妊娠・授乳期の薬と健康/妊娠・授乳期の薬と健康

妊婦や授乳中、市販の胃薬・胃腸薬で使ってよいものと悪いもの

妊娠中・授乳中は、胃痛、吐き気、下痢などの胃腸症状が起こりやすくなります。妊婦さんや授乳中の方に胃腸症状があった際、大正漢方胃腸薬やソルマックなど市販胃腸薬・胃薬は使って良いのか、どんな時に医療機関を受診するべきかや、 つわり症状の対処について解説します。

赤岩 明

執筆者:赤岩 明

妊娠・出産ガイド

妊娠中・授乳中は、胃痛、吐き気、下痢などの胃腸症状が起こりやすくなります。しかし、次の健診までに、急いで受診するかどうか迷ったり、そもそも、健診以外の診察予約が簡単でなかったり……。そんな時、自宅の市販胃腸薬(一般胃腸薬)は使って良い? どのような時、医療機関を受診する? 妊娠前から胃腸疾患のある人はどうする? つわり症状の場合は? などについて解説します。
大正漢方胃腸薬やソルマックなど、妊婦の市販胃腸薬・胃薬は使用可能?

妊娠中・授乳中の胃腸症状に、医薬部外品、第3類医薬品は使用できます。

 

妊婦さんや授乳中の方が使用できる市販胃腸薬は?

市販(一般)胃腸薬は、第1類医薬品、第2類医薬品、第3類医薬品、医薬部外品に分類されており、医薬品の包装や容器に必ず表示されています。分類の概要は変わりませんが、医薬品の成分変更や副作用報告などにより、絶えず見直しされています。

医薬部外品、第3類医薬品は、妊娠中・授乳中も、普段通りに使用できます。第1類、第2類の医薬品は、妊娠中・授乳中に使用して良いものから、絶対に使用してはいけないものまで様々なため、使用する前に医師・薬剤師に相談する必要があります。
 

◎医薬部外品・指定医薬部外品

……人体に対する作用が緩和で、安全性の点で特に問題のないもの
  • 新ビオフェルミンS錠
  • エビオス錠
  • ヤクルトBL整腸薬
  • 仁丹
  • ソルマック胃腸液 など

これらを日頃から使用している方もいるでしょうが、自分に合っているのであれば使用できます。なお1日程度で症状が治まる下痢などに新ビオフェルミンS錠がおすすめです。また胃もたれ、消化不良の方は、エビオス錠を試す価値あり。軽いつわりの人には、仁丹などの口中清涼剤が合うこともあります。
 

○第3類医薬品

……リスクが比較的低い胃腸薬で、必要に応じて使用可能
  • ザ・ガードコーワ整腸剤
  • ガスピタン
  • 陀羅尼助(だらにすけ)
  • 太田胃散チュアブル など
これらは便秘がち、胃腸が弱っている時などに使用できます。ただし、常用する薬ではなく、1~2週間の使用で、症状が改善しない場合には、妊婦健診で相談しましょう。
 

△第2類医薬品

……リスクが比較的高い胃腸薬で、使用が可能な薬と、使用を控える薬がある
  • 太田胃散
  • セルベール
  • 大正漢方胃腸薬
  • 新三共胃腸薬 など

胃痛や胃もたれになどに、応急的に使用できます。数日間服用し、食事に気をつけても症状が改善しない場合には、妊婦健診で相談しましょう。
 
  • 正露丸
  • ビオフェルミン下痢止め
  • ストッパ下痢止め など
いわゆる下痢止めは、妊娠中・授乳中に自己判断で使用しません。特にノロウイルスなどの感染性胃腸炎の際に使用すると、病状が悪化する場合があります(妊娠中・授乳中の感染性胃腸炎については「妊娠・授乳期のノロウイルス感染症」をご覧ください)。
 

×第1類医薬品

……特にリスクが高い胃腸薬
  • ガスター10
  • アバロンZ
  • イノセアワンブロック など
自己判断で使用できませんが、同成分の胃腸薬を妊娠中・授乳中に医師の判断で処方されることはあります。妊娠に気がつかずに使用した場合でも、慌てる必要はありませんが、心配な方は妊婦健診で相談しましょう。
 

妊娠中・授乳中の処方(医療用)胃腸薬

妊娠前から消化器疾患として消化性潰瘍、潰瘍性大腸炎があります。
  • 消化性潰瘍……胃潰瘍・十二指腸潰瘍で治療中の方は、妊娠と診断されたら、かかりつけの内科を受診し、妊娠中の治療方針を再確認しましょう。潰瘍治療薬には、妊娠中に使用できるものと、使用できないものがあり、自己判断できません。つわりで嘔吐を繰り返し、吐血した場合に、内視鏡検査が必要になる事もあります。ピロリ菌の除菌治療中の方は、中断する必要はありませんが、妊娠中に新規にピロリ菌の除菌治療は始めません。
  • 潰瘍性大腸炎……指定難病1つで、女性の最も多い発症年齢が25~30歳のため、妊娠中に合併することがよくあります。病状が安定した寛解期の方は、服薬治療を継続しながら、通常の出産が可能です。重症で治療中の方はできれば、病状が安定した寛解期の計画妊娠をお勧めします。
 

つわり・妊娠悪阻の対処法や治療

■つわり
妊娠初期、食欲不振や吐き気、嘔吐、唾液の増加などの消化器症状と、全身倦怠感、頭痛、眠気などを伴うもので、全妊婦の6~8割でみられます。通常、食事や生活の工夫、一時的な休業などで乗り切ります。
処方(医療用)制吐剤のプリンペランが吐き気症状を和らげますが、つわりの治療薬ではないため、頼りすぎると症状が長引くことがあります。漢方薬が処方されることもありますが、効果はあまり期待できません。
 
■妊娠悪阻
つわり症状が悪化し、水分摂取もできず、体重が5~10%減少して、医学的に治療が必要な状態です。全妊婦の1~2%で見られます。水分、ブドウ糖、ビタミンの点滴補給が必要で、重症な場合には入院治療します。
 
■食べづわり
妊娠初期に吐き気や嘔吐などの症状があるものの、空腹になると気持ちが悪いので、頻回の食事をして、体重は増えてしまう状態です。つわりなのに、味の濃いものを食べている方、制吐剤のプリンペランを連用している方によく見られます。
忘年会や新年会で、夕方から飲み食いした日に限って、夜中に小腹がすいてお茶漬けやラーメンを食べたくなるのと同様で、胃腸を酷使した状態です。胃腸をいたわる食事の工夫が必要です。

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※妊娠中の症状には個人差があります。記事内容は執筆者個人の見解によるものであり、全ての方への有効性を保証するものではありません。体の不調を感じた場合は、適切な医療機関での受診をおすすめいたします。当サイトで提供する情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、各ガイド、その他当社と契約した情報提供者は一切の責任を負いかねます。

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