もうバスには乗り遅れてしまった……!?
アベノミクスの波に乗って投資をと考えている人にとっての不安材料は、今さら「株高のバス」に乗っても遅いのではないか、ということ。しかも、5月23日の大幅下落を目の当たりにすると、アベノミクス相場自体、もう終わりなのでは、という思いをした人も少なくないはず。しかし、ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんは、今から投資を始めても決して乗り遅れたことにはならないと、アドバイスします。
「確かに、去年の衆議院解散から今年のゴールデンウィーク前後ぐらいまでの、あの勢いはありません。あの頃は、まさに期待値だけで何でも上がっていました。そして、5月の日経平均株価の急落で、相場は第2ステージに入りました。これからは前に進むバスもあれば、進まないバスもある。銘柄の動きは業種や企業で差が出ます。それでも、全体で見ればマーケットはまだ上昇トレンド。大小の調整がありながらも、小泉政権時代の1万8000円を目指す余力はあると見ます」(図4参照)
つまりは、今後より業種選び、企業選びがポイントになってくるということ。金融緩和や円安の恩恵を受けた業種として先に紹介した不動産、金融、自動車は今後も有望だと言われますが、では、成長戦略の柱のひとつとされる先端医療分野や、注目のTPP関連銘柄はどうでしょうか。
「先端医療やバイオ関連は期待値が先行し過ぎています。実際、業績は赤字という企業も少なくありません。TPPも今後交渉がどう進展していくか見えにくい。夢を買いたいという人はいいでしょうが、ともに投資先としてはまだ様子を見た方が賢明でしょう」
配当、優待より売却益を取りに行く
また、株投資で人気のある高配当、優待狙いという買い方も、少しスタンスが変わってきそう。通常、株価は権利付き最終日に向かい徐々に上昇し、権利落ち日にストンと落ちます。長期保有とスタンスが明確なら問題ありませんが、悩ましいのは、アベノミクス相場のように上昇トレンドが強い展開のとき。上昇幅が大きく、人によっては配当、優待の権利を待たずして売却益を確保すべきが迷う人も少ないのでは。「強い相場では配当、優待より売却益を得た方が得という場合が多い。配当、優待は必ず手にするという意識は、変えてもいいのでは。また、事前の銘柄選びで配当、優待は人気があるが業績はきびしいという企業は、できれば避けたいところ。とくに配当は減配してくるケースもありますので注意が必要です」
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取材・文/清水京武 監修/深野康彦(ファイナンシャル・プランナー)
イラスト/モリナガ・ヨウ パネルデザイン/引間良基