ハーレーがレースシーンで脚光を浴びた時代の
DNAを受け継ぐモデル・スポーツスターXL883R
「ハーレーダビッドソンってどんなバイクだと思います?」と聞かれると、ほとんどの方が「大っきいバイク」「デカい」「エンジンがドコドコと鼓動する」と答えられるかと思います。それぐらい、ビッグバイクとしてのイメージが強いハーレーですが、現在人気ナンバーワンと言われるXL1200X フォーティーエイトやニューモデル XL1200T スーパーローのような、いわゆるスポーツスターと呼ばれる軽くて取り回しやすいスポーティなモデルも存在します。このXL883Rはその代表格とも言えるモデルで、ペットネームの最後にある“R”はレーサーの頭文字。111年と言われるハーレーダビッドソンの歴史において、レースシーンで活躍した時代のDNAを受け継ぐ希少モデルと言っていいでしょう。
Sportster(スポーツスター)というのは、訳すると“スポーツ野郎”“スポーツする人”といった意味合いで、戦後、イギリスから渡米してきたトライアンフやBSAなどのスポーツバイク人気に対抗するため生まれたカテゴリーなのです。始祖となるKモデルが登場したのが1952年なので、60年以上の歴史を持つファミリーだと言えます。
ちなみに、あのエルビス・プレスリーもスポーツスターの祖先にあたるKHKというモデルに乗っており、それが当時話題を呼んだと言われています。
2014年現在のH-Dフルラインナップを見ると、スポーツスターは全部で9モデル。日本においては、全ラインナップ中で比較的安価なことや取り回しやすいこと、またカッコよさもあり、どのファミリーよりも充実している印象です。実際、日本におけるスポーツスター人気は全世界で見てもナンバーワンだと言われているほど。
スポーツスターが持つ本来の魅力とは?
そんなスポーツスターファミリーですが、近年はまたがった際の足着き性を気にするオーナーが増えてきていることから、9モデル中8モデルがローダウン仕様(車高を低くして足着きを良くした仕様)とされています。そう、唯一ローダウンしていないスポーツバイクが今回紹介するXL883Rなのです。女性など小柄なライダーにとっては低い方が安心感があるとは思いますが、ビジュアルを重視したローダウンスタイルではなく、操る楽しみ、走る楽しみといったライディングプレジャーこそがスポーツスター本来の魅力。原点となるのは2009年まで存在したXL883ですが、残念ながらそのベーシックモデルはカタログ落ちしているため、現在その系譜を受け継ぐ唯一のモデルがこのXL883Rなのです。
「スポーツスターのなかから選ぼうと思うんですけど、どれがいいと思いますか?」と聞かれたことが何度かありますが、「自分が気に入ったものを選べばいいと思います。ただ、試乗の機会があればぜひ一度XL883Rに乗ってみてください」と答えています。限りなくベーシックなスタイルのモデルに乗るというのは、迷ったときに戻れる原点を自分のなかに持つということ。長い付き合いとなる愛車を手にするうえでは、非常に重要なことだと思うのです。
そこまですすめるXL883Rの魅力はどれほどのものなのか——。それをお伝えすべく、試乗インプレッションへと進んでいきましょう。