雑貨/ハンドクラフト・工芸

冨沢恭子さん ぬくもりある大地の布

冨沢さんの作る布は素朴でおおらか。ほんのり温度を感じるような手触り。四季を織り成すような自然の色合い。

江澤 香織

執筆者:江澤 香織

雑貨ガイド



個展の風景
去年ギャラリーブリキ星で行った個展での作品。


以前ご紹介した、下北沢で週末だけやっているお店「sunui」。 このメンバーでもあるテキスタイル作家、冨沢恭子さんとお会いした。 sunuiのお店の奥に吊るされていた、大きな布が目を引いたからだった。 大地のような琥珀のような、微妙な移り変わりのある自然の色。 その民族的なおおらかさと素朴な風合いに引き込まれて聞いてみると、 美大で学んだ冨沢さんの学生時代の作品だった。

作品

冨沢さんは中学から高校の多感な時期をメキシコで過ごしている。 住んでいた当時は特に意識はしていなかったが、今思い返してみると、 そのときの記憶が作品には多かれ少なかれ影響を与えているようだ。 プリミティブで不思議な形。色合いは渋めでも、どこか愛嬌やほのぼの感がある。 はっとするような色と形の組み合わせに驚きながらも、 小さい子供がいつまでも離さない、使い古した毛布のようなぬくもりが感じられる。

バッグ バッグ
バッグもよく作る。sunuiでもアイディアを発揮中。

冨沢さんは大学でテキスタイルを専攻。デザインはもちろん、染めも織りも自分で やってしまう。毛糸と麻糸を合わせて織ってみたり、ガーゼや和紙を使ってみたり、 最近はフェルトにも興味があるのだとか。 制作について話す冨沢さんの目はとても活き活きしている。作ることが本当に好きで、 それは自然に湧き上がってくることのように見える。アジアへ旅行するのも好きなので、 タイで大量に古い布を買ってきて、オリジナルの布と組み合わせてみたりもする。 韓国でもたくさんのビーズも仕入れてきたそうだ。 しかし、意外なことに日暮里へは最近初めて行ったのだそう。

ブリキ星での展示
こちらもブリキ星での展示

柿渋染め、という日本古来の技法も行う。柿渋とは、まだ青い柿を絞って、汁を自然発酵させた上澄み液のこと。「太陽の染め」とも言われる 方法で、この柿渋で染めた布を、洗っては太陽に当てて干し、という作業を繰り返す。 自然素材なので体にも良いし、染めた直後は薄い色でも、 光が当たるほどに、また時が経つほどに濃い色に変わっていくという。 その使い込むほどに移り変わる変化が味わい深い。 くたくたになるまで使って、布を育てる楽しみがある、と冨沢さんはいう。

マット マット
マット マット
斎藤志磨さんの陶器、品々・小林さんの盆栽とのコラボレーション

もともと茶系・土っぽい色が好きだったそうで、今でもスタイルはほとんど 変わらない。「いつかはアトリエ付きのお店を持ってみたい」 という冨沢さん。にこにことお花のように柔らかい笑顔で、 展示会前は大量の作品をバリバリとパワフルに作りあげてしまう。 好きなものに素直で自由、伸び伸びとした気持ちのよい作風が、 冨沢さんの人柄からじわじわと染み出している。

冨沢さんの個展が開かれます。

冨沢恭子展
11月24日(水)~12月2日(木)

ギャラリーブリキ星
東京都杉並区西荻北5-9-11
tel 03-5938-8106
12:00~19:00  (会期中無休) 

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