値上げラッシュの要因は円安/ドル高?
物価上昇にETFが有効
たとえば、円/米ドルの動きを見ると、2012年11月16日の衆議院選挙解散表明時の終値81円26銭だったものが、2013年5月中旬には103円台半ばまで米ドル高が進み、同年8月21日では97円66銭となっているのです。
上昇率は5月中旬時点で約27.4%、8月21日時点で約20.2%も円安/米ドル高が進んでいるのです。わが国は、食料、エネルギーを自給自足できないことから、諸外国に頼っているのはご存じの通りですが、円安が進んでいるということは、円高時よりもたくさんの円を用意して食料、エネルギーを買い付けなければならないのです(=円安による価格の上昇)。
中でも家計に影響を与えるのが、原油、小麦などと思われます。小麦の価格は年2回の改定となりますが、為替の変動を含む原油価格変動の影響は、毎週のように家計に響いてくるのです。
アベノミクスでガソリン価格は9.2%の上昇
図は、2012年11月5日のレギュラーガソリンの全国平均店頭現金価格を100とした価格の推移を約2週間ごとに折れ線グラフにしたものです。直近の2013年8月19日では109.20と9.2%も上昇しているのです。価格に直すと、2012年11月5日は1リットル当たり146円70銭、2013年8月19日は同160円20銭上昇しています。仮に毎月50リットルのガソリンを給油しているとすれば675円の負担増になります。
2012年12月から2013年8月までであれば、9ヵ月×675円=6075円もの負担が増えていることになります。実際には、ガソリン価格は徐々に値上がりしていることが表から読み取れますから、本当の負担増額は6075円の半分位と考えられます。
半分の約3000円といっても、収入が増えない中での家計にとっての支出増は、必要な費用だけに簡単に削るわけには行きません。とすれば、別の支出項目を減らすことになるのがこれまでの家計管理でしたが、これからは削るだけではなく、資産を増やして家計防衛を考える必要があると思われます。
原油価格連動型のETFで負担増に備える
アベノミクスが話題になり始めたときから円安/外貨高が進めば、輸入品の価格は上昇して、その価格上昇が値上げという形で家計を襲ってくると言われていましたが、残念ながら値上げに備える保険は存在しません。「もしも」に備える場合、私たちは生命保険や損害保険に加入しますが、家計を襲う値上げという「もしも」に備える保険は存在しないのです。輸入品価格の上昇に備え、外貨預金などの外貨建て商品を保有しようと言われますが、外貨建て商品は投資コストが高く、また外貨預金には税制上もありません。そこで、値上げに備えるという意味で「ETF」投資を資産運用の一部に加えてもよいと思うのです。
家計の値上げに備えるETF投資は、原油価格や小麦価格に連動するETFが投資対象になりますが、小麦価格に連動するETFは売買が活発に行われていないことから、流動性が劣ると言わざるを得ません。そこで、原油価格に連動するETFを考えてみたいと思います。
ETF2株で10カ月分のガソリン価格上昇に備えられる?
原油価格に連動するETFである「WTI原油価格連動型上昇投信」は、1株から投資することができるETFです。2013年8月21日の終値は6360円ですので、1株であれば終値と同じ金額プラス売買手数料で投資することができます。ガソリン価格の推移と同じ表を見てください。大きく上昇している折れ線グラフが、WTI原油価格連動型上場投信の価格の推移です。ガソリン価格と同期間で比較すれば、50%近い値上がりとなっています。ちなみに、2012年11月5日の終値は4415円、2013年8月19日の終値は6530円でした。1株だと先に述べた9ヵ月分のガソリン価格の上昇に備えられませんでしたが、2株では10カ月~11カ月分の上昇に備えることができたはずです。
2012年11月5日には、アベノミクスという言葉すらなかったことから、2013年1月4日の終値5090円で投資したとすれば、2株~3株の投資でこれまでの負担増を賄うことができたはずです。投資金額は約1万円強~1万5000円強でした。決して難しい金額ではなかったはずです。
もちろん、値上げ分全額をETF投資による運用益で賄わなく、半分投資で賄い、半分は節約で対応するという方法もあるでしょう。
また、ETFが値下がりした場合ですが、保険の役割に期待しているのですから、値上がりするまで保有しておけばよく、不要になれば売却して構いません。その時点で売却損が発生したら、その売却損は掛け捨ての保険に加入したと読み換えればいいのです。
いずれにしても、ETF投資はお金を増やすだけではなく、値上げラッシュから家計を守る保険的な使い方もあるということを認識していただきたいと思います。なお、本文中の為替レートについては、データソースの違いによりレートが異なることがあります。