好みの音を選ぶという不可能に近い難しさ

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ゼンハイザー「Momentum」実売価格3万円前後。写真は日本未発売のデヴィッド・ボウイ展用のスペシャルエディションなので、多少カラーリングが違うが、ほぼブラックモデルと同様。

ヘッドフォン選びというのは、本当に難しいものです。何が難しいといって、例えば3万円以上とかのヘッドフォンは、まず音が悪いという事はないからです。だから、ちょっと良いヘッドフォンを買おうと思って店に行って聴き比べても、実際の所、良し悪しでは選ぶ事が出来ません。良いか悪いかで言えば、どれも「良い音」が鳴ります。だから、結局は好みで選ぶしかないのですが、これもまた難しい問題です。そもそも、音楽のような、その曲やサウンドそのものが好みに左右されるものの再生装置ですから、好みの方向だって、一つにまとめられるわけがありません。
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キャリングケースが付属。他に、通常ケーブル、iPhone用ケーブル、プラグアダプターも付属する。

硬い音が好きだと言っても、柔らかい音が嫌いなわけでも、聴きたくないわけでもないし、録音側が硬い音になるように録った音は、柔らかい音が得意なヘッドフォンで聴いても、比較的硬い音がします。だから、「原音に忠実」と言われるモニター用のヘッドフォンに人気が集まるのでしょう。ただ、この「原音」というのも、既に録音されたメディアを経由して聴くわけなので、「原音」が一体どれで、どのくらい忠実なのかは、あまり良く分かりません。あからさまに低音を強調しているヘッドフォンだと、流石に分かりますが、元の録音が低音をブーストしていない保証はありません。

なので、多くの音楽ファンは、自分用の「チェックするための音源」というものを持っていて、それを使ってヘッドフォンやスピーカーを選ぶ事になります。この音がこんな風に聞こえればオッケー、というような。ガイド納富が中学生のころ、そういう形で使われていて日本中で大ヒットしたのが、ピンクフロイドの「狂気」、ダークサイド・オブ・ザ・ムーンですね。冒頭の心臓が脈打つ音の聴こえ方で、いろいろ判断していたそうです。心臓の音は、生音を普段でも聞く事が出来るため、比較しやすいのかも知れません。ガイド納富は、あんな風に鼓動が聴こえた事はないのですが。

形が良くて装着感が軽い事が何を意味するのか

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シンプルながら、ヘッドフォンの機能とデザインがうまく一致していて、外観もカッコいい。

好きな音、好きな音楽、好きな曲、好きな楽器、その全てを最高の音で鳴らしてくれるヘッドフォンがあれば、それにこしたことはありません。でも、そうではないし、最高かどうかが分かるほどの量を試す事も出来ません。だから、ガイド納富は、まず、デザインと装着感、長い時間付けていられるか、といった部分の「好み」から選ぶ事が多いのです。音の好き嫌いは、そうやって絞り込んでから。そうしても大丈夫なくらい、どのヘッドフォンも良い音がするのですから、これで大丈夫なのです。
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カップは耳の形に沿うような縦に長い形状。この無駄の無いデザインもモメンタムの特長のひとつ。

ゼンハイザーの「Momentum」は、密閉型でそれなりの価格の製品なのに、あまり大袈裟ではなく必要なパーツを最小限使って作ったような、スッキリしたデザインが好きです。また、スッキリさせる事は自動的に軽量化にも繋がるわけで、装着時の圧迫感がほとんどありません。また、縦長のカップは耳の形に沿って、これも最小限のサイズで作られています。だから、ちょうど耳を覆う分だけしか体に触れる事がなく、装着しているという感じがとても少ないのです。
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金属パーツに穴を開けて、カップ位置の調整に使うアイディアは、デザイン的にも機能的にも軽量化にも貢献する。

金属と革をパーツごとに上手く使っていて、カップの位置合わせは、金属のプレートとカップ先端のプラスチックのパーツだけで調整するシンプルなもの。こういう部分に無駄なパーツを使わず、軽量でしかも金属のパーツとカップのコントラストがカッコいいデザインに仕上げているあたり、本当に良く出来ています。金属パーツに空いた穴は、位置合わせに必要な穴ですが、それをもデザインに組み込み、さらに軽量化にも役立たせているわけです。穴をデザインと軽量化の両面で利用するというスタイルは、ベルトの頭頂部が二つに分かれていて、その間に穴が開いているデザインにも活かされています。

自然な音、と感じさせるヘッドフォン

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頭の支えになるヘッドバンド部は本革を使って装着感を保ちつつ、面積を最小限にして軽量化とデザインのシンプルさを実現。これもまた上手い。

こういう軽量化と、体に触れる面積の最小化、さらに圧迫感や大仰さの排除は、長く装着している状態が続いた時、それを邪魔に思うか、慣れて装着している事を忘れるか、という部分で威力を発揮します。この「モメンタム」は、装着時間が長くなるほど、自然に感じられるデザインになっているわけです。そして、出てくる音も、そのデザインに見合った、スッキリと軽い音です。それはまるで、スピーカーから出る音を、ちょっと離れた所で聴いているような、生活の中で当たり前に聴こえてくるような音です。特に、テレビで映画を観ている時に使うと、その感じがハッキリ分かると思います。テレビの音がテレビの音のまま、ちょっと輪郭がハッキリして、音の一つ一つがくっきり聴こえてきます。ああ、こういう音がしてるんだな、と自然に思えるような。
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着ける人の年齢性別を問わず、スッキリと装着出来るデザインは、本当に良く出来ている。

これは、もちろん、ゼンハイザーのドライバの威力や、様々な技術力に拠るのでしょうが、それと同時に、軽い装着感との相性の良さも大きいと思うのです。ヘッドフォンを付けている、という感じがしない音が、ヘッドフォンから出てくるということは、ヘッドフォンを付けているという感じが薄いからこそですし、それは、全体のデザインや設計から来るものですから。家でメインに使うヘッドフォンの場合、デザインは自分では見えないのですが、そのデザイン自体が機能に奉仕しているなら、それは良いデザインだと思うのです。

音に関しては、ガイド納富が主にニューウェーブ系のロックや、70年代のハードロック、山崎ハコやムーンライダーズといった日本のロックを聴いている分には、全く文句はありません。音の分離が良くて高音も歪まず、シャキシャキいわず、でも切れ味が良く、低音は音楽を支える分だけきっちりと出ています。そして、音楽ではない、落語やドラマCD、ラジオといった人の声がとても聴きやすいのも、このヘッドフォンの特徴だと思います。

ガイド納富の「こだわりチェック」

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iPhoneやiPad、iPodで使える、リモコンとマイクを内蔵したケーブルが付属。通話も出来る。

さらに、この「モメンタム」は、iPhoneやiPad、iPodに使えるマイクとリモコンが付いたケーブルも付属しています。人の声に強い製品ですから、電話として使った時の聴きやすさは、ちょっと驚くほどでした。まあ、贅沢な使い方ではありますが、そういう使い方も出来るという事です。また、ケーブルが着脱式というのも、断線で修理に出すという必要もなく安心ですね。コンパクトで軽いので、持ち歩いての利用にも十分対応します。
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地味だが、ケーブルのプラグ部分が可変式になっているのも、使いやすさと耐久性を考えた配慮。こういう細部まで気が配られているのが嬉しい。

ここ1ヶ月ほど、毎日「モメンタム」で音楽を聴き、テレビや映画を観ていますが、使えば使うほど、音も好みにピッタリだという事が確認出来ました。ケーブルのコネクタ部分が曲がるように作られていたり、カップがツヤ消しの塗装になっているといった細部の丁寧さも気に入っています。

<関連リンク>
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