「編み図」と「英文解説文」 世界の情報格差の解消へ
編み物に関する世界の文献や資料を取り寄せ、研究に余念のないケストラーさん。
編み物の世界はとても広く、深いという。
「私はシンプルが好き。むずかしい編み物もできるが、若い人や初心者に編み物の面白さを、素材を変え、デザインを変え、編み方はシンプルだけど、ちょっと面白い、ちょっと驚くことを提案するように心がけています。とても色が奇麗で、本当はとてもむずかしいフェアアイル。クンストもそうです。それを誰でも分かりやすく、楽しく、簡単にできることを考えるように心がけています」
シンプル・オブ・ベストを強調するケストラーさんから、予期しない問題提起を受け戸惑い、衝撃を受けた。発言要旨を忠実に写し取ると…
「ヨーロッパは今、手編みブームが来ています。1980年代のブームに続く、2回目のブームです。今回の特徴はインターネットがブームを引き出し、拡散していることです。日本にいると英文ネットの凄さと広がりの全容が分かりにくい。英文に精通する人の力を借りて、ウェブ上で展開するニット情報を検索し直すことをお薦めしたい。
その際、気をつけて欲しいのが編み図と説明文の関係です。英文の場合は、説明文のみで編み図なしが基本パターン。ところが日本のニット愛好者は編み図にこだわります。編み図のないニット情報を見過ごすか、過小評価しがちです。世界の英語圏のニットブームの全容が日本に正確に伝わらない要因の一つがここにあります。
英文説明文のメリットは、編み図表記と比べて格段にページ数が少なくてすむことです。英文表記のルールさえ理解すれば、読み解くのはそんなにむずかしくない」
言葉の壁を乗り越え、世界を駆け巡るニットの最新情報に接近する現実的な方策のひとつが、ケストラーさんの提案だ。
「時々文章で、時々編み図で説明する両方の併用がベストと思います。ケースバイケースで使い分けることで、ニット界のガラパゴス現象を克服して頂きたい」
【関連情報】
Knit for Japan ホームページ
【情報提供元】
洋装産業新聞