様々な感情も描かれた、厳しいピアノの世界の物語
『いつもポケットにショパン』
■作者名くらもちふさこ
■巻数
単行本:全4巻、文庫:全3巻
■おすすめの理由
「いつもポケットにショパン」は1980年~1981年に別冊マーガレットで連載された作品です。
■あらすじ
主人公の麻子は有名なピアニストの母を持ち、幼いころからピアノの練習に明け暮れていました。幼なじみの季晋(としくに)、通称きしんちゃんは中学進学と同時にピアノの留学のために西ドイツへ。高校生の時に再会するものの、季晋は麻子をライバル視するようになっていて、二人の仲はすれ違います。そのことには2人の母親の過去の確執が関係していることがわかり……。
初めて読んだのは小学生の頃。その時はピアノの話だとしか思っていなかったのですが、大人になって読むとかなり奥が深い作品ということに気付かされます。競争が厳しいピアノの世界はもちろん、学園生活、親子のこと、男女の愛、友情など様々な感情が描かれています。
私が大好きなのは麻子とお母さんのエピソード。普通ならピアニストを目指す娘に包丁を持たせるなどはしないのでは?と問われた際、「麻子はシチューが得意です」とピアニストの母親は少し得意げに答えます。それを聞いた麻子は、小さいころから普通の女の子と同じような経験ができるように育ててくれた母親の思いに気づきます。そして自分のことを突き離していると思っていた母親の愛を感じるのです。
この当時、少女マンガでピアノなどのクラシック音楽を題材にするときらびやかだったり派手な話になりがちだったと思うのですが、麻子は普通の女の子として描かれます。日常の中にピアノがあり、恋もするし、嫉妬もする。落ち込んだり悩んだりしながら少しずつ成長していく麻子がとても魅力的です。