財布選びの基本は、使用アイテムの優先順位を知る事
従来の財布の形にとらわれず、新しく機能的な財布を作ろうとする時、問題になるのが、機能の優先順位でしょう。そもそも、縦長い紙幣と、定型ながら厚みがあるカード類と、なるべく素早く出し入れしたいコインという、3つの異なるアイテムを整理し、管理し、数えやすく、出し入れしやすくしなければなりません。それを、一つのポケットに収まる形で構成するのですから、どこかを優先し、どこかには目をつぶる必要が出てきます。例えば、従来の二つ折り財布の場合、コインかカードのどちらかを優先するスタイルが主流です。コインケースを付けない、またはカードの収納枚数を減らす、という選択の中で作られているものがほとんどです。そういう状況の中、紙幣の出し入れのしやすさと収納枚数に目をつぶり、その代わり、従来にない使いやすさと、コンパクトさを実現したのが、エムピウやrethinkの財布です。また、長財布をポケットに入るサイズにまで切り詰めて、二つ折りにはない扱いやすさを目指したのが、safujiとガイド納富のコラボ財布です。他にも、コインの出し入れに特化しつつ財布としても使えるように作られたcyproductのコインパースや、薄さに特化したスーパークラシックの財布などなど、財布の何が重要かによって選べる環境になってきたのは、とても嬉しい事です。
コインケースと二つ折り財布の中間的な機能とデザイン
今回紹介するLEDの「one piece wallet」は、機能の優先順位としてはコインケースを重視した財布、と言えるのですが、使ってみると意外な発見がありました。外見は、コインケースと二つ折り財布の中間のようなデザインで、このサイズも形も新鮮です。マットな質感のイタリアンオイルレザーは適度にしっとりとしつつ、ラフに扱える感じで、革製品だという主張をし過ぎないけれど、革の魅力は使う人には十分伝わります。写真は黒ですが、他に、イエロー、レッド、グリーン、パープルがあり、シンプルなデザインだけに、老若男女問わずに使えます。外見だけではなく、中身もシンプルです。一枚革を蛇腹のように折り曲げて、その側面をフラップ部分と縫い合わせた4ヶ所と、内部のカード押さえ部分1ヶ所の、たった5ヶ所しか縫い合わさずに作られているのです。つまりは、蛇腹状に内部を緩く3つに分割しただけの、単なる革袋に近い構造。一番手前の壁面に紙押さえのような革の板が縫い付けられているので、ここにSUICAなどのICカードを入れるのかな、という程度で、後は、何をどこに入れても構わないような構造です。
どこに何を入れるかは自分次第のフレキシビリティ
使い方を知ろうと、LEDの製品を販売するIWATA DENKIのサイトに行ってみたのですが、そこでは、紙押さえの裏側にカードも紙幣も入れて、残りのスペースは全部コインケースとして使われていました。多分、それが正解なのですが、ガイド納富は何となくそれではスペースがもったいないというか、カードや紙幣の収納量が少なくなり過ぎると思ったので、色々と試行錯誤してみました。そうして、個人的に最も使いやすいと思った入れ方が上の写真です。紙押さえの後ろにはSUICAを入れ、その手前には予備用に4つ折りにした1万円札を入れています。さらにその手前に2つ折りにした千円札を数枚。そして、その次の蛇腹部分をカード入れにします。大体4~5枚程度のカードが入れられるので、ガイド納富はクレジットカード、マネーカード、PONTAカード、図書館カードを入れています。一番手前の蛇腹部分がコインケースです。紙幣とコインをカードで仕切る形になっています。
このスタイルの良い所は、1回の動作で財布の全体が見渡せて、コインでもカードでも紙幣でも、すぐに取り出せる事です。動作はフラップを開くだけ。このワンアクションで全ての内容が見渡せてアクセス出来る財布というのは、意外に珍しいのではないでしょうか。そして、単に蛇腹の角でカードを留めているだけなのに、思った以上に中はしっかりと仕切られています。もちろん、紙幣もカードも4~5枚程度しか収納出来ませんから、大金を持ち歩くのには向きません。しかし、だからこそ、全体の見通しの良い財布になるわけです。
使っていて気がついたのは、とにかくアクションが少ない事。「財布を開く」「お金を払う」「お釣りを貰う」「財布を閉じる」とか、「財布を開く」「カードを出す」「カードを戻す」「財布を閉じる」といった動作が、何だかとても簡単なのです。何故だろうと考えて気がついたのは、財布のどこに何を出す、入れる、ということを、ほとんど考えずに使えている、ということです。コインもカードも紙幣も、全部が1ヶ所にあって、そこから出して戻すだけの操作。これが、とても楽なのです。というか、今までの財布に無い操作感でした。三方ファスナーの財布などに近いものがありますし、COTONAの「コンパクトウォレット デベソ」も近い使用感なのですが、それらのように仕切りがしっかりとあるわけでない、基本、部屋は1つしかない中で、革の曲げ方だけで仕切りを作っているスタイルならではの、良い意味での適当に使える感じが、「考えずに使えるから速い」を実現しています。
ガイド納富の「こだわりチェック」
この「one piece wallet」では、多分、紙幣の優先順位が低いのですが、元々、大金を持ち歩くようには作られていないし、大金の支払いはカードで行い、持ち歩く数千円以上は基本使わない、というのが前提になった設計なのでしょう。その分、カードも紙幣もコインも、同じ所に突っ込んで、でも、それぞれはきちんと整理されるというインターフェイスを獲得しています。いや、これ、本当に楽なんですよ。お釣りで、コインと紙幣を同時に渡されても、あまり困りません。まあ、紙幣を2つ、または4つ折りにする手間はかかるのですが、それも、適当に折って突っ込んでおいて、後で直す、といった感じにしても、使い勝手を損ないません。蛇腹状に上部が大きく開くので、カードも選んで取り出せるし、コインも数えやすく、別にカードやコインが多少混ざっても、開けて見れば、どこに何があるかはすぐに確認出来るという、この形状の魅力は、実際に使ってみないと分かりませんでした。開く動作、閉じる動作が、どういう場合でも1つだけというのも、素早く使えるポイントだと思います。フラップはギボシで留めるのですが、この金具回りの処理が上手くて、ギボシに差し込む時、開く時それぞれの感触が、ちょっと良い感じなのも、使っていて嬉しいポイントです。
ありそうで無かった、かなりクセの強い財布ですが、ざっくりと、ラフに使っても、お金やカードが散乱しない、面倒くさがりには最高の財布ではないかと思います。ちょっとした外出や日常生活の中で使うのに、サイズ的にも丁度良く、縫製部分が少ない分耐久性も高いので、安心して使えます。
<関連リンク>
・LED「one piece wallet」の購入はIWATA DENKIで