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取り除くべき『ボトルネック』は何か?

エピソードの積み重ねが、全てラストに向かっての伏線となっており、最後の瞬間にはそれらが走馬灯のように脳裏を駆け巡ります。

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■『ボトルネック』
■米澤穂信

主人公・嵯峨野リョウは、恋人の弔いに東尋坊を訪れたとき、兄の死を知らされます。嵯峨野家は両親ともに好き勝手に生きており、兄は意識がない状態が長く続いており、もはや家庭という体をなしていない状態でした。

兄の死を知らされ、家に戻ろうとするリョウですが、帰り着いたのは「自分の知っている嵯峨野家」とは違う嵯峨野家でした。嵯峨野家に戻ったリョウを、見知らぬ女性が迎えます。二人はかみ合わない話を続けますが、「どうやら女性は、リョウが生まれる前、母親の胎内で亡くなってしまった姉のようだ」とリョウは気付きます。「姉」は「私に弟はいない」と初めは戸惑い、不審人物扱いをするのですが、やがて姉らしく、リョウの身を案じるようになります。

「姉が暮らしている世界=リョウが生まれなかった世界」のことを、リョウは姉と共に、少しずつ知っていきます。そして「僕がいた世界より、姉の暮らしている世界では、みんなが幸せになっているのではないか? だとしたら、僕がいることの意味は……」とリョウの心には絶望感が広がっていき、やがて衝撃のラストを迎えてしまうのです。

たとえば、リョウが暮らしていた世界で、閉店していたはずのラーメン屋が、姉の暮らしている世界ではまだ営業を続けている。このような、決して大げさではないエピソードの積み重ねが、全てラストに向かっての伏線となっており、最後の瞬間にはそれらが走馬灯のように脳裏を駆け巡ります。
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