「空前絶後 歴史大河ギャグ」が副題の歴史漫画
■作品名風雲児たち 幕末編
■作者名
みなもと太郎
■連載雑誌
月刊コミック乱
■おすすめの理由
「風雲児たち」は、1979(昭和54)年に第一部がはじまったという長い歴史をもつ歴史漫画です。
最初は、潮出版社が発行する『月刊少年ワールド』にさらに同社の『コミックトム』に連載されました。
リイド社の『コミック乱』には、2001(平成13)年から「風雲児たち 幕末編」として、『風雲児たち』の正統な続編として連載されています。
この作品の特徴として、「空前絶後 歴史大河ギャグ」という副題のように、映画やテレビ、コメディアンのネタなどをギャグにしているのが特徴。
それでいて、最新の史的資料を細密に調査したうえで執筆されているため、学校で習うような歴史感ではなく、本当は歴史に大きな足跡を残しながらマイナーとされていたような人物や能力が低いとされていたような人物を肯定的に描く傾向にあります。
また、逆に肯定的に描かれることが多かった人物に対し、否定的に描いたり、権力者サイドではなく民衆側の視点から描くなど、歴史に対する新たな発見や驚きを発見できる作品です。
現在は、勝海舟をはじめとする遣米使節がアメリカから帰国し、江戸城で老中たちに報告をしているところまでストーリーが進んでいます。
余りに馬鹿馬鹿しい老中たちの質問に対し、切腹覚悟で捨て身の発言をした海舟は「徳川様の世なんざもう長くねえ」と毒づきます。
それに対し、侠客で火消しの元締めの新門辰五郎が「いま、オイラ達いろは四十八組と旗本8万騎が戦をすりゃ、100%あっしたち勝ち」と言い切ります。
そして、「おれの目が黒いうちは江戸を守ってやるから安心しておくんない」という、今までの歴史感ではありえないような斬新な模写がこの作品の真骨頂といえるでしょう。
また、吉田松陰、橋本左内など安政の大獄に倒れた人々の描き方が印象的でした。
そして、安政の大獄を行った井伊直弼が暗殺される桜田門外の変は、ギャグを交えながらも、まるでライブを見るような戦闘シーンに大いに引き付けられました。