初戦が重要な理由

過去の大会を振り返ると、グループステージ突破には勝点5以上が必要なことがわかる。

過去の大会を振り返ると、グループステージ突破には勝点5以上が必要なことがわかる。

コートジボワール戦とのグループステージ初戦は、日本の先制弾で幕を開けた。0対0で迎えた16分、長友佑都(27歳)のパスを受けた本田圭佑が、得意の左足で強烈な一撃を突き刺す。試合前日に28歳となったエースの先制弾は、日本人選手初のW杯2大会連続ゴールとなった。

3試合で順位を決めるW杯では、初戦が重要な意味を持つ。W杯が32か国開催となった98年大会以降で、黒星スタートからグループステージを通過したのは4か国だけなのである。

過去の大会を振り返ると、グループステージ突破には勝点5以上が必要だ。前回大会の日本も、2勝1敗の勝点6でベスト16へ進出している。第1戦を落としてしまうと、勝点5以上を稼ぐには残り2試合の連勝が条件になる。初戦が重要と言われる理由だ。


リードしているのに余裕がなかった初戦

コートジボワール戦の日本は、いつも以上に慎重な試合運びをした。いきなりつまずくわけにはいかない、負けてはいけないという気持ちが先行したからで、リードした後もディフェンスを重視した戦いが続いた。序盤からアグレッシブな相手が失点後も攻勢を仕掛けてきたため、守備重視にならざるを得なかったところもあっただろう。相手のボールを追いかけて走らされる時間が続き、チームは消耗の度合いを深めていく。

日本の先発には、前回大会の経験者が6人いた。メンバーから漏れた香川真司(25歳)も、サポートメンバーとして南アフリカで大会を体感している。初戦の重要性を理解する選手が多いゆえに、慎重さが増していったところもあった。

加えて、昨年のコンフェデレーションズカップの経験がある。プレW杯の意味合いを持つこの大会で、日本は開催国のブラジルと第1戦で激突した。開始3分にネイマールに先制ゴールを喫し、キックオフ直後に試合のイニシアチブを強奪された。結果は0対3の完敗である。ちょうど1年前のこの経験も“先制点を与えてはいけない”という意識を鋭敏にしたのだった。

初戦ならではの複雑な心理が折り重なり、チームは“いつもの日本”から遠ざかっていく。「1点リードしているのに余裕がなかった」という香川真司(25歳)の肌触りは、おそらくチーム全体に共通するものだったはずだ。

噛み合わせの良くない歯車が、決定的にズレたの62分だ。フォワードのデディエ・ドログバを、コートジボワールが投入してきたのである。

先発出場も有力視されたベテランの登場は、日本の守備陣にストレスをもたらした。身体能力の高いドログバにボールを収められることで、攻撃の起点を作られてしまうのである。

相手の攻撃を跳ね返しても、またすぐにボールを奪われてしまう。先回りした対応が難しくなり、マークに付ききれない。64分と66分の失点は、試合の流れがそのままスコアに反映されたものだった。

守備に体力を割かれたチームに、ビハインドを跳ね返す力は残っていなかった。アルベルト・ザッケローニ監督の選手交代も、ゲームの色彩を変えるに至らない。これといった反撃もできないままに、日本は試合終了のホイッスルを聞いたのだった。


ギリシャ戦は「絶対に負けられない戦い」に

今大会の日本は、自分たちで主導権を握るサッカーを目指している。ボール支配率で対戦相手を上回り、相手を走らせ、動かし、チャンスを作り出していくサッカーだ。

コートジボワール戦は、まったく逆の試合展開だった。ボール支配率で上回ることができず、チャンスの数でも相手の後塵を拝した。

力を出し切ったうえで負けるなら、どうにかして結果を受け入れることもできるだろう。だが、コートジボワール戦の日本は、自分たちのサッカーを出し切れずに敗れた。試合後の選手が消化不良な表情を浮かべたのも「やりきった」という思いを抱けなかったからだ。

「悔しいという感情しか沸かなかった」。香川はこう語る。試合から一夜明けても、表情は厳しいままだった。

「自分たちのサッカーができなかった、というのが率直にあって。個人的にも何もできなかったと感じていて」。センターバックの森重真人(27歳)は、「自分たち次第」という言葉を使った。彼もまた、敗因を自分たち自身に求めている。
「いままでやってきたことができなかったという思いは強い。それは相手がすごかったからではなく、自分たち次第だったというところがあるので。まったく歯が立たなかったというわけではない。自分たち次第で変わっていける」。

日本時間20日早朝にキックオフされるギリシャ戦は、勝点1では物足りない。グループステージ突破には勝利が欲しい。

ひるがえってギリシャも、日本戦に生き残りをかける。初戦でコロンビアに0対3で完敗した彼らも、日本戦は負けたらジ・エンドのサバイバルマッチだ。カウンターアタックを得意とするギリシャは、日本を自陣に誘い込んでくるはずだ。コートジボワールと同じように、香川と長友佑都(27歳)の左サイドを狙ってくることも想定される。

攻めることが逆襲を受けるリスクをはらむなかで、それでも攻撃的な姿勢を貫けるか。日本らしさを発揮することで、勝点3をつかめるか。

「このまま終わるわけにはいかないし、絶対にできると信じて修正していきたい。主導権を握って戦うことが、自分たちの望む結果につながっていくと思います」。

香川の決意は、チーム全員に共通する思いと言っていい。初戦を落としたといっても、日本はまだ何も失っていないのだ。当たり前のことだが、勝負はここからである。


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