投資ならばコストが安く業種も絞れるETFを活用
今回のアベノミクスにおける投資のポイントは何でしょうか。キーワードは「日本株」だと、ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんは言います。昨年末から続く日経平均株価の上昇は、5月下旬に調整が入ったものの、右肩上がりの曲線を描き続けています。円安やインフレ期待を背景に、軒並み業績が改善する日本企業。日銀の異次元緩和によって生まれた投資好機の主役は、やはり日本株と言っていいでしょう。
しかし、投資ビギナーにとって、いきなり個別株はハードルが高いかもしれません。であれば、日本株をベースとしたインデックス型の投資信託やETF(上場投資信託)がおススメ。とくに、ETFは個別株のように証券市場で売買でき、運用管理費(信託報酬)が低いのが特徴。また、ETFにはインデックス型の他に業種別もあり、たとえばアベノミクス相場の最初の主役となった不動産、銀行、自動車などの業種にターゲットを絞った投資も可能です。
市場は金融相場から業績相場へ
ある程度まとまった資金があり、自分で銘柄を選択できるなら、個別株投資にチャレンジするのも、アベノミクスはいい機会でしょう。ただ、好機であっても、今年初めのような、銘柄を問わず何でも上がる金融相場(金融緩和を要因として全体が動く相場)ではもはやありません。「すでに、企業業績の向上を見込んで買われる業績相場に変わりつつあります。したがって、上がるものは、もう上がらないと思うものでも上がり、上がらないものはいくら待ってもあまり上がらない。業種を見誤らないことが大切。とくにビギナーは、先に触れた相場の主役業種から入るのがいいでしょう。また、含み資産を持つ電鉄、倉庫、物流など業種として面白いと思います」(表2を参照)
また、このアベノミクスで、日本株とともに注目されたのが、国内のREIT(不動産投資信託)。今年初めには1100台だった東証REIT指数(※)が3月27日には1700を突破。そして、その2カ月後には1300台にまで下落しました。それでも、投資商品としての期待値はまだ高いと、深野さんは考えます。
「REITはどの銘柄も基本的には同じ動きをしますが、値動きの幅に差は出てきました。上昇トレンドでは、オフィスビルや物流施設の組み入れに特化している銘柄がより価格を上げ、景気に左右されにくい住居型は伸びが鈍い。現在、長期金利の上昇などでREIT指数も鈍い動きとなっていますが、日銀の買い支えもあり、長期的に見れば1700の上を目指す展開になると予想しています」
※)2003年3月31日時の東証に上場するREITの平均時価総額を「1000」とした場合の指数。
次ページでは国内株式の展望をいくつかの観点から見てみます
取材・文/清水京武 監修/深野康彦(ファイナンシャル・プランナー)
イラスト/モリナガ・ヨウ パネルデザイン/引間良基