八高線の風変わりな駅
首都圏ではディーゼルカーの走る路線は少ない。しかも、旅情を味わうに適したクロスシートが車内に設置されている路線と言うと、都心から一番近いのはJR八高線の非電化区間である高麗川~倉賀野(列車は高崎まで乗入れる)であろう。沿線には、取り立てて絶景区間や有名な観光名所があるわけではない。しかし、丘陵地を抜け、森の中を走り、池の畔を通り、川を渡り、平地を快走といった具合に、ほどほどの変化はある。車窓を眺めていて決して退屈はしない。そんな中で、ふらりと降りてみて、あれっと感じた駅を紹介しよう。
竹沢駅
高麗川から5つ目。東武東上線との最初の乗換駅小川町の次に停車する山の中の小さい駅。といっても「秘境駅」とはほど遠く、まわりには人家も多い。駅舎は小ぢんまりとしているものの、切符売場があるわけではなく、あるのは本棚ばかり。いってみれば、駅ナカ図書室だ。とは言え、昼間は乗降客はほとんどなく、誰が本を読むのかな?と思ってしまう。集落のある割に人けがないのは、近くに東上線の東武竹沢駅があり、そちらは30分に1本ほど電車があるのに、八高線の列車本数は、下手をすると2時間ほど間隔が空いてしまうから敬遠されるのだろうか。用土駅
秩父鉄道や東武東上線との乗換駅寄居の北隣の駅。ホームの前は平地で開けていて見晴らしがよい。駅舎はモダンで斬新なもの。ペアとなった二つある建物のうち右の小さい方が駅舎で、左の大きい方は待合室を兼ねた地域のコミュニティステーション。駅にまつわる写真、地域の俳句会の作品展示、近隣のハイキングコースの案内リーフレットが置いてあったが、無人であった。ひとりで思索にふけるには最適かもしれない。松久駅
用土の高崎寄りにある小さな駅。コンパクトな駅舎が不評だったようで、その前に立ちはだかるようにもうひとつ三角屋根の建物を造って何とか格好をつけた感じ。あとから造った三角屋根の方は、美里町駅前情報館という。鉄道会社と地元がきちんと話し合ってよい建物をつくればよかったのに、意思の疎通を欠いていたことが丸見えの二重構造。何だかなあ、という不思議な駅である。駅前情報館は人形をショーケースに入れて展示したり、地域のパンフレットを置いたりと工夫はあるものの昼間は閑散としていた。駅の賑わいを取り戻すのは並大抵の努力では難しいのかもしれない。