妊娠中に飲んでもいい薬・いけない薬は?薬の使い方・注意点

妊娠中や授乳中は、生活習慣、食の安全、薬の使い方など、気になることがいっぱいです。ここでは、薬の使い方、特に一般用医薬品・医薬部外品の使い方(セルフ・メディケーション)について説明します。
妊娠中に飲んでもいい薬・飲んではいけない薬

使い方を理解し、使用方法を守れば妊娠中、授乳期でも使える薬がある

   

一般用医薬品、医薬部外品、処方せん医薬品の違いとは?

現在、市販されている「一般用医薬品」や「医薬部外品」は、2009年6月の法律改正で、使い方が分かりやすくなりました。薬剤師や登録販売者のアドバイスを元に、薬の使い方を理解し、使用方法を守れば、妊娠・授乳期でも、軽い症状や健康管理などに利用できるものがたくさんあります。

一方、医師の処方が必要な薬を「処方せん医薬品」といいます。これは一般用医薬品に比べリスクが高く、指示された薬の名前、量、使う期間の記録を残すことで、もし、薬に問題があった場合に、全国で、誰がその薬を使っているかすぐに判るようになっています(トレーサビリティー)。医師が、病状・体質・年齢などを考慮して、その人のために処方する薬ですから、残った処方せん薬を使い回ししてはいけません。

妊娠中・授乳期の方に限らず、まず知っておきたいのは、一般用医薬品、医薬部外品の分類です。薬の安全性はこの分類に従って判断します。CMで有名な商品シリーズでも、内容成分が違うと分類が異なることがありますので注意が必要です。

現在、市販されている医薬品は外箱などに必ず、
  • 医薬品分類
  • 製品の問い合わせ先
  • 副作用被害救済制度
の問い合わせ先が表示されています。
 

一般用医薬品・医薬部外品の分類
第1類医薬品

特にリスクが高い医薬品で、薬剤師が文書で説明することが義務づけられています。薬局のレジの後ろの棚などに並んでいて、直接手に取ることができないようになっています。妊娠・授乳期は使用禁止と明記されている医薬品もあります。
 

指定第2類医薬品

リスクが比較的高い医薬品のうち、特に使用上の注意が必要な医薬品で、数字の2の周りに丸や四角の囲いがあります。薬局で薬剤師・登録販売者に相談して購入します。原則的には、妊娠・授乳期に使わない方が良いでしょう。
 
第2類医薬品

薬剤師・登録販売者に相談して利用できる商品が多い第2類医薬品
※写真は2010年11月撮影

第2類医薬品

リスクが比較的高い医薬品のうち、安全性の高い成分が多く、妊娠・授乳期にも利用できる医薬品もがあります。今のところ、店頭での対面販売が原則です。

 

 

 

第3類医薬品

用法・用量を守れば、自由に使える第3類医薬品
※写真は2010年11月撮影

第3類医薬品

リスクが比較的低い医薬品で、購入者の判断だけでも買うことができます。妊娠・授乳期に常用できる医薬品もあります。今のところ、ネットなどで購入できる医薬品はこの分類のものだけです。 

 

 
医薬部外品

必要に応じて、積極的に利用したい医薬部外品・指定医薬部外品
※写真は2010年11月撮影

医薬部外品

薬事法で定められた、人体に対する作用が緩やかな製品で、薬局以外でも購入できます。医薬部外品、指定医薬部外品と表示されています。薬の規制緩和により、厚生労働大臣が指定して、医薬品から指定医薬部外品になったものなど、妊娠・授乳期に積極的に活用したい医薬品があります。
 
現在、妊娠・授乳期に一般用医薬品・医薬部外品をどう使うか、統一された見解はありませんが、医師の視点から、第2類と第3類医薬品は、使用方法を守れば、利用可能な薬と考えられます。第1類と指定第2類医薬品は、妊娠・授乳期に使用できないか、または、注意が必要な医薬品です。                 

妊娠・授乳期は、写真にあるような医薬部外品、指定医薬部外品、第3類医薬品、第2類医薬品を上手に使いましょう。
 

妊娠週数と薬の影響の関係

妊婦さんから「薬の影響を教えてほしい」「安全な薬を処方してほしい」という相談をよく受けます。中には、「安全?危険?どっちなの……」と結論を迫る方もおられますが、薬の影響は妊娠週数により異なること、また薬を「すでに使用した」と「これから使用する」で説明が異なるため答えるのは簡単ではありません
妊娠中に飲んでもいい薬、飲んではいけない薬

妊娠週数と薬の影響の関係

 
  • 妊娠前・妊活期から受精までの時期
    糖尿病、高血圧、甲状腺疾患、てんかん、膠原病などで治療中の方は、あらかじめ妊娠を想定して、医師と相談することが必要です。薬の種類、量が変更される場合もありますが、自己判断で勝手に薬を中止するのは最も危険です。ちなみに、無脳症予防のために推奨される葉酸摂取は、妊娠前から妊娠5週までの時期が重要です。
  • All or None(全か無か)期:受精後14日(妊娠4週)まで
    受精後、奇形を起こす危険性の高い薬を使用したり、X線検査を受けていても、奇形は起きない時期を、All or None期といいます。もし、受精卵に薬やレントゲンなどの影響が有れば、全く育たず妊娠は成立しない。一方、影響が無ければ、薬やX線が原因の胎児異常は起こらずに育つ時期です。現在の市販妊娠検査薬は、受精から12日~14日までに陽性になるので、妊娠検査薬が陰性であれば、このAll or None期になります。妊活中の人は、妊娠反応が陰性であることを確認して薬を使用します。ただし、月1回の注射薬など、作用が持続する薬には注意が必要です。
  • 器官形成期:妊娠4週~妊娠16週未満
    妊娠4~16週は器官が形成される時期で、奇形を起こす可能性のある薬を避けなければなりません。特に妊娠4週~妊娠8週は、脳、心臓、四肢、顔面などの重要器官が形成される時期なので注意が必要です。市販薬に奇形を起こす危険性のある薬はありませんが、もし、処方薬を妊娠に気がつかずに使用していたら、薬品名のリスト、または、お薬手帳を持って、健診の際に確認してもらいましょう。
  • 胎児成長期:妊娠16週以降 
    処方薬は、必ず、医師や薬剤師が、この妊娠週数で使用可能かどうかの判断をします。市販薬は、解熱鎮痛剤が要注意です。妊娠22週以降は、薬品名でアセトアミノフェン(商品名カロナール、コカール、タイレノール)を、症状のあるときだけ使います。それ以外の解熱鎮痛剤は使用しません。その理由は、強い鎮痛薬には、血管を収縮させる作用があり、胎児の「動脈管」という重要な血管が収縮すると、胎児の心臓は止まります。かつては、解熱鎮痛剤の影響と考えられる胎児死亡がよくありました。この血管収縮作用は妊娠初期には起きません。最近の、薄くて臭いがしない湿布薬には強い鎮痛剤が入っており、その鎮痛剤成分の皮膚吸収による胎児死亡が報告され、使用できません。昔ながらの厚く臭いがする湿布薬は使用できます。
 

薬を「既に使用した」と「これから使用する」では説明が異なる

医師が、ある薬について、既に使用したAさんには「あまり心配しなくて良いですよ」、これから使用するBさんには「できれば妊娠中は使わないでください」と説明することはよくあります。

医薬品はすべて、有益な薬になり、有害な毒になる可能性があり、多くの薬の添付文書には、「妊娠中は有益性が危険性を上回る時のみ使用可能」と書かれています。どうしても必要性がある場合は使って良いが、そうでもない場合は使わないということです。

症状を和らげるだけの薬は、妊娠中、できれば使いません。漢方薬は大丈夫ということもありません。

解熱鎮痛剤の中で、ロキソニン、イブは、既に使用していても、あまり心配しなくて良い薬ですが、これから使用する場合、妊娠後半期にはロキソニン、イブは使いません。

「妊娠中は使わないでください」と説明を受けたBさんが、ネット上に「その薬、妊娠中に使ってはダメ!!医者に確認済!!」と書き込みをすると、それを見た、すでに使用したAさんは、不安で妊娠中絶を考慮したり、家族がパニック、といったことが現実に起こります。安易な情報発信は控えましょう。
 

妊娠中の薬は流産に影響する?

流産した人の中に、「妊娠に気がつかず、薬を飲んだから流産したの?」と、考える方がおられますが、通常の使用方法で流産することはありません。

すでに子宮の中で発育が停止した状態で、いずれは出血して排出される運命だった卵が、自然のメカニズムで出てきた、ということです。

とはいえ、古今東西、人工的に流産させる薬の研究には、長い闇の歴史があり、例えば、漢方薬に含まれる大黄を、意図的に通常量の数十倍を連用し、不正出血を起こさせ、簡単に流産と判断されていました。経腟超音波検査ができる前は、流産の診断が曖昧だったからです。現在も、妊娠中、大黄の入った漢方便秘薬の使用は、できるだけ控えられています。

また、具体的な薬名は示せませんが、医師が処方する薬の中には、流産を促す作用があるので妊娠中は使用厳禁とされている薬もあります。市販薬にはありません。

宮廷ドラマや歴史小説に、お世継ぎを懐妊した女性に薬を服用させ、流産させる話が出てきます。流産して不安定な気持ちの方は、つい「私、何か悪い事した?」と思ってしまいますが、周囲の人が、流産したのは「薬のせいじゃないか?」、「○○したからじゃないか?」と責めるようなことを言ってはいけません。もし、本当に心配でしたら、妊婦健診に同席して専門家の意見を聞いてみましょう。
 

妊娠中・授乳中の薬における注意点

妊娠初期、妊娠が判る前に一般用医薬品を使用してしまった場合には、たとえ第1類であっても、慌てたり、過度に心配しないことです。用法・用量を守っておれば、胎児への影響について危険性の高い薬はありません。心配なら、健診の際に薬を持って、医師、薬剤師に相談してみましょう。

糖尿病・高血圧・心臓病・ぜんそく・てんかん・アレルギーなどの持病で治療中の方は、妊娠・授乳期でもそれぞれのかかりつけの医師と相談し、適切な治療を継続します。持病のある方は計画的な妊娠が必要です。

ごく稀であっても、副作用のない医薬品はありません。薬の外箱に副作用被害救済制度が表示されている医薬品を購入しましょう。もしもの時に助けになります。ネットなどで手に入る海外の医薬品には適応されないので注意が必要です。
 

妊娠と薬についての公式サイト

妊娠と薬についての相談は、妊婦健診で解決することが多いとは思いますが、中には、簡単には結論が出ないことがあります。例として、
  • 奇形を起こす可能性の高い薬を、危険性の高い器官形成期に使用したことが明らかで、薬の影響について詳しく知りたい
  • 持病や、合併する病気の治療で、妊娠中にリスクのある薬をこれから使用しなくてはならない時
  • 健診を受けている施設での説明では、十分な納得ができず、より正確な相談をしたい時
以上のような場合には、以下のサイトから相談できます。サイト内の「相談内容・方法」のバナーをクリックすると、わかりやすく手順が書かれています。 【関連記事】
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