に希少な国。というのも、かつてローマ帝国領であったドナウ川以南ではワイン文化が育まれ、ドナウ川以北のゲルマン領域ではビール文化が栄えたという背景があります。
オーストリアにおけるビールは大変重要なもので、オーストリアビール醸造協会の調査によると、オーストリア人の65%が定期的にビールを飲むと答え、92%がビールはオーストリア文化に欠かせないものだと回答しています。またオーストリア国内の年間ビール消費量は約970万リットル(2017年)。これは国民一人あたり年間約106リットル、ジョッキにして212杯となり、消費量はチェコ共和国、ドイツに次いで世界第3位(2016年)となっています。そんなビール好きのお国柄を反映して、オーストリア全国には大小あまたのビール醸造所が存在しており、その密度は何とヨーロッパで一番なのだそう。
<目次>
- オーストリアのビールの味
- 市場シェアナンバーワン! ゲッサー(Gösser)社のメルツェンビール
- ウィーン代表のビール、オッタクリンガー(Ottackringer)
- 黒ビール好きにはヴィーゼルブルガー(Wieselburger)
- モーツァルトも飲んだ、ザルツブルクのシュティーグル(Stiegl)
- アルコールフリーが飲みたい時はシュロスゴールド(Schlossgold)!
オーストリアのビールの味
蛇口をひねれば新鮮なアルプスの水が流れるオーストリアでは、地の利と美味しい水を最大限に生かして、苦味と芳醇さを兼ね備えた贅沢な仕上がりビールが豊富に生産されています。オーストリアのビールは全般的に苦味が効いているものの、フルーティであるため、お酒もお食事もついつい進んでしまう味。クラス感のあるシーンでは伝統的にワインが嗜まれますが、ウィーン風カツレツや各種ソーセージといった郷土料理には、やはりオーストリアンビールが最適です。
この国では全土にわたりビールが醸造されているため、州や地域によって飲まれるビール銘柄がまったく異なるのが特徴ですが、そんなビール激戦区のオーストリアから、お勧めの5銘柄を紹介したいと思います。
ビール激戦区のオーストリアで、市場シェアナンバーワン!
ゲッサー(Gösser)社のメルツェンビール
まずはビール激戦区のオーストリアにおいて、最もよく飲まれているゲッサー社のメルツェンビール(※)。こちらのビールは100%オーストリア産の原料が用いられた商品で、上質なモルツとホップの香りが、苦味の効いたビールの味をフルーティーに整えています。また、オーストリアは第二次世界大戦後に連合軍(米英仏ソ4ヶ国)に分割占領されていましたが、1955年に晴れて主権を回復。そしてその独立条約署名の場にて供されたのが、このゲッサービールでした。美味しいだけではなく、歴史的にも大きな役割を果たしてきたゲッサービール。オーストリアに旅行の際には、様々なことに思いを馳せながら飲んでみると、より感慨深いビール体験になることは間違いありません。
※メルツェンビール:元来メルツ(ドイツ語で三月)に醸造されたものを意味していたが、現在オーストリアでは強めのラガービールや、スタンダードなビールを指す。
ウィーン代表のビール、オッタクリンガー(Ottackringer)
次は1837年に生産開始されたオッタクリンガービール。ウィーン16区に大きな醸造所を持つ、ウィーンを代表するビール銘柄です。こちらの主力商品もやはりクラシックなメルツェンビールで、高品質なホップと麦芽、湧き水から作られており、モルトのアロマとほろ苦さがバランスよく演出されています。また、オッタクリンガーは華々しい受賞歴でも有名で、ブリュッセル・ビア・チャレンジ2018年で銅賞、ワールド・ビア・アワード2017年で金賞、ヨーロピアン・ビア・スター・アワード2016年で金賞など、数々のアワードで存在感を世に示しています。オーストリア航空に搭載されているのもこちらの銘柄ですので、搭乗の機会があればぜひ飲んでみてください。
黒ビール好きにはヴィーゼルブルガー(Wieselburger)
アルプス前地の牧歌的な森林地帯、ニーダーエステライヒ州のヴィーゼルブルクにあった小さな醸造所が、1770年に正式に生産を始めたのがヴィーゼルブルガービール。200年以上もの年月を経て、現在ではオーストリアでも最大規模を誇る醸造所にまで発展しました。ヴィーゼルブルガーはトラディショナルな琥珀色のビールもさることながら、シュヴァルツビールにも力を入れているため、黒ビール愛飲者の間では絶大な支持を誇っています。エレガントでさらりとした味わいと、たおやかなホップの薫香、そしてほのかなコーヒーおよびビターチョコレートのノートがビール通の間で人気です。
モーツァルトも飲んだ、ザルツブルクのシュティーグル(Stiegl)
ザルツブルクは日本からも多くの人が訪れる大人気の観光スポット。そしてこの街を代表するシュティーグルビールはなんと1492年、つまりコロンブスがアメリカ大陸を発見した年から既に醸造され始められており、あの天才音楽家モーツァルトも飲んでいました。シュティーグルは選りすぐったオーストリア産の原料と、ザルツブルク近郊にあるウンタースベルク山からの湧き水を用いながら、自社で麦芽処理まで行っているため、栄養豊かで繊細な味が表現されています。少し麒麟に似た味わいのメインレーベルのゴールドブロイを筆頭に、ペールエール、ピルスナー、オーガニック、無ろ過、アルコールフリー、グルテンフリー、レモネードで割ったものなど、何十種類ものラインが展開されています。
ちなみにシュティーグルとはドイツ語で「小さな階段」の意で、当時ここのビール醸造所のそばに小さな階段があったことから、この名が付けられました。ラベルにももれなく階段のマークが付いているので、それで見分けると便利です。
アルコールフリーが飲みたい時はシュロスゴールド(Schlossgold)!
商談や運転の前など、アルコールを控えたいシチュエーションだけど、せっかくのオーストリア滞在だからビールはしっかり味わいたい……。そんなときに覚えておきたいのが、ノンアルコールで知られるシュロスゴールドという銘柄。素材から最大限の美味しさを引き出すために、独自の醸造方法を確立しているのも特徴で、生産国のオーストリアだけに留まらず、世界15か国で愛飲されていることからも、その美味しさと信頼性の高さが窺えるでしょう。ちなみにアルコールフリーはドイツ語でアルコホールフライ(Alkoholfrei)と言いますが、スーパーマーケットでずらりと並んだビールコーナーから手早く探したい場合など、いちいちドイツ語のラベルを読んでいられないときに、このブランドを知っておくと大変便利。ドイツ語でシュロスはお城、ゴールドが金を意味する通り、金色のお城がラベルに描かれているのが目印です。
今回紹介した5銘柄以外にも、オーストリアでは地ビールを振舞う「醸造所、兼居酒屋」のブロイ(Bräu)が各地にあるので、珍しいものを飲み比べてみるのも一興。この国ではビール一杯のお値段がミネラルウォーターと同等、もしくは水より安価なこともあるので、ぜひたくさん味わって、良い旅の思い出にしてください!
関連記事
オーストリアの季節・気候・旅の服装ユニークなオーストリア土産!モーツァルトクーゲル
オーストリアのお土産!おすすめお菓子&雑貨13選