本当の平均値は「380万円」……!?
マネー相談を受ける人の多くがする質問があります。「あのー、よそのご家庭と比べてどうなんでしょうか?」。
相談者が気になるのは、貯蓄額や食費、保険料、ローンの借入額などです。それが人と比較して、多いか少ないか……。気持ちはわかります。いくら親しい人でも、その家の家計まで詳しく知っていることはまずないはず。家計はある意味「見えない数値」なのです。したがって、統計や平均値がとても気になってしまう。その数値との比較で安心したり、不安になったりするわけです。
マネー統計の代表が「平均貯蓄額」。金融広報中央委員会が発表した2017年調査の「家計の金融行動に関する世論調査」によると、家計が保有する金融資産は1世帯あたり平均1151万円(2人以上の世帯が対象 /金融資産を保有していない世帯を含む )。前回を73万円アップしました。ここでいう金融資産とは預貯金だけでなく、株式、債券、保険商品なども含めたもの(円グラフ参照)。それでも、有効回答となる3771世帯のうち、実は全体のほぼ7割の世帯が平均額に達していないのです。したがって、金融資産が1000万円以上なくても、「ウチは平均以下なんだ……」と落胆する必要はありません。
こういった平均値の偏りを是正するために「中央値」という数値がよく使われます。この調査で言えば、その金額より多く保有する世帯数と少なく保有する世帯数が同数になる値であり、より実感に近い数値と考えられています。それが今回は「380万円」。これだけで、平均値を鵜呑みにすべきではないことがわかるはずです。
トータルで貯蓄できる家計を目指す
では、保有資産が380万円以下であれば、「貯蓄が少ない」ということになるのでしょうか。20代で結婚して間もない世帯で、共働きにより貯蓄ペースが高いのであれば、貯蓄が100万円程度でも心配いりません。逆に、 小学生と中学生のお子さんがいて、3500万円のマンションを今年購入予定の世帯であれば、貯蓄が380万円あってもやや心もとないということになります。必要な貯蓄額や資産額は、その世帯の家族構成や収支によって変わります。今後のライフプランに照らし合わせて、いくら資金が必要で、そのためにどう家計管理していくべきか。それを把握し、実践できていれば、統計やデータに振り回されることはないのです。
支出面も同様です。たとえば、節約上手の世帯を平均すると「食費は生活費の15%以内」といった数値が出るとしましょう。では、食費が生活費の20%の世帯は家計管理が下手なのでしょうか。もちろん、食費に関して無駄があり、改善の余地がある場合もあるはず。
しかし、忙しくてなかなか料理ができない、あるいは月に1回の家族での外食が楽しみでありストレス解消、という人もいるでしょう。そういうケースで、無理に食費を切り詰めることがはたしてプラスかどうか。もちろん、食費が生活費の50%、60%というのであれば問題ですが、多少のオーバーを深刻に受け止める必要は必ずしもないということです。
家計管理は、いわば予算取りの作業です。収入から目標とすべき貯蓄額を差し引いた額で、生活費全体が収まれば、各支出項目への配分に決まりはありません(家賃、ローンなどの固定費は別)。その数値が、よそ様と違っても構わないのです。自分なり、あるいはその家族なりの優先順位で何が削れて、何が削れないのか。それをしっかり認識することが、合理的な家計管理の第一歩と考えてください。