投資経験の有無や目的で商品を選ぶ
「年齢は同じでも、投資経験は人それぞれ。50代以降は、自分の投資経験と金融資産残高をよく考えて運用方針を考える必要があります」というのはファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんです。退職金を増やそうと投資を始めたのに逆に資産を大きく減らしてしった、などということにならないよう、自分の投資リテラシーを正確に見極める必要がありそうです。
「投資経験があり株式投資をしたいなら、20代と同じように『ETF』で値上がりを狙うのもいいでしょう。投資経験がなく損をしたくないという人でも、30~40代向きとして紹介した『物価連動国債ファンド』で資産防衛程度の投資はすべきだと思います」(深野さん)
戦略1 値上がりより、お楽しみに期待→株主優待や配当利回りで選ぶ日本株
値動きの大きい株式も、株主優待や配当利回りで選んだ銘柄はその分リスクが軽減されます。優待内容によってはレジャーへ出かけるきっかけになったり、食費節約の助けになるなど、いろいろな楽しみもあります。「必要のない優待をもらっても、ありがたみは半減してしまいます。銘柄を選ぶときは優待内容をきちんと確認することを忘れずに。株主優待人気が高い銘柄は、権利確定日に向けて株価が上がる傾向があるようです。いくら株主優待狙いといっても、投資するタイミングは計る必要があります」(深野さん)
株主優待を導入する企業は増えていますが、優待内容の変更や取りやめはいつ行われるかわかりません。配当利回りも業績によって変わりますから、保有後も定期的にチェックすることが大切です。
◆おすすめ銘柄&深野さんコメント
★信金中央信用金庫優先出資証券(証券コード:<8421>)「大幅な売却益は期待できにくいものの、価格の変動が非常に穏やかであることから安心して投資ができる高配当銘柄の1つ。中間期に株主優待を受け取ることができる」
●DATA
株主優待:1口→限定オリジナルグッズ、3口以上→3000円相当のグルメカタログ、10株以上→6000円相当のグルメカタログ ※権利確定月は9月。優待内容は2013年の場合 配当金→6500円(1株/年、2013年3月期実績、2014年3月期予定)
★丸三証券(証券コード:<8613>)
「10万円未満と比較的少額から投資できる高配当銘柄。証券市場の活況が続けば続くほど売却益や増配が期待できる銘柄」
●DATA
株主優待:100株以上→海苔詰合せ(1000円相当)、1000株以上→新潟県魚沼産コシヒカリ新米3キロ ※権利確定月は3月。優待内容は2013年の場合。配当金→13円50銭(1株/年、2013年3月期実績)、55円(1株/年、2014年3月期予定)
★ゲンキー(証券コード:<2772>)
「業績は底を打ち増益基調が続くと予想される。配当利回りは2%台前半と低いものの、株主優待は年2回、5キロのお米などをもらえ、充実している」
●DATA
株主優待:100株以上→(A)3000円分のゲンキー商品券、(B)3000円相当のゲンキーオリジナル商品詰合せ、(C)福井県産こしひかり5キロ、(D)6000円相当自社化粧品3点セット、A~Dのいずれか1点 ※権利確定月は6月と12月、優待内容は2013年の場合。配当金→50円(1株/年、2013年6月期実績、2014年6月期予定)
戦略2 定期的な収入が欲しい→毎月分配型ファンド
賛否両論がある毎月分配型ファンドですが「再投資する必要がないリタイアメント世代ならば、利用する価値はある」と深野さんはアドバイス。「非課税のNISA口座で元本払戻金(特別分配金)になっては意味がありませんから、基準価額の変動のブレ幅が小さい投資対象がいいでしょう。具体的には、外国債券ファンドの為替ヘッジありタイプ。毎月の分配金は1万口あたり40円くらいをイメージしてください」(深野さん)
おすすめ銘柄&深野さんコメント
★ノムラファンドマスターズ世界債券Aコース 運用会社/野村アセットマネジメント「新興国を含む国債、政府機関債、社債、ハイイールド債など、世界のさまざな債券に広範囲に分散が行われている健全性が高く、分配金の減額リスクが低い投資信託」
●DATA
分配金実績→30円/1万口・月(2010年8月~2014年3月)
★フィデリティ・ストラテジック・インカム・ファンドAコース(為替ヘッジ付き)「愛称:悠々債券」 運用会社/フィデリティ投信
「毎月の分配金は他のファンドと比較して安定度は低いものの、その時々の運用状況に合わせ身の丈にあった分配金が期待できる投資信託」
●DATA
分配金実績→40円/1万口・月(2013年12月~2014年3月)
★DWSグローバル公益債券ファンド(毎月分配型)Aコース(為替ヘッジあり)/ドイチェ・アセット・マネジメント
「電力、ガス、水道などの世界の公益業・公社が発行する債券を投資対象とすることから、基準価額の変動が少なく、分配金の減額リスクが低い投資信託」
●DATA
分配金実績→40円/1万口・月(2010年12月~2014年3月)
取材・文/鈴木弥生 パネルデザイン/引間良基