「必要」と思うハードルが低い人は要注意!!
実際に「貯められない」生活から脱し、300万円貯蓄ができるまでに家計を改善するには具体的に何から始めればいいのでしょうか。まず目指すべきは、今の自分から〈変わる〉ということ。そのためには、自分の支出を振り返ることから始めてほしいと、ファイナンシャル・プランナーの八ツ井慶子さんはアドバイスします。「レコーディング・ダイエットは食べた物を記録することで、自分が食べ過ぎだと客観的に判断できる効果があるわけですが、原理はそれと同じ。支出の記録を見返して、いかに自分が使っているかに気づくかどうか。実は、貯められない人のうち、それに気づいて、すんなりと家計改善できてしまうケースが少なくありません。つまり、そういう人に必要だったのはキッカケだけ。基本的に変われる人なのです」
支出の記録は、家計簿のように費目別にきっちり仕分けしたものでも、あるいはレシートをまとめたものでも構いません。大事なのは、自分の支出の現状を実感するということです。
「貯まらない」にはいろんな要素が絡んでいます
また、同じ家計管理でも、別の視点で貯められる人に変われるアプローチがあります。それは、支出をした理由を明確にすることです。つまりは、何に使ったかよりも、なぜ使ってしまったか。贅沢しているつもりはない。普段から切り詰めているのにお金が残らない。そう感じている人は、これを実践することで、本当に必要な支出だけを行えるようになると八ツ井さんは言います。
たとえば、仕事で疲れているからという理由で、その日の夕飯を外食で済ませたとします。もちろん、外食の方が支出として割高という設定です。そのとき、時間的にも体力的にも作るのは本当に難しい状況だったのか、あるいは単に面倒だから、楽をしたかったからなのか。そこを自分で突き詰めてみるということです。
「しかし、それを実践するのはそう簡単ではありません。なぜなら、〈もう無理〉〈これは必要〉というハードルが世間一般に低いからです。結局、コレだけモノがあふれていて、何でも手軽に買うことができる。30代であれば、そういった環境の中ですでに習慣として自然とラクな生活、より支出する生活を続けている可能性が高いのです」
出勤前にカフェに立ち寄るのが日課となっている人、それを必要と勝手に決めていないでしょうか。日用品は100円ショップで揃えるという人、安いからとついあれこれ買ってしまい、会計が3000円だったということはないでしょうか。知らずに〈必要〉のハードルが下がっているのかもしれません。
次のページでは、無駄遣いと必要の線引きについて考えてみます
取材・文/清水京武 監修/八ツ井慶子(ファイナンシャル・プランナー)
イラスト/竹松勇二 パネルデザイン/引間良基