燃料電池車/燃料電池車の基礎知識

燃料電池車の普及に向けて

ガソリン自動車が走るためにガソリンスタンドでの給油が必要であるのと同様に、燃料電池車には水素ステーションが不可欠です。

中島 徳至

執筆者:中島 徳至

電気自動車ガイド

燃料電池車が普及するために 

ガソリン自動車が走るためにガソリンスタンドでの給油が必要であるのと同様に、燃料電池車には水素ステーションが不可欠です。現在、日本では経産省と自動車メーカーが中心となって、2015年を目途に燃料電池車普及の足掛かりを作ろうという取り組みが進んでいます。そのため同年までにはある程度、燃料電池車が活躍するための水素ステーションを始めとしたインフラを整備する必要があります。

水素は主に石油などの化石燃料から作られるということもあり、実際にいくつかの石油会社は、既存のガソリンスタンドに併設する形で水素スタンドの整備を進めると同時に、近い将来ガソリンに置き換わる可能性の高い水素事業に力を注いでいます。

例えば、JX日鉱日石エネルギーは2013年4月、神奈川県海老名市に独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と共同で「海老名中央水素ステーション」を開設しています。これまでは安全性の観点から、規制により市街地に水素ステーションを作る許可が下りなかったのですが、今年に入り省令・政令改正がなされ認可が下り、市街地では初めてとなる水素を補充できるスポットをガソリンスタンドの敷地内に作っています。
(写真)海老名中央水素ステーション

(写真)海老名中央水素ステーション

また、JX日鉱日石エネルギーは水素の純度を高めて低炭素型水素を作ることができる精製装置を開発したと発表し、大手自動車メーカーも2015年前後を目途とし燃料電池車の発売を次々と発表しており、様々な事業者が普及に向けて力を入れています。そのため、今後は、皆さんが驚くほどのスピードで技術が進歩し、燃料電池車の普及は進んでいくと考えています。

次世代自動車が普及していく風潮の中、これらの動きが意味することとして、これまで、私たちは誰もが当たり前のように石油を使用していました。しかしこれからは原油価格の高騰、石油埋蔵量の限界、世界を取り巻く環境問題への期待の高まりを受けて、トラックなど運輸部門での化石燃料の使用制限が加わる可能性が考えられます。そのため、石油会社は産業部門用のエネルギーとしての水素を作るために石油を使用していくことで、石油産業がこれから生き残るための新たな道が生まれるのではないかと私は思っています。

水素使用による危険性について

ここまでお伝えした通り、燃料電池車は普及に向けて法の改正、インフラ投資、研究開発等、様々な分野で取り組みが行われています。どの一つが欠けても燃料電池車の普及は困難になってしまいますが、普及に向けての流れを生む引き金となった出来事は、法の改正でした。改正により、私たちが燃料電池車を利用するために必要な水素ステーションの建設が容易になったのです。

そもそも、法により厳しく規制されていた理由は、水素そのものの危険性にありました。水素は空気中の濃度が4%から75%になると燃える気体となり、ここに静電気程度のエネルギーが加わると着火すると言われています。

そのような背景の中、水素ステーションでの水素貯蔵技術、燃料電池の技術などがそれぞれ進歩し、安全性が認められたことで普及に弾みがつきました。燃料電池車では安全性が特に重要視され、完全に密封された装置の中でエネルギーを生成します。そのため爆発の危険性はありません。万が一水素が漏れてしまったとしても、水素はガソリンのように床にこぼれて横に広がることもなく、瞬く間に立ち上って拡散します。

そうは言っても絶対爆発しないとは断言できません。そのため水素社会実現に向けて、安全性に焦点を置いた実証実験を多数行っています。

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