文房具は基本的に懐かしさを纏っている

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Beahouse「読書記録しおり ワタシ文庫」各色450円(税別)

文房具は、多分、人が意識する初めての「道具」で、その後もずっと、勉強や仕事のための道具として使い続けています。だから、そこには思い出が染みついていて、特に意識しなくてもノスタルジックな製品が生まれやすいジャンルではあります。ツバメノートや、トンボ鉛筆のMONO消しゴム、三菱鉛筆のUNIなど、子供の頃からデザインが変わっていない、もう存在そのものが懐かしい製品も多く、それが、とても使っていて安心だったりします。
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パッケージは、こんな感じ。1パッケージに3枚入っている。

また、ノスタルジックなムードをデザインに取り入れた製品も多く、手書きを代表とする、文房具の持つアナログ感を強調した製品が増えていたりもします。ただ、ノスタルジーをデザインコンセプトにするというのは、実際には結構難しいものです。懐かしさは、人の記憶に支えられていて、だからこそ、小さな違和感に対して敏感です。懐かしいムードのデザインで懐かしさを呼び起こすためには、懐かしさを呼び起こすポイントを正確に抑えていなければなりません。
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二つ折りになっていて、開くと、こんな風に、左が書名などのデータ、右が感想を書く欄になっている。

何となく懐かしいような気がするけれど、微妙に「コレジャナイ」感がある「懐かし系文具」が結構多いのも、押さえるべきポイントを押さえている製品が、それほど多くない事を物語っています。もっとも、若い人が、想像の中での懐かしさを刺激される、という事はあると思いますし、それを狙った商品もそれはそれで有りなのですが、そういう商品は何となくデザインとして一時的なものになりがちなのが、ちょっと残念に感じるのです。そうならば、わざわざノスタルジーに寄せる必要は無いのではないかとか考えてしまいます。

図書カードを模した読書ログ用しおりというアイディア

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図書カードが持つ懐かしさを、商品デザインに活かしつつ、読書ログに必要な機能を収めたデザイン。

Beahouseの「読書記録しおり ワタシ文庫」(450円・税別)は、懐かしい学校の図書室の貸し出しカードを模した、しおりであり、読書記録用のシートでもあるという製品です。カードには日付、書名、著者名、感想を書く欄があり、感想欄は小さなカードの2行分。それだけが印刷されていて、1枚のカードで裏表20冊の本が記録出来るようになっています。読書メモというのは、ちゃんと付けようとすると、中々やっかいなものですし、自分用のメモなら、2行、実際に書くと、詰めて書いても50~60文字という、このサイズは、面倒でもないし、大きな字で書けばもっと文字数は少なくて済むし、続けるという点を重視すれば、十分と言えるでしょう。それでは、内容を思い出せないと言うのなら、読み返せば良いですし。その時、その本に対して何を感じたか、を記録したいのであって、本の内容を書く意味はないですから。
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感想欄は1冊2行。罫線の粗い印刷も懐かしさを演出する。

読書ノートを書くためのしおり、というアイディアも、理に適っているというか、使い方の流れが自然です。読み始めたら、「ワタシ文庫」に書名、著者名を書いて、その本に挟んでおいて、読み終えたら、日付と感想を書いて、次の本へ。読書ノート、どこに置いたっけ、と探す必要もなければ、外出時に読み終えても、さっと感想を書く事が出来ます。大袈裟にならず、別に感想を書かなくても構いません。カードが二つ折りになっていて、表側にデータ、裏側に感想という構造になっているので、感想を書かなくても、見た目はあまりカッコ悪くならないのです。ひと言書くだけでも様になる大きさですし。
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本当に図書カード用の紙ポケットを製造しているメーカー(株)伊藤伊による「貸出カード用ブックポケット」が付属する。

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ブックポケットの裏には糊が付いているので、手帳や本にすぐに貼り付けられる。

1パッケージに3枚のカードが入っているので、1ヶ月に20冊程度読むとして、3ヶ月分。1ヶ月約150円なら、それほど痛手でもないでしょう。一般的な本好きの方なら十分な仕様だと思います。ガイド納富の場合、もう少し読むのと、併読が多く、多くの本は一度デジタル化してから読むので、しおりとしては使わないのですが、このカードには、実際に図書室などで使われている、本の背表紙裏(いわゆる表3ですね)に貼る図書カードを入れる紙ポケットが付属しています。これを手帳などに貼っておけば、iPadで読んで、読み終われば、「ワタシ文庫」に記録する、という流れも、比較的スムーズに作る事が出来ます。デジタルで読むからデジタルで管理しなければならない、という事は無いですし、さっとメモが取れるのだから、こういう場合はアナログとの併用が便利だったりします。

ポイントを抑えながら製品としても使えるものを

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使ってみた。書き込むと、更に懐かしさが増すというのが偉いと思う。

この、本当に図書館で使われている紙ポケットを、しかも、実際にそれを作っているメーカーのものを付属する、という事でも分かるのですが、この「ワタシ文庫」は、そのあたりの、ノスタルジーに対する演出が、とても細やかです。多分、製作者自らの記憶を裏切らないように作っているのだと思います。紙は「ケナフ100G」という、封筒などに使われる、ちょっと黄ばんだ感じのものを使用。この紙は木材パルプの代替資源として注目されるケナフから作ったパルプを漉いて作ったもの。また、印刷も活版印刷風に仕上げるなど、細部まで、きちんと目が行き届いています。
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ちょっと大きいようだが、挟んでみると文庫本でも使いやすいサイズだった。

これは、目指したものが「図書カード風のデザイン」ではなく、「図書カードの記憶を呼び起こすもの」だったことを示しています。重要なのは真似ではなく、記憶だという事が分かったデザインなのです。だから、図書カードそのもの、という方向ではなく、読書記録カードという「実用」部分を優先しつつ、細部は違っても、思い出を喚起するデザインになっていることを優先しているのです。これは、図書カード風読書記録しおり、という製品にとって、重要なのはどこか、という事がきちんと分かっていて、それに向けて商品化した、と言う事なのだと想像します。これ、意外にやろうと思っても出来ないんですよ、実際。
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名前印を捺しても不自然に見えない。どころか、さらに図書カードっぽさが増す。そんな風にデザインされている。

そもそも、図書カードなんて、学校や図書館によって細部は違っていたはずだし、完全コピーには意味がないのです。最初から書式だって違うわけですから(貸し出し票ではないから当たり前ですね)。でも、記憶の中で、それを「図書カード」だと認識する大事な部分さえ、きちんと作られていれば、私たちの記憶は、それを「図書カード」だと認識します。「ああ、こんなのだった」と。ガイド納富は、この「ワタシ文庫」を手にして、しばらく眺めていて、ふと、「ああ、このカードには、名前をハンコで捺したいな」と思いました。小学校や中学校で、自分のものに対して必ず捺されていた、横書きの名前のゴム印です。ちょうど、それに類したハンコを持っていたので、とりあえず捺してみると、それは違和感なく収まり、より「図書カード」らしさを増しました。それを見て、「このデザインは、とても正しいんだな」と思ったのです。記憶との齟齬は、こういう上乗せに弱いものですから。このデザインは、記憶にとても忠実なんだな、と思ったのです。名前印が似合うだけの強さを持ったデザイン。

ガイド納富の「こだわりチェック」

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画集にポケットを貼り付けて、読むたびに記録する、といった使い方も楽しそうだ。

この「ワタシ文庫」は、基本的には読書ログのためのカードです。そうやって使うのが、一番似合います。ただ、相当の本好きが本気で使おうと思うと、やや脆弱なのも確かです。これでは、お金がいくらあっても足りない、と思う人もいるでしょうし、増え続けるカードをどうすればいいんだ、と思う人もいるでしょう。とりあえず、ガイド納富としては、まずは、このカード専用のカードホルダーを作って欲しいと思います。デザイン上、パンチで穴を開けるスペースがないので、クリアブック的なものに収納する事になると思うのですが、これを、「ワタシ文庫」のデザインコンセプトに沿った形で、出来れば50枚程度収納出来るものがあれば良いなと思いました。

また、読みまくる人については、例えば、何度も読み返す本1冊に、このカード1枚を使う、という使い方も良いと思います。カードを見ると、いつ読み返したのが、これが何回目なのか、その時々の感想を含め、すぐに分かるというのは、ちょっと嬉しいと思うのです。画集なんかに挟んでおくのも良いですよね。今回は、どの絵を長く見ていたのか、なんて事が分かるのは面白い事です。1冊の本をみんなで回し読みする時に使うのも楽しそうですし、普通に栞としても、こういう大きめのものは、大判の本なんかに使いやすくて重宝します。

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