水素タンク(合金)
燃料電池で電気を生み出すためには、水素が必要であり、車両には水素を貯めるためのタンク(または合金)が搭載されています。長時間運転するためには、効率よくできる限り小さな容量の水素を蓄積させることができるかが重要になっています。ここでは、燃料電池車における一般的な水素貯蔵方法3種類についてご説明いたします。■高圧水素タンク
(図)水素・燃料電池実証プロジェクトより引用
水素を高圧に圧縮して専用の高圧タンクに水素気体のまま貯蔵・車載する高圧水素タンクは通常の1気圧を350気圧(約350倍分)に圧縮し詰め込みます。気体のまま貯めることができれば、燃料としてすぐに使用できます。
現在では700気圧に圧縮するタンクの開発も進んでいますが、気圧が高すぎると爆発の危険もあり、実験と研究が進められています。しかし700気圧のタンクが実現すれば、燃料電池車の航続距離は400km以上、ガソリン車と遜色なく走る次世代自動車となるでしょう。
■液体水素タンク
水素は液体状態になると、その体積が気体の800分の1になります。液体水素タンクは、液体状態の水素を-253度にし、専用のタンクに差熱貯蔵することでよりたくさんの量の水素を貯蓄することができます。
しかし、水素は温度があがると気体に戻ってしまう為、タンク以内を超低温に冷やすための多大なエネルギーが必要です。断熱が万全でないと、場合によってタンクが爆発する恐れもあるため、こちらでも研究が進められていますが、700気圧の高圧タンクが実用の粋に達しており、液体で貯める必要性は薄れてきています。
■水素吸蔵合金
金属は、どんなに固いものでもボールとボールの間に必ず隙間ができてしまうように、分子間に隙間があります。その隙間に水素を分子状態で吸収させ、過熱によりそれを取り出す方法が水素吸蔵合金です。
水素吸蔵合金での水素貯蔵は、気体と比較して1000分の1の容量で貯蔵できます。超低温でも高圧力もでもないために安全性は高いですが、現実的な燃料電池車のためには計300kgの合金が必要と言われており、乗用車に乗せるには軽量化の必要性があります。そのための研究も積極的に行われていますが、現段階では重すぎて実用的ではないでしょう。
タンク(合金)に水素を供給する方法としては、燃料電池自動車には、ガソリンステーションに代わる新たなインフラである水素ステーションから直接水素を補給する「直接水素形」と、水素を車載改質器で製造する「車上改質形」の2つの種類があります。
そもそも水素は天然には、ほとんど存在しません。水素は主には天然ガス、LPG、石油、メタノール、石炭ガスから生成され、その際に別のエネルギーを消費します。つまり、水素を作るために必要なエネルギーが多く、エネルギー効率が悪い上に、CO2を排出しながら生み出されます。また、水素を車両のタンクに貯蔵する際にも、同じようなエネルギーが必要になります。
それらの観点から比較し、私は「直接水素形」の方がこれからより普及していくであろうと考えます。だからこそ、燃料電池車の普及のための最大の課題はインフラの整備だと私は思っています。
固体高分子型燃料電池
上記でお伝えした水素を使って電気を生み出すことが燃料電池の役割です。様々な燃料電池が存在している中で、ほとんどの燃料電池車に使用され、最も期待されている電池は固体高分子型燃料電池(PEFC)と呼ばれています。固体高分子型燃料電池とは、簡単にお伝えすると下図のように電解質にいくつかの固体高分子膜を用いる電池です。常温~90℃の温度上で作動し、33~44%の発電率を誇ります。軽量であるため、代表的な燃料電池自動車であるトヨタのFCHV-advやホンダのFCXクラリティーにも使用され、家庭用・携帯用などの小型用途にも適しています。
(図)公益社団法人 日本電気技術者協会より引用 固体分子型電池の構造
こうしてタンクに蓄積された水素を燃料とし、燃料電池によって生み出された電気は、バッテリーに蓄積されモーターを動かします。燃料電池車はこのようにして走行されていくのです。燃料電池車は、今まで私がお伝えしてきた電気自動車とまた違った構造や性質を持った車両だと言えます。特にこれから2015年にかけて、政府の政策や大手車メーカーの動向を見ても燃料電池車は急速に普及していくと私は考えます。ゆえに次世代自動車の中でも期待値のかなり高い燃料電池車の動向にこれからますます目が離せなくなっていくでしょう。