阪神・淡路大震災と同じ「素早い揺れ」が壊滅的なダメージにつながる
直下型地震への対策!阪神・淡路大震災に学ぶ防災
実は、ゆったりとした長い周期の揺れ、すなわち「長周期地震動」は、非常に遠くの地域まで揺れを伝えるものの、家屋を倒壊させたり、建造物の中にいる人に直接的な影響を与えたりは、比較的しにくいのです。
これに比べて、阪神・淡路大震災などで計測された、周期1~2秒の素早い揺れ、すなわち「短周期地震動」は、家屋に決定的なダメージを与えやすい振動です。直下型地震で発生しやすく、別名「キラーパルス」と呼ばれます。
首都直下の内陸部を震源とする巨大地震が発生すると、この「キラーパルス」によって多くの建物が倒壊、家屋内での死者数が増大し、さらに火災の発生を増やすという最悪な被害が予想されます。阪神・淡路大震災では、震源近くの木造家屋は壊滅的なダメージを受け、コンクリートのビルさえも倒壊、高速道路の橋脚も破壊されてしまうという被害状況でした。
人口密集地域は「人口の集中」そのものが被災リスク
阪神・淡路大震災は、非常に限定的な地域で発生した地震です。それでも6000人を超える死者が発生してしまったのは、まだ人が起きる前の5時台であり、寝室内で亡くなった方が圧倒的に多かったせいといわれています。また1995年当時はまだ耐震性の低い家屋が地域に多かったですが、現在はそれほど家屋内でのリスクは高くないという統計もあります。しかし、関東で起きたもうひとつの大規模災害、1923年の関東大震災では、10万人もの人間が火災を主な原因として亡くなったという事実も忘れてはいけません。
関東大震災では「火炎竜巻」のような現象が発生、逃げ場を失った人が1カ所で4万人も亡くなるという悲劇が発生しました。当時の首都圏の人口は現在の4分の1程度だったことを考えると、10万人という被害者の数字がいかに大変なものだったかということがわかります。
現在、これだけの人口が集中している首都圏では「人口の集中」そのものが被災リスクとなり、都市部特有の「二次災害」を発生させる可能性があることを忘れてはなりません。
首都圏の持つ特有のリスク:長期インフラ停止や帰宅難民化など
長期のインフラ停止に備える十分な備蓄が必要
また「人口が集中する」がゆえの被災リスクは他にも考えられます。帰宅難民と呼ばれる通勤者や滞留する人の数は、最新の試算によると1000万人近くなるいっぽう、彼らを収容できる避難場所や避難所はまったく用意できていません。
東日本大震災の際、首都圏は実質的な被害はほとんど発生していませんでしたが、そんなときですら、水や食料が不足したのです。この事実を省みると、もし甚大な被害が発生するような災害が発生した場合には、流通は全く停滞し続け、市民の不安は増大、あの時とは比べようもないほどの社会不安が起こると考えられます。
特にマンション高層階などに住む人は、長期停電などの事態に備え、インフラ回復までの十分な備蓄を行っておくべきでしょう。
前述の首都直下地震の試算はあくまでM7クラスの規模の地震発生時のもの。首都圏では、確立的にはかなり低いものの、関東大震災クラスのM8~M9規模のさらに巨大な地震が発生する可能性もあります。
中央防災会議は東京湾の火力発電所などが被災した場合、最悪50%程度の電力供給になる可能性があると試算していますが、被災状況によっては長期の停電も覚悟しなければなりません。
都市部特有の「複合災害」に備えるためには、たとえば寝室の安全を確保するだけでは足りません。地域特有の被災リスクを十分に把握した上で、自分と家族に何が必要なのかを考えて準備する必要があります。
首都直下型地震への対策・備えとしてできること
- まずは耐震性の高い住居に住むこと
- 家屋内での被害を防ぐ家具の固定(とくに寝室、玄関)
- 消火器の準備で初期消火に協力
- 長期インフラ停止に備える備蓄
- 地域の最大リスクを把握すること
【関連記事】