燃料電池とは
燃料『電池』と言うからには、電気エネルギーを溜めて使用するパソコンなどの「バッテリー」のようなイメージが湧くのではないかと思いますが、実は燃料電池は、電気エネルギーを溜める装置ではなく、水素と酸素の化学反応により電気を作る『発電』装置なのです。水は電気を加えることで、水素と酸素に分離できます。その逆の発想で水素と酸素を結合させると、そこに電気が生まれるのです。下の図をご覧いただいてお分かりの通り、燃料電池は水素と酸素の化学反応の結果、電気(熱)を発生させます。酸素は空気中のものを使用するので、水素さえ供給し続けることができれば、継続的に電力を取り出すことができます。汚染物質を排出せず水のみを排出するため環境に優しいところも、人々が燃料電池に注目する理由です。
燃料電池自体は、用途別に大きく5種類に分けられます。家庭用や自動車用、携帯用に使用される固体高分子型燃料電池(PEFC)、スペースシャトル、潜水艦に使用されるアルカリ電解質型燃料電池(AFC)、ビル工場などのコージェネレーションシステムとして用いられるリン酸型燃料電池(PAFC)、発電所等の大規模用途に適している溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC)、家庭用電源から発電用の大規模なものまで対応できる固体酸化物型燃料電池(SOFC)の5種類が存在し、それぞれが用途に応じて家庭用、車両用や船用などに適用されます。
さて燃料電池についてある程度理解を深めていただいたところで、これからは燃料電池車について詳しく説明させていただきたいと思います。
燃料電池車とは
燃料電池自動車(FCV, FCEV)は、エコロジーな燃料電池から生まれる電力を使ってモーターによって走行する車であることから、今日世界中から大変注目をされています。走行中に排気ガスを排出しないことから、電気自動車と同様に究極のエコカーになり得ると考える人も多いです。一回の水素充填で走ることのできる距離はガソリン自動車に匹敵し、電気自動車同様に運転時に発生する騒音や振動が少ないのでとても静かです。主な構造として、車両を動かすモーター、エネルギーを蓄え供給するバッテリー、モーターやバッテリーの動きを制御するコントロールユニット、電気を作るための水素を蓄える水素タンク、そして電気を作る燃料電池、が搭載されています。
モーター、バッテリー、コントロールユニットに関しては、電気自動車に使われているものと類似しているため、今回の記事では2つの車両の違いを明確にするためにも主に、燃料電池車の特徴である水素タンクと燃料電池についてお伝えいたします。