オーストリアの気候
日本は美しい四季のあることでとみに有名ですが、オーストリアの季節は暑くて陽気な夏と、長く厳しい冬の間に、繋ぎ目としての春と秋がほんの少しあるだけといった趣き。しかし実際に住んでみない限りは、この異様に短い春と秋の感覚や、日本とは時期がずれた季節感といったものはなかなか掴み難いですよね。また、オーストリアはアルプス山脈の麓に位置するため、目まぐるしく変化する天候はまさに山国そのもの。おまけにロシア方面(北東)とスペイン方面(南西)から吹いてくる季節風の影響もあり、寒暖の差が日ごとに激しいのが特徴です。今回は旅行者の方への旅のアドバイスの一環として、オーストリアの季節の移り変わりとお勧めの旅の服装を紹介していきます。
INDEX
オーストリアの季節
■日本よりぐっと短いオーストリアの春春の訪れを告げるイースターマーケット。意匠を凝らしたデザインのイースターエッグのオーナメントが並ぶ
また3月の最後の週末には、ウィンタータイムからサマータイムへの切り替えが行われます。土曜から日曜に日付が変わるとき、時計の針が一時間進むので、翌日にコンサートや食事の予定を入れている場合は時間に気を付けましょう。
■万緑の映えるオーストリアの夏 オーストリアでは長い冬が終わり、少し春めいたかと思えばすぐに気温がぐんぐんと急上昇を始め、あっという間に夏が到来します。年によって差はあるものの、例年5月になるとぐっと暖かくなり、梅雨のないオーストリアでは6月には既に真夏日和に。一方7月は雨模様が続くこともあるので、この時期には折り畳み傘のご準備を。オーストリアは真夏の日差しが強いため、太陽光の下は強烈な暑さですが、木陰に入ると涼しく過ごしやすいのも特徴です。そのため日の高くない朝夕は比較的冷涼ですので、屋外の観光やアクティビティ等は午前中や夕方に計画すると良いでしょう。
普段はひんやりした気候のオーストリアですが、昨今の夏は40度近くまで気温が上がることも。そのため、最近でこそ地下鉄や路面電車にも冷房車両が導入されつつありますが、日本と違ってオーストリアの建物や公共交通機関には基本的に暖房機能しかないことの方が多いです。夏に旅行するならば、熱中症予防のためにも体温調節しやすい服装や扇子、携帯用の扇風機などの持参をお勧めします。加えて日差し対策に帽子やサングラスなどもあると更に快適な旅となるでしょう。
■日本より一足早く始まるオーストリアの秋 夏の訪れが日本よりも早いように、オーストリアでは秋の足音も早く聞こえてきます。7月いっぱいは暑いことの多いオーストリアでも、8月中旬には気温が下がり始め、9月にはすっかり秋の様相を呈してきます。一晩で一気に20度から30度も冷え込むこともありますし、日本よりもずっと風が強いため、実際の気温よりも体感温度は低く感じられます。寒さから風邪をひかないように、薄手のダウンジャケットやストール、重ね着用の温かい下着などもスーツケースに入れておけば旅行中も安心です。ただし、ダウンジャケットなどは8月から9月にかけて既に店頭に並び始めるので、お洒落なヨーロッパブランドを現地調達するのも一考の余地があるでしょう。
春と同じく、10月の最終週末にはサマータイムからウィンタータイムへと時間変更があります。土曜から日曜にかけて真夜中に時計の針を一時間遅らせるので、翌日の日曜に予定を入れている場合は十分ご注意を!
■ウィンタースポーツの盛んなオーストリアの冬 異常気象の影響を受け、近年では膝まで積雪する厳冬の年もあれば、ほとんど雪の降らない温暖な年もあるなど、ばらつきが出ているものの、基本的にオーストリアは冬季五輪が二度も開催された山岳の雪国。一年の季節では冬が最も長く、人々が冬物のジャケットを着用する期間はおおよそ11月から3月までと約半年弱にも及びます。
そんな酷寒の国ですが、雪で真っ白に染まった街並みや大自然は、夏にはない別格の気品と美しさがあるもの。また、ウィーン国立歌劇場主宰のものをはじめとする数々の華やかな舞踏会が開催されるのもこの時期です。寒さに負けずに観光やショッピング、クリスマス・マーケットや舞踏会といったイベントを楽しむためには、とにかく暖かい装いが一番のポイント。お出かけの際には厚手のコート以外にも、ニット帽やマフラー、手袋、貼るカイロといった防寒小物が必須。訪れる場所や移動形態にもよりますが、雪中を安全に歩くために、滑り止めと防水機能のしっかり備わったスノーブーツも準備しておくと万全でしょう。ただし、クリスマス以降はセールが大々的に催されるので、本場の雪国で一足買い求めるのも賢い手です。
旅行中の服装とドレスコード
季節紹介の項目でも四季ごとにお勧めの服装は紹介しましたが、それ以外にも準備しておきたい ワードローブや小物がいくつかあります。■どの季節でも、「重ね着」がポイント
今回ご覧になった通り、オーストリアの気候は日本よりもずっと気まぐれで予想しづらく、寒暖の揺れ幅が日ごと、年ごとに大きいのが特徴です。滞在中に急に寒くなったり暑くなったりする事態は十分に予想範囲内ですので、せっかくの旅行中に体調を崩さないためにも、必ず重ね着ができる服装を心掛けましょう。夏場以外は北風が吹く日も目立つので、観光中にはウィンドブレーカーや薄手のダウンコートなど、小さくたたんで持ち運べる防風素材の上着が役立ちます。また強風のオーストリアでは軽量の折り畳み傘を使うと壊れることもあるので、フード付きのジャケットやレインコートもあると安心です。観光用の靴はとにかく歩きやすいことが絶対条件で、ちょっとしたハイキングに加え、炭鉱や地底湖など足場の悪い場所の見学、雨天時にも万能に対応できるトレッキングシューズがお勧めです。その他にも大判のハンカチが一枚あれば、寒い日にはスカーフに、暑い日には汗拭きにと大活躍します。
■オペラや舞踏会、レストランでのドレスコード
オーストリアへ旅する観光客にとっては、オペラやコンサートといった芸術鑑賞が目的の一環であることも多いでしょう。通常の観光時は機能的な服装をお勧めしますが、音楽関連のイベントや格式あるレストランやバーでの飲食時にはちょっとしたドレスアップが求められることも。ドレスコードが指定されている場合はオフィシャルサイトに明記されているので、事前に調べてそれに従ってください。ただし不明な場合には、女性であればワンピースやブラウス・スカートのセットアップにハンドバッグもしくはクラッチ、男性はぱりっとしたジャケットと革靴を着用しておけば無難でしょう。(但し、オペラの立ち見席などは少々のドレスダウンも可)
また舞踏会では、参加者のドレスコードがあらかじめ設定されています。女性はボールガウンと呼ばれる舞踏会専用の裾の広がったローブ、もしくは床まで届くイブニング・ドレス、男性は黒の燕尾服に白い蝶ネクタイ、もしくは黒のタキシードに黒い蝶ネクタイが基本。特にウィーン国立歌劇場(オペラ座)での舞踏会はドレスコードが厳格ですので、うっかり短いカクテルドレスを着用したり、黒い蝶ネクタイや腕時計を身に付けていると恥をかくので要注意です。
このように訪問する季節や目的に合わせて持参する衣類・小物類を賢く整えれば、オーストリアの旅がより一層楽しいものとなることでしょう!