サルコイドーシスとは
何らかの原因で組織に炎症が起こり、そこへ免疫細胞と集まって、塊を作ることを肉芽腫と言います。その免疫細胞が壊れて死んでしまい、細胞がカッテージチーズのように溶けている状態を「乾酪性(かんらくせい)」と言います。結核は乾酪性肉芽腫が生じる病気ですが、サルコイドーシスの場合は、非乾酪性肉芽腫が生じます。原因については詳しく分かっていない全身の病気です。肉芽腫が全身の臓器(肺、眼、皮膚、心臓、神経、筋肉、唾液腺など)で発生し、その場所によって様々な症状が起こります。サルコイドーシスの原因
肉芽腫は、何らかの原因があって、その原因に対する免疫反応として起こります。現時点では、原因は不明です。空気があると増殖できない嫌気性菌であるpropionibacterium acnes と propionibacterium granulosum 、L-型結核菌、ウイルス などが原因の1つとして考えられています。また、自分を攻撃する自己免疫疾患の1つとしても考えられており、現時点では遺伝することはありません。しかし一部、若年性サルコイドーシスはNOD2遺伝子に異常があるために発症すると報告されています。この病気は、北の地域に多く南に少ないと言われています。日本でも北海道と九州では病気になった人の割合が異なり、北海道は九州の約2倍あります。
現在の有病率は、人口10万に対して約7.5~9.3人と推定されています。
男女では、ほぼ同じかやや女性に多い傾向にあります。発病年齢は、男性では20歳代にピーク、女性では20歳代と50~60歳代に二峰性のピークがあります。その中でも特に、高齢者のピークが大きいです。
サルコイドーシスの症状
約40%の人が無症状です。そのため、健康診断で発見されることが多いです。特に胸部X線と心電図の検査は重要です。症状は肉芽腫がどこにできるかによって異なってきます。主に、眼、皮膚、肺で多く症状が見られますが、心臓の場合もあるため要注意です。
■眼の症状
主に、瞳の黒目の部分に起こるブドウ膜炎、網膜への炎症です。
- 霧がかかったようにぼんやりとしか見えない霧視(むし)
- まぶしいという羞明(しゅうめい)
- 視野に蚊のような小さいものがちらちらと移動して見える飛蚊症(ひぶんしょう)
■皮膚の症状
様々な湿疹が出てきます。
- 赤く盛り上がっていてやや硬い湿疹で魚のうろこのような湿疹である「結節型」
- 円形で周りは盛り上がっていて、内面は柔らかい湿疹である「局面型」
- 赤く黒く全体的に盛り上がって、しもやけのような「びまん浸潤型」
- 正常な皮膚で硬いしこりを触れる「皮下型」
■肺の症状
肺門部リンパ節が両方腫れます
■心臓の症状
心臓の組織内に肉芽腫が発生すると、不整脈を起こすことが多くなります。心臓の働きが低下したりします。心房からの心室への電気信号が伝わらない房室ブロックという状態になると、突然死の原因になります。
■神経、筋肉の症状
比較的、症状が少なく、神経や筋肉に肉芽腫があっても無症状のことがあります。
脳か末梢神経かによって異なりますが、脳ですと痙攣、意識障害などの髄膜炎の症状、脳血管の症状として精神障害、自分の意志と関係なく手足が動く錐体路症状、痴呆などあります。末梢神経ですと、主に麻痺や感覚障害が起こります。筋肉では神経と関連し、麻痺が起こってきます。
次のページで検査と治療について説明します。